大規模成長投資補助金とは?制度の概要や申請手順を解説

中堅・中小企業の持続的な発展を促進するために、労働生産性の抜本的な向上と事業規模の拡大を図るための施策として、2024年度より大規模成長投資補助金がスタートしました。

大規模成長投資補助金は、工場などの新設や大規模な設備投資に対して、最大で50億円の支援が行われる大型の補助金制度です。今回の記事では、制度の概要をはじめ、申請要件や申請スケジュール、申請手順などを詳しく解説していきます

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「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」の概要

「最新設備を導入して今までよりも生産性をあげたい」「全国に拠点を増やしてもっと事業を拡大していきたい」「賃上げをして社員のやる気をもっとあげたい」など、中堅・中小企業では人手不足などをはじめとして、多くの課題を抱えています。

そうした課題を解決しつつ、大規模投資を促進することによる持続的な賃上げの実現を目的とした補助金として登場したのが大規模成長投資補助金です

正式名称は「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」で、今回の補助金としては中小企業庁ではなく、経済産業省による補助金となっています。

投資規模が10億円以上のものが対象となっており、上限額は50億円で補助率は1/3以内と、補助上限額としては他の補助金の金額と比べてもかなり高額な補助金なのが特徴です

つまり10億円の事業を行った場合には、約3.3億円の補助、150億円の事業であれば、最大50億円の補助を受けられるため、中小・中堅企業にこれまで広く利用されていた「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」など比べ、非常に大規模な投資に利用できる補助金といえるでしょう。

大規模成長投資補助金の補助対象者

大規模成長投資補助金の補助対象者は、下記の通りです。

  • 日本国内に本社または補助事業の実施場所を有する企業
  • 常時2,000人以下の従業員を有する中堅・中小企業

なお、資本金の制限はありません。また、一定の要件を満たしていれば共同申請’(コンソーシアム形式・最大10社)も対象となっています。

日本の企業の多くが中小企業であるために、ほとんどの企業が補助対象者といえますが、中小企業の規模感であっても大手企業の傘下に属するようなみなし大企業や、補助事業の内容が1次産業を主たる事業としている事業者などは補助の対象外となる場合があります。

その他にも、中小企業基本法の中小企業者の定義に該当していても不採択となる事業者の要件がいくつかあるため、自社が補助対象者の要件を満たしているかを事前に確認しておきましょう。

また、必ずしも会社だけでなく、政策目的に沿っている事業で収益事業に関する内容であれば、個人や企業組合、協業組合、商工組合、農業組合、商店街振興組合NPOなどの法人でも対象となります。

大規模成長投資補助金の補助対象経費

次に本補助金の補助対象経費をみてみましょう。対象となる経費としては下記の5つがあります。

  • 建物費
  • 機械装置費
  • ソフトウェア費
  • 外注費
  • 専門家経費

建物費とは、補助事業のために使用される事務所や施設などの建物の建設、増築、改修、中古建物の取得に要する経費で、単価 100 万円(税抜)以上のものです。生産設備などの導入に必要な建物や建物付属設備、その付帯工事などは対象となるものの、建物の単なる購入や賃貸、土地代、門や塀などの構築物、撤去、解体費用など、一部対象外となる費用もあります

機械装置費とは、補助事業で使用される機械装置や工具、器具の購入、製作、借用に必要な経費で、それらに伴う改良・修繕、据付け又は運搬に要する経費も含まれます。構築物や船舶、航空機、車両および運搬具は対象外です事業者とリース会社が共同申請をする場合、機械装置やシステムの購入費用について、リース会社を対象に補助金を交付することは可能です。

ソフトウェア費とは、補助事業のために使用される専用ソフトウェア、情報システ ムなどの購入や構築、借用、クラウドサービス利用に要する経費で、単価100万円(税抜)以上のものが対象となり、上記と一緒に行う改良・修繕に要する経費も含みます。一方で、パソコンやタブレット端末、スマートフォンなどの本体費用は対象外となっています。

外注費とは、補助事業を行うために必要な加工や設計、検査などの一部を外注するための経費です。成長投資計画の作成のための経費や外注先が機械装置などの設備やシステムを購入する費用、外部に販売・レンタルするための量産品の加工を外注する費用などは対象外となります

専門家経費とは、今回の事業を行うために依頼した専門家に支払う経費です。本事業を行うための専門家の技術指導や助言が必要な場合の専門家に依頼したコンサルティング業務や旅費などが対象となりますが、応募申請時の成長投資計画作成のためにかかった経費は対象外となるので注意しましょう

