【業種別】中小企業省力化投資補助金の事例紹介

中小企業省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業が売上拡大や生産性向上のために活用できる補助金事業です。本記事では、中小企業省力化投資補助金の概要や業種別の活用事例について紹介していきます。

なお、本記事の内容は経済産業省による「令和5年度補正予算の事業概要」に基づいて掲載していますが、今後補助対象となる事業者の実情に応じて補助要件などが変更となる場合もあります。

中小企業省力化投資補助金の概要

中小企業省力化投資補助金は、2023年11月29日 に成立した「令和5年度補正予算」に基づき、1,000億円 の予算のもと実施される補助金事業です。本補助金では、人手不足に悩む中小企業を補助対象としており、IoTやロボットなどの製品を導入することで売上拡大や生産性向上に取り組むことを大きな目的としています。

2024年3月5日には、本補助金事業を実施する事務局が採択され、今後交付申請の詳細が公表される見込みです。ここでは、現段階で分かっている補助金の概要について確認していきましょう。

中小企業省力化投資補助金の申請要件

中小企業省力化投資補助金の対象となるのは、人手不足に悩む中小企業および小規模事業者です。「中小企業」や「小規模事業者」の定義についてはまだ公表されていないものの、他の補助金事業では下記の通りに定義されることが一般的です。

<中小企業の定義>

業種 資本金の額又は出資の総額 常時使用する従業員の数
製造業その他 3億円 300人
卸売業 1億円 100人
小売業 5,000万円 50人
サービス業 5,000万円 100人

<小規模事業者の定義>

業種 従業員数
製造業その他 20人以下
商業・サービス業 5人以下

また、中小企業省力化投資補助金では、「補助事業終了後1~3年で、従業員1人あたりの『付加価値額』が年率平均3%以上増加する見込みの事業計画を策定すること」も交付申請の条件となっています。

ここでいう「付加価値額」とは、「営業利益+人件費+減価償却費」によって算出されるものです。

中小企業省力化投資補助金のスケジュール

中小企業省力化投資補助金は、前述の通り2024年3月に補助金事業を実施する事務局が採択されました。

今後、3月下旬に公募要領が公開され、4月より第1回公募の受付が行われる見通しです。

その後は2ヶ月に1回のペースで交付申請の受付が行われ、2026年9月末まで補助金事業が実施されます。募集回数は全15回ほどで、採択予定件数は12万件であるため、1回あたりの公募で8,000件が採択される計算です。

ただし、交付決定された補助金額によっては、その後の採択件数が増減する可能性もあります。

中小企業省力化投資補助金の補助率・補助金

中小企業省力化投資補助金の補助率・補助上限額の詳細は下記の通りです。

従業員数 補助率 補助上限額

(大幅な賃上げを行う場合)

5人以下 1/2 200万円

(300万円以下)

6~20人以下 500万円以下

(750万円以下)

21人以上 1,000万円以下

(1,500万円以下)

出典:経済産業省「令和5年度補正予算の事業概要(PR資料)」

中小企業省力化投資補助金では、従業員数によって補助金の上限額が異なっています。通常は最大1,000万円の補助金ですが、同時に大幅な賃上げに取り組むことによって、最大1,500万円までの補助金を受けられます。

なお、「大幅な賃上げ」には下記の条件が定められています。

・事業所内最低賃金を年額45円以上の水準で引き上げること
・給与支給総額を年率平均6%以上増加させること

人手不足の解消と同時に賃上げに取り組むことによって、より多くの補助金の交付が受けられますので、ぜひ賃上げの実施も併せて検討してみましょう。

対象となる経費とは

中小企業省力化投資補助金で対象となる経費は、IoTやロボットなどへの設備投資費かかる「本体価格」と「導入にかかる費用」です。

ただし、導入する製品には指定があり、事務局が公表する「カタログ」に掲載されるものに限定されます。

カタログの詳細はまだ公表されていませんが、今後ベンダーの採択が決定した後に対象となる製品が公表される見込みです。

また、導入した製品にかかる保守サポート費用については補助の対象外となります。

中小企業省力化投資補助金の活用事例

中小企業省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業・小規模事業者がIoTやロボットなどの機器へ設備投資することを支援する補助金事業です。

