東京都では、創業を行う中小企業を対象に最大400万円を助成する創業助成金事業を行っています。機材の購入や原材料の仕入れなど、多額の費用がかかりやすい創業時に助成金が受けられるのは心強いポイントです。
本記事では、創業助成金の制度概要や申請対象、申請手続きの流れを解説していきます。
【この記事の監修者】
ライズ法務事務所 行政書士 米山浩史
以前は霞が関(中央官庁)で国家公務員として補助金行政、許認可業務、政策の企画立案等に従事。また、各省庁から複数名ずつ派遣されて創設された省庁横断チームに参画して新しい支援制度の設立も担当した。業務で培った広い視野と制度知識をもとに、企業・事業者の補助金申請をサポートしている。
【行政書士 米山浩史氏からのコメント】
こちらの補助金は、賃借料や従業員人件費など事業に必要となる固定費が対象となっている点が魅力の補助金です。
その一方で、申請要件が細かく決まっているため、きちんと確認する必要があります。本記事を参考に申請準備を進めましょう。
目次
東京都の創業助成金とは?
東京都は、公益財団法人東京都中小企業振興公社と連携して創業助成金の事業を行っています。まずは、制度の概要について確認していきましょう。
創業助成金の制度概要
創業助成金とは、東京都と東京都中小企業振興公社が実施する助成金事業で、都内で創業する人を対象としています。
なお、創業助成金は誰でも交付を受けられるわけではありません。助成金の交付を受けるためには、申請書類の提出が必要となり、事務局による書類・面接審査を通過した事業者のみが助成金を受けることができます。
また、申請の受付は年2回で、毎年4月・10月ごろの受付を予定しています。
気になる創業助成金の助成金額とは
助成金の交付を受けるときに、最も気になるポイントとなるのが助成金額についてです。東京都の創業助成金では、下限100万円から最大400万円の助成金を受けることができます。
事業を創業するときは、事務所を借りる費用や原材料の仕入れなど、まとまった費用が必要となります。もしかしたら費用面の不安から創業を見送っている人もいるかもしれません。
創業助成金では、賃借料や広告費、器具備品購入費など幅広い費用が対象となるため、費用面に不安を抱えている人にとって心強いサポートとなります。創業助成金の申請対象となる経費については、本記事内でくわしく解説していますので、そちらも併せて参考にしてみてください。
創業助成金の助成率や申請対象
創業助成金では、申請対象となる経費や助成率が定められています。それぞれくわしく確認していきましょう。
創業助成金の助成率
創業助成金の助成率は、助成対象と認められる経費の2/3以内です。たとえば、助成対象となる広告費が240万円である場合、最大160万円まで助成を受けることができます。
なお、助成金額は前述の通り最大400万円であるため、経費の2/3が400万円を超過する場合であっても、400万円以上の助成を受けることはできません。
創業助成金の申請対象
創業助成金は誰でも交付申請ができるわけではなく、申請対象となる事業者が定められています。申請対象には4つの要件があり、この全てを満たすことで交付申請が行えるようになります。
4つの要件の詳細は下記の通りです。
要件1 | 下記いずれかに当てはまる方
・都内で創業予定の個人の方 ・都内で事業を行う、事業を始めてから5年未満の個人事業主の方・法人代表者の方 |
要件2 | 指定された19の創業支援事業のいずれかを利用し、所定の要件を満たしている方 |
要件3 | 申請を行う事業等が下記を満たしている方
・所定の年数以上事業活動を実施できること。 ・助成対象期間内に事業を実施できること。 など |
要件4 | 下記を満たしている方
・納税地が都内であること。 ・所定の要件に該当する助成金・補助金の重複助成・補助を受けないこと。 など |
引用:公益財団法人東京都中小企業振興公社「令和6年度(2024年度)第1回創業助成事業【募集要項】」
特に注意したいのが要件1についてです。
創業助成金では、事業を始めてから5年未満の個人事業主や法人代表者が対象となっています。そのため、個人事業主や法人の登記上の代表者として、通算5年以上の経営経験がある場合は、創業助成金の交付申請を行うことができません。
これには海外での経営経験も含まれますので、これまで事業を創業した経験がある人は注意が必要です。
また、要件2の「指定された19の創業支援事業」には、次のようなものが含まれています。
- 事業計画書策定支援を終了した方
- 事業可能性評価事業で「事業の可能性あり」と評価され、継続的支援を受けている方
- 創薬・医療系ベンチャー育成支援プログラムの選抜プログラムを受講修了した方