上記経費は申請時には見積書の提出はしなくても問題ありませんが、採択された場合には交付申請時に見積書と相見積書が必要です。

また、補助金に関しては、補助事業に使用するものに限られるため、補助金以外の目的で使用してしまう場合は、一部返金が求められる場合もあるので注意しましょう。

補助事業に関わってくるものでも、事務所の家賃や通信費、収入印紙、各種保険料など、経費として認められないものもあるので、必ず公募要領で確認しておくことが大切です。

大規模成長投資補助金の申請要件

今回の大規模成長投資補助金は、大規模投資の促進と持続的な賃上げを目的とした制度です。

そのため、申請要件も上記2点をふまえた要件となっています。

1は、補助対象経費分の投資額(専門家経費・外注費を除く建物費や機械装置費、ソフトウェア費の合計額)が10億円以上であることです。

今回の補助金は、大規模な投資が補助対象なので、10億円未満の投資は補助対象外となります。また、複数地域に対する投資も補助対象になりますが、補助事業の目的や内容が一体的であることが必要です。

2点目は、指定された「賃上げ要件を達成することです。

【賃上げ要件】

補助事業の終了後3年間の対象事業に関わる従業員と役員の1人あたり給与支給総額の年平均上昇率が、事業実施場所の都道府県における直近5年間の最低賃金の年平均上昇率以上であること。

引用:経済産業省「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」概要資料より

参考までに直近5年間の最低賃金の年平均成長率でいうと低い県では2.5%、高い県でも3.4%となっているため、それ以上の賃上げをしなければいけません。

具体的な内容としては、補助金申請時にこの基準以上の賃上げをするという目標を掲げ、交付決定までにすべての従業員に表明したうえで、実際に達成することが要件となっています。

表明をしなかった場合は、交付決定の取り消しや補助金の返還が求められるため、必ず行いましょう。また、持続的な賃上げが目標となっているので、補助金申請時に掲げた目標を達成できなかった場合は、未達成率に応じて返還を求められてしまいます。申請準備の際は、必ず達成できるような計画の策定を意識しましょう。

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大規模成長投資補助金の予算額

本補助金の予算額は、2023年度の補正予算額としての1,000億円と2026年度までの国庫債務負担を含め総額3,000億円となっています

3,000億円という多額の予算額となっているため、公募の実施に関しては今回発表されている申請スケジュール以外にも複数回の公募の実施が開催されると予想されます。

ただし、採択数や予算配分が変動する可能性があるため、早めの申請をするように心掛けましょう。

2024年度大規模成長投資補助金のスケジュール

2024年度大規模成長投資補助金の1次公募のスケジュールとして、現時点ではまだ具体的な日程が出ていない項目もありますが、予定も含めた確定分としては下記となります。

【1次締切分】

公募申請  2024年4月30日 (火曜) 17時
プレゼンテーション審査 2024年5月中旬〜6⽉中旬頃(予定)
採択発表  2024年6⽉中下旬頃(予定)
補助事業期間  最長2026年12月末まで

確定したスケジュールに関しては期限厳守となるため随時チェックしておきましょう。

2次公募については、6月下旬からの開始が予定されています。申請を検討する事業者の方は、早いうちから準備に取り掛かるのがおすすめです。

なお、1次公募が不採択となった事業者に関しても、2次以降の公募に申請し採択を受けられます。

大規模成長投資補助金の申請から補助金交付までの流れ

本補助金事業の流れとしては、公募からはじまり審査、採択を経て、補助事業の実施、事業化、賃金引上げ状況等の報告という流れになっています各手順をひとつずつ見ていきましょう。

手順①申請準備

まずは公募申請の締切までに申請書類を作成し提出することが必要となります。申請は電子申請システムのみの受け付けとなっているので、申請前に「GビズIDプライムアカウント」の取得をしておきましょう

GビズIDプライムアカウントとは法人・個人事業主向け共通認証システムであるGビズIDアカウントのひとつで、一度IDを取得すると、ひとつのIDとパスワードで複数の行政サービスにログイン可能で、有効期限や年度更新の必要もありません。

取得方法としては郵送とオンライン申請の2種類あり、書類郵送申請としては発行までに1週間程度、オンライン申請では最短即日発行が可能ですが、発行に時間がかかる場合もあるため、早めに取得申請をしておきましょう。

GビズIDプライムはオンライン手続きが可能!申請方法2段階認証設定を説明

なお、アカウントやパスワードを第三者に開示することは、GビズIDの利用規約に反する行為となるので注意が必要です。

手順②審査

公募申請後の審査は、1次と2次に分かれています。

1次審査は、要件の適格性の確認や実現可能性などについて書面で審査します。

2次審査は対話形式によるプレゼン審査で、大学教授や中小企業診断士、公認会計士などの外部有識者が審査を対応します。計画の効果・実現可能性等について、定性面も含めた審査が地域ブロック単位で行われます。

