ITツール・パソコン・レジ・経理ソフトの導入で小規模事業者持続化補助金を受け取るには?

ITツール持続化補助金

小規模事業者持続化補助金とは、経営者がさらに販路を開拓・拡大して、客数や客層を広げていくことで、売上の向上を目指している中小企業や個人事業主(小規模事業者)を対象に、販路拡大のために使った経費の一部を補助する制度です。

持続化補助金の補助対象となる経費の例としては、店舗の拡張費用、店舗リフォーム費用、看板の掛け替え費用、チラシ制作などの宣伝広告費のほか、ホームページの制作費用などが挙げられます。

では、ITツールの導入費用を、持続化補助金の補助対象とすることはできるのでしょうか。この記事ではIT導入補助金と比較しながら検討していきます。

※IT導入補助金の仕組みをもっと知りたい方は下記の関連記事をご覧ください。

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そもそもITツールとは?

ITツールは、目的に応じてデータを処理するプログラムの総称です。最近では、AIなどの機能によって従業員の仕事の負担を軽くするRPA(Robotic Process Automation:業務自動化システム)が、「働き方改革」のキーワードとともに注目を集めています。

たとえば、次のような種類があります。

人事・給与・勤怠管理システム

タイムカードなしで出退勤時間を管理できたり、裁量労働や有期雇用・派遣・パートアルバイトなど、多様な雇用体系に対応できる給与自動計算を実現させたりするシステムを提供するITツールです。おもに人事部門の業務効率化を図ります。

財務会計システム

入金の消し込み、債権債務の管理、預貯金や固定資産の管理など、会社の資産まわりの業務を効率化します。おもに経理部門の生産性をアップさせるITツールです。

経費精算システム

クレジットカードや交通系ICカードと連携させたり、紙の領収書の情報を読み取ってデータ化するOCR(Optical Character Recognition:光学的文字認識)ことで、経費精算を自動化させるシステムなどで、おもに経理部門の業務を効率化させる目的があります。

原価・予算管理システム

社内の各部署ごとのプロセスから、データを集計し、原価や収益性の分析を行い、経営に生かすITツールです。原価管理などは経理部門が表計算ソフトなどを用いて集計していたものですが、RPAで業務効率を向上させることに役立ちます。システムが集計した結果のレポートは、経営陣の今後の指針を決めるためにも重要な資料となります。

仕入れ販売・在庫管理システム

おもに、卸売業や小売業で役立ちます。倉庫などに大量に保管されている在庫の位置情報や数量情報などを一元的に管理し、仕入れによって在庫が増えたり、販売によって在庫が減ったりする情報を正確に把握することで、経営戦略に必要な資料をリアルタイムで経営陣と共有できます。

顧客管理・案件管理システム

名刺に書かれた情報をOCRで自動的に取り込んで、氏名・住所・肩書き・連絡先などをデータ化したり、営業日報の入力を効率化するなどして、おもに営業部門の成果向上に役立つITツールです。

グループウェア・情報共有システム

電話やメールよりも、格段にコミュニケーションを円滑化・効率化させる目的のITツールで、社内の各部署の連携を強化させる効果があります。社内SNSやビジネスチャットなども、ここに含まれます。

ワークフロー(承認申請)システム

おもに社内稟議を効率化するITツールです。企業内で行われる承認の流れをシステムが管理することで、承認プロセスの抜け漏れを防ぎ、社内全体の生産性がアップする効果が期待できます。

業種固有プロセスツール

たとえば、製造業の生産性を向上させるのに役立つ専用のITツールなど、特定の業種に特化したものも多くリリースされ、各業界で支持を集めています。

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どちらの補助金で、ITツール費用を補助してもらうべき?

持続化補助金は、おもに販路開拓・拡大を目的にしていて、IT導入補助金はITツールの導入によって企業の生産性向上を図ることを目的にしています。

それぞれの補助金で、役割分担や棲み分けがあります。

持続化補助金は、規模の大きな中小会社には適用されない

まず、持続化補助金を受け取る資格がある「小規模事業者」の条件は次の通りです。

●卸売業・小売業・サービス業(※ただし、宿泊業・娯楽業を除く)で、5人以下の従業員を常時雇用する企業・個人事業主

●それ以外の業種(宿泊業・娯楽業を含む)で、20人以下の従業員を常時雇用する企業・個人事業主

一方で、中小企業基本法2条によれば、IT導入補助金の申請カクである「中小企業」の定義は次の通りです。
●製造業、建設業、運輸業など…… 資本金3億円以下・常時使用する従業員の数が300
人以下の会社および個人
●卸売業…… 資本金1億円以下・常時使用する従業員の数が100人以下の会社および個人
●サービス業…… 資本金5000万円以下・常時使用する従業員の数が100人以下の会社および個人
●小売業…… 資本金5000万円以下・常時使用する従業員の数が50人以下の会社および個人

「小規模事業者」よりも、「中小企業」のほうが広い概念となっています。つまり、持続化補助金を申請する資格はなくても、IT導入補助金を申請する資格なら持っている企業も多いです。そういう意味で、両補助金は棲み分けができています。

IT導入補助金は、登録済みのITツールのみが補助対象

IT導入補助金で補助対象となるITツールは、IT導入支援事業者(ITベンダー)が提供していて、事務局に登録済みのものを導入した場合のみです。さらに、IT導入補助金の申請には必ず、そのITツールを提供しているITベンダーの協力を得なければなりません。

その一方で、ITツールの種類に制約はありません。給与計算・顧客管理などを自動化させたり、原価や予算を自動的に分析して経営に生かすためのツール、さらに社内のコミュニケーションを円滑化させるグループウェアツール、あるいは複数のツールを連携させるソフトウェアなど、部門やカテゴリを超えた種類のITツールが広く補助対象になっています。

持続化補助金は、ITツールの使い道で補助の制約がある

一方で、持続化補助金では、登録済みのITツールを使わなければならないという制約はなく、その点での縛りはありません。
ただし、「一般型」「低感染リスク型ビジネス枠」の2種類に分かれているのが特徴です。

一般型では地道な販路拡大(集客・マーケティング・広告活動など)の目的に関わるITツールが補助対象になります。たとえば、顧客管理・案件管理のような営業部門の生産性アップに資するITツールが含まれると考えられます。

低感染リスク型ビジネス枠では、従業員と顧客の接触を減らして売上を上げられるような、ECサイトの顧客管理システムなどが、補助対象となるITツールに該当しえます。

よって、持続化補助金でITツール導入費用の補助を受けようとする場合、IT導入補助金とは異なり、そのITツールの使い道に制限があるところが注意点だといえます。

補助額の上限・補助率が異なる

持続化補助金は、一般型が原則として、補助上限50万円・補助率が3分の2です。低感染リスク型ビジネス枠で、補助上限100万円・補助率4分の3となります。
条件付きで、一般型の補助上限が100万円に拡張される特例はあるものの、上限が100万円を超えることはありません。

その一方で、IT導入補助金の場合は、補助上限450万円・補助率が2分の1~3分の2です。

IT補助金は、登録済みのITツールのみが補助対象になるという制約があるのですが、より多額の補助を受けられるメリットがあります。その点で、持続化補助金との使い分けが可能なのです。

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