令和5年度補正予算をもとにこれから実施される補助金事業であるため、まだ実際に活用された例はありません。そのため、自社でどのように役立てられるのかピンとこない事業者の方もいるかもしれません。

ここでは、公表されている内容をもとに、具体的にどのようなケースで役立てられるのか、業種別に考えてみましょう。

建設事業の活用

建築業界では、建築需要の増加による建設ラッシュが続いているものの、就業者数の減少による慢性的な人手不足に悩む企業が多くあります。建設業界の人手不足解消となる機器として、重機ロボットや自律走行搬送ロボット、遠隔監視ロボットなどが挙げられます。

たとえば、建築現場では建築物の安全性や品質の管理が行われていますが、その監視作業には遠隔監視ロボットが役立てられます。遠隔監視ロボットを活用すれば、複数の現場を一度に確認することができるため、生産性向上の効果も期待できるでしょう。

また、建築業界では資材の搬送などの重労働が多くありますが、そうした場面でロボットを活用することで従業員の負担減少にもつながります。

飲食事業の活用

飲食事業では、アフターコロナのインバウンド増加により集客の増加や多言語での対応など、人手不足に悩む事業者が少なくありません。飲食業界における人手不足を解消する機器として、自動配膳ロボットや自動清掃ロボット、予約・受付自動システムなどが挙げられます。

自動配膳ロボットは、すでに導入しているレストランも多いため、一度は目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。自動配膳ロボットは走行ルートや店内の見取り図を記憶させるだけで、後はガイドなしで自動走行することができます。

また、一度に大量の食器類を運ぶことができるため、人間が運ぶ場合に比べて業務効率の向上につながるメリットがあります。

倉庫事業の活用

オンラインショッピングの普及により、倉庫事業では深刻な人手不足に悩まされています。倉庫事業における解決策として、運搬ロボットや積み下ろしロボット、自動運送ロボットの導入が挙げられます。

荷物の積み下ろしが多く発生する倉庫業では、従業員への身体的負担の大きさも軽視できる問題ではありません。そこで運搬ロボットや積み下ろしロボットを導入することで、従業員の働き方改革にもつながる期待があります。

また、ロボットを活用することで一度に大量の品物を運搬できるため、生産性向上にも有効です。

サービス事業の活用

サービス業界では、コミュニケーションロボットや無人搬送車、荷物搬送ロボットなどが課題解決に役立てられます。

たとえば、デパートなどの商業施設では、案内係としてコミュニケーションロボットを役立てられます。これまで有人で対応していたインフォメーションをすべて無人化することができ、これによって浮いた人員を他の業務へ配置することも可能です。

また、AI機能を搭載したコミュニケーションロボットでは、顧客の属性に応じておすすめの商品を提案する機能もあり、生産性向上だけでなく売上増加につながる期待もあります。

医療・介護事業の活用

少子高齢化が進む現在、医療・介護業界でも人手不足に悩む事業者が多くあります。医療・介護業界では介護ロボットや介護入浴機器、手術支援ロボットなどが課題解決に役立てられます。

たとえば、医療・介護現場では欠かせない入浴介助は、ロボットによって介助のサポートを受ける例が広がっています。これまで複数人のスタッフで行っていた入浴介助も、ロボットを導入することで1人のスタッフによる支援で実施できるため、業務効率の向上に役立てることが可能です。

中小企業省力化投資補助金の対象外製品とは

中小企業省力化投資補助金では、前述の通り事務局が指定する「カタログ」に記載された機器が補助対象となります。カタログに記載されていない製品を導入する場合は、補助対象外となりますので注意しましょう。

また、対外的に無償で提供されているものやリース・レンタル契約のもの、中古品の機器なども対象外です。

まとめ

中小企業省力化投資補助金は、働き手不足に悩む中小企業を支援する補助金事業です。今後、人口減少によってますます働き手不足の加速が予想されるなか、IoTやロボットの導入の支援を受けられるのは嬉しいポイントです。

中小企業省力化投資補助金は、本記事で紹介したとおりさまざまな業種で活用できることが見込まれます。今後、事務局より交付申請に関する要項などの詳細が公表されますので、ぜひ情報をチェックしておきましょう。