プレゼンは経営者自身が行うため、申請準備と併せて、事業計画に関する外部有識者からの質疑応答への対応準備が必要です。

手順③採択後の手続き

審査後に申請者に対して審査の結果が通知されますが、採択された場合は採択者が交付申請を行う必要があり、その後は交付申請者に対して事務局による交付の決定・通知が実施されます。

ここで注意が必要なのは交付決定された金額に関しては、必ずしも応募申請時に計上した金額とイコールにならない可能性もあるということです。採択をされたとしても申請額よりも減額されている場合もあるので、必ず交付決定された場合でも金額を確認しておきましょう。

手順④事業の実施と事業報告

補助事業期間中は補助事業者の事業実施状況の確認が行われ、事業完了後に補助事業者による事業報告・証憑類提出をもとに検査が行われたうえで補助額が確定となり、補助金交付手続きの実施となります。

補助対象となった事業者は、事業期間が終了した後も、事業終了後の事業化や3事業年度分の賃上げ状況等の報告をしなければいけない点に注意しましょう。

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大規模成長投資補助金の提出書類一覧

募申請時に提出しなければいけない書類としては、「必須書類」と「該当者のみ提出する書類」のふたつがあります。提出時の書類に不備がある場合、不採択となる可能性もあるので不備のないように申請前に必ず確認しておきましょう。

  • 必須書類
書類名 注意点
成長投資計画書(様式1) 35ページ以内で作成し、PDF形式で提出
コンソーシアム形式での申請では、幹事企業が代表して作成・提出する
 成長投資計画書別紙(様式2) 必要事項を記入し、Excel 形式で提出する
 ローカルベンチマーク(様式3) ”【入力】財務分析” のシートの黄色セルに必要事項を記入し、Excel 形式で提出する
 決算書等(3期分) フォーマットは任意、ただしPDF 形式での提出
3 期分の確定した決算がない場合、不足分は白紙(PDF 形式)を提出
  • 該当者のみ提出する書類
書類名 注意点
 金融機関による確認書 (様式4) 金融機関から成長投資計画の確認を受けた場合に、所定の様式に金融機関が必要事項を記入した確認書をPDF 形式で提出
 リース取引に係る誓約書 (様式5) リース会社との共同申請をする場合に必要
所定の様式に必要事項を記入し、PDF形式で提出
 リース料軽減計算書 (様式6) リース会社との共同申請をする場合に必要
申請者がリース会社に支払うリース料から補助金相当分が減額されていることが確認できる証憑として、(公社)リース事業協会が確認した「リース料軽減計算書」の事務局への提出が必要
所定の様式に必要事項を記入し、PDF形式で提出

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大規模成長投資補助金のPR資料から読み取る「審査のポイント」

大規模成長投資補助金の審査基準に関しては公式PR資料に記載されており、いくつかのポイントを定量的・定性的に審査したうえで採択事業者が決定されます。

そこで審査のポイントとなる基準や加点項目、成長投資計画書の内容についてチェックしていきましょう。

審査基準の把握

大規模成長投資補助金では、審査のポイントとして5つの審査基準が明示されています。

  • 経営力
  • 先進性・成長性
  • 地域への波及効果
  • 大規模投資・費用対効果
  • 実現可能性

各基準の詳細を詳しくみていきましょう。

審査基準①経営力

幅広い視野での経営力を示すのがポイントです5〜10年後の社会への価値提供を目指す姿勢を描いた長期成長ビジョンのなかで、高い売上高成長率及び売上高増加額を示しましょう。

 

外部環境・内部環境の認識を踏まえた事業戦略となっているか、成果目標・経営管理体制が記載されているかなど、補助事業の位置づけや企業自身の成長にどのように補助事業が寄与するのかについての経営的側面も意識しておく必要があります。

審査基準②先進性・成長性

実施する補助事業が自社の成長投資につながっているのかがポイントです

他社が模倣困難なビジネスモデルの構築など自社の優位性が確保できる差別化された取組となっているか、労働生産性の抜本的な向上が見込まれる人手不足が改善される取組となっているか、市場規模全体の伸びを上回る持続的な成長が見込まれるかなどの先進性や成長性について提出書類に盛り込みましょう。

審査基準③地域への波及効果

地域経済を活性化できる補助事業になっているのかがポイントです補助事業による従業員の給与支給総額、雇用、取引額の増加などの地域への波及効果や、コンソーシアム形式での参加者や地域企業への波及効果につながっているのかが重要となります。