- 東京都女性ベンチャー成長促進事業(APT Women)の国内プログラムを受講している(していた)方
- 東京都出資のベンチャー企業向けファンドから出資を受けた方 など
引用:公益財団法人東京都中小企業振興公社「令和6年度(2024年度)第1回創業助成事業【募集要項】」
なお、創業支援事業の要件を満たすためには、概ね2ヶ月以上の時間がかかります。希望する時期に助成金を受けるためには、計画的に創業支援事業の利用を行うようにしましょう。
創業助成金の対象経費
創業助成金の対象経費となるのは、下記のような費用です。
- 賃借料
- 広告費
- 器具備品購入費
- 産業財産権出願・導入費
- 専門家指導費
- 従業員人件費
- 市場調査・分析費
たとえば、製造業を創業する場合、初期投資として機械の購入や原材料の仕入れが必要となります。金融機関から借り入れを行って資金を調達する方法もありますが、いきなり大きな負債を抱えるのは不安が大きいものです。
その点、助成金であれば返済の必要がないため、負債を抱える心配なく創業時の費用を調達することができます。
創業助成金の申請・交付までの流れ
創業助成金の申請・交付手続きは、次の流れに沿って行われます。
それぞれくわしい内容を確認していきましょう。
申請書類の提出
創業助成金の申請に必要な書類は下記の通りです。
- 創業助成事業申請前確認書
- 創業助成事業申請書
- 直近2期分の確定申告書等
- 法人:履歴事項全部証明書(発行後 3 ヶ月以内)
- 個人事業主:個人事業の開業・廃業等届出書
- 申請要件確認書類
申請時点で1期目である場合や、これから創業予定である場合は確定申告書等の提出が不要です。
提出方法は郵送のみで、東京都中小企業振興公社あてに簡易書留と一般書留、レターパックプラス(赤色)のいずれかで郵送を行ってください。
【行政書士 米山浩史氏からのコメント】
郵送と併せて、WEBでも入力&申請が必要となります。郵送とWEB、両方必要となりますのでご注意ください。
交付決定
必要書類を提出後、事務局側で書類審査が行われます。書類審査を通過すると、面接審査が実施され、主に次のようなポイントが重視されます。
- 創業によって解決可能な社会課題、経営理念、ビジョンが明確になっているか
- 想定顧客が明確になっているか
- 収益獲得の仕組みが適正であるか
- 経営計画・経営見通しが実現の見込める内容であるか
- 助成対象期間中に必要な資金調達が見込めるか など
面接審査に通過後、「交付決定通知書」が送付されます。通知書は再発行ができないため、しっかりと保管しておきましょう。
完了報告
助成金の交付が決定したあとは、提出した事業計画書に基づいて事業を実施します。助成金が支払われるのは、実績報告書を提出し、事務局で確認が行われてからです。
助成金額が確定した後に「助成金確定通知書」が送付されますので、それに基づき助成金請求書と印鑑証明書を提出しましょう。その後、指定された銀行口座へ助成金が振り込まれる流れです。
ただし、助成対象期間が6ヶ月を超える場合は、6ヶ月経過以降に中間払いを受けることができます。
創業助成金の注意事項
創業助成金の交付申請を行う際は、次の点に注意が必要です。
・助成金が振り込まれるまでには時間がかかる
・申請要件をすべて満たす必要がある
それぞれくわしく確認していきましょう。
助成金が振り込まれるまでには時間がかかる
創業助成金は、交付申請の審査にクリアし、事業実績の報告を行った後に助成金額が支払われます。実際に助成金が振り込まれるまでには数ヶ月の時間がかかるため注意が必要です。
また、創業助成金は後払い方式となっているため、対象となる経費は最初に事業者が支払う必要があります。助成金を受け取るまでに時間がかかることを踏まえ、その間の資金繰りにも注意しましょう。
申請要件をすべて満たす必要がある
前述の通り、創業助成金には4つの要件が定められており、交付申請を行うためには4つすべてを満たす必要があります。特に、要件2の「創業支援事業の利用」には時間がかかるものもあり、計画的に取り組まなければなりません。
創業助成金の交付申請を検討している場合は、あらかじめ募集要項を確認したうえで、申請要件を満たすための手続きを進めることが大切です。
まとめ
東京都の創業助成金は、都内で創業する事業者を支援するための助成金事業です。最大400万円の助成金が受けられるため、創業を予定している人はぜひ活用したい制度といえます。
ただし、助成金の募集は年2回となっており、いつでも交付を受けられるわけではありません。募集は毎年4月・10月ごろに行われますので、最新情報をチェックするようにしておきましょう。