また地域経済成長を力強く牽引し、サプライチェーンの取引先や価値創造を図る事業者との連携を図ることができる事業者であるかどうかもチェックされます。

審査基準④大規模投資・費用対効果

企業の収益規模に応じた投資リスクをとっているかどうかや補助事業に対して生まれる付加価値額が相対的に大きな取組なのかという費用対効果の高さなどがポイントです

また、これまでよりもさらに成長を見込み、賃上げを目指すなどの企業行動の変容を示すこともポイントとなります。

審査基準⑤実現可能性

実施体制や財務状況が十分に確保され、課題設定や解決方法、スケジュールが適正で実現可能な事業であるかどうかが審査されます金融機関から計画の妥当性の確認を受けていればなお良いでしょう。

また、市場規模の分析や市場ニーズに沿った取組となっているかどうかも重要な要素です。

加点項目の把握

上記審査基準にあった③地域への波及効果にも関連しますが、地域波及効果の高い事業者を支援するための補助金のため、地域未来牽引企業やパートナーシップ構築宣言登録企業は審査における加点対象になります

地域未来牽引企業とは、経済産業省により選定された地域経済牽引事業の担い手の候補となる企業のことです。地方の中核企業として地域の特性をうまく活かした高い付加価値を生み出し、地域の事業者に対して経済的波及効果を及ぼし、地域経済の系印役となることが期待される企業が選定されますが、事業者による自発的な申請はできません。

一方、パートナーシップ構築宣言とは、あらゆる規模や業種の企業が自社で登録、宣言が可能で、企業が発注者の立場で自社の取引方針を宣言する取り組みです。宣言内容には、オープンイノベーションやIT実装、グリーン化などのサプライチェーン全体の共存共栄と新たな連携について、下請企業との望ましい取引慣行の遵守などが含まれています。

他にも、金融機関による確認書の提出や確認書を発行した金融機関の担当者が2次審査に同席した場合も加点項目となります。

審査基準の把握だけでなく、どういったことが加点項目になるかもしっかりと把握しておくことが採択の近道ともいえるでしょう。

成長投資計画書の把握

成長投資計画書は補助金公式ウェブサイトからダウンロードできます。

計画書はパワーポイント形式のフォーマットとなっており、先述した5つの審査基準に対応した項目があらかじめ用意されているのが特徴です。記載内容のクオリティは採択率に大きく影響するため、必ず記載ガイドの内容をふまえつつ作成ましょう

また、提出前には作成したPPTファイルをPDF形式に変換する作業が必要です。ダブルチェックと併せて、忘れずに実施しましょう。

大規模成長投資補助金の申請サポートを依頼した際の成功報酬について

大規模成長投資補助金の申請は自社でも可能ですが、多くの手間や時間が必要です。日々の業務と並行して申請作業を進めたい方は、コンサルタントに申請サポートを依頼するのもいいでしょう。

コンサルタントをはじめとした申請サポート業者は、採択の実現に向けた成長投資計画書の作成サポートをはじめ、事業完了後の各種書類のサポートなどに対応してくれます。

補助金申請に関する相談としては無料なところがほとんどなので、一度業者に相談してみましょう。

申請サポート費用としては、計画書などの作成に関して着手金が必要なケースが多く、20万円〜50万円程度が目安となっています。

また成功報酬としては、補助金額の1〜7パーセント程度のところもあれば、一律に数百万円の費用がかかるところもあり、多くは個別見積りで対応しています。

交付申請や実績報告などに関してのサポートなど、採択確定後の書類に関しては成功報酬に含まれる場合もあれば、オプションとして別途費用が発生する場合もあるので、必ず事前に確認しておきましょう。

まとめ

本記事では、令和6年度からスタートした大規模成長投資補助金について紹介してきました

本補助金は大規模投資を促進し、地方での持続的な賃上げの実現を目的としており、工場新設や設備投資に対して、最大50億円もの補助金が交付されます。これまでの補助金と比較して、高額な補助金額が特徴です。

1次公募はすでに締め切られていますが、6月下旬には2次公募が実施されます。申請準備とともに、スケジュールは逐次チェックしておきましょう。

なお、公募申請にあたっては事業計画の策定やそれに関する書類作成が必要です。また、申請後には審査が行われます。採択の可能性を高めたい方、申請準備の手間を抑えたい方は、申請サポート業者の活用も検討してみましょう。

補助金の窓口では、中小企業診断士と行政書士が補助金申請と事業計画書の作成サポートを行っております。無料のオンライン面談、公式LINEでの問い合わせサービスなども提供しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

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