事業再構築補助金の「公式」活用事例5選!採択につながるポイントもご紹介します

製造業、卸売業・小売業、宿泊業など、さまざまな業種を対象とする事業再構築補助金。補助対象費用も多岐にわたり、幅広い事業計画で採択を受けられる補助金となっています。

いっぽうで、その多様さゆえに「自分の事業は採択されるのだろうか」と不安になっている事業者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、本記事では最新公募の「事業再構築類型」に照らし合わせながら、実際に採択を受けた事業を独自にまとめたポイントとともにご紹介します。

申請前の検討材料として、ぜひ本記事をご活用ください。

【この記事の監修者】

ライズ法務事務所 行政書士 米山浩史
以前は霞が関(中央官庁)で国家公務員として補助金行政、許認可業務、政策の企画立案等に従事。また、各省庁から複数名ずつ派遣されて創設された省庁横断チームに参画して新しい支援制度の設立も担当した。業務で培った広い視野と制度知識をもとに、企業・事業者の補助金申請をサポートしている。

 

【行政書士 米山浩史氏からのコメント】
事業再構築補助金は補助上限額が高く、新しい取り組みにチャレンジする際に役立つ支援ツールの1つとなっている制度です。しかも補助金は融資と違い、返済の必要がないことが大きな魅力です。
その一方で、誰もが必ず採択される(受給出来る)訳ではありません。採択事例を参考にポイントを押さえた申請を心がけましょう。

※:本記事は、執筆時点の情報をまとめたものです。最新情報と異なる可能性があるため、各種補助金制度の詳しい情報については公式サイトも併せてご確認ください。

本記事でわかること

・事業再構築補助金にて指定されている「5つの事業再構築類型」の概要

・事業再構築類型に沿った事業計画の実例

・採択のために抑えておくべきポイント

事業再構築補助金は公式ウェブサイトで活用事例を確認できる

事業再構築補助金では、2021年の第1次公募から、さまざまな事業計画が審査・採択されてきました。

積み重ねられてきた過去の事業計画を申請する事業者の参考資料として活用してもらうため、事業再構築補助金公式ウェブサイトでは、過去の採択事例の一部が掲載されています。

そこで、本記事では公式ウェブサイトに掲載された事例を、設けられている5つの事業再構築類型に当てはめつつ解説します。

なお、記事執筆時点での最新公募では、下記の通り5つの事業再構築類型・6つの申請枠(※)が設けられています。申請時には、いずれかの類型に当てはまる事業計画を策定し、自身の事業にあわせた枠組みへ申請を行いましょう。

各枠組みの詳細および補助金の詳細については、下記の記事も参考にしてみてください。

関連記事:事業再構築補助金申請ガイド|2023年度公募の変更点や補助金額をご紹介

※:上記申請枠に加え、成長枠・グリーン成長枠に申請する場合は上乗せ枠である「卒業促進枠」「大規模賃金引上促進枠」どちらかへの追加申請が可能です。要件や補助上限金額などの詳細は、上記関連記事や補助金公式ウェブサイトをご確認ください。

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「新市場進出」類型の活用事例

現在の事業・業種のまま新たな分野・市場へと挑戦する新市場進出類型は、通常枠や特別枠など、過去の公募でも「新分野展開」類型として幅広い申請枠で用いられてきました。最新公募においても、成長枠・最低賃金枠などに申請する事業者が当てはまる類型となるでしょう。

新市場進出類型として申請を行う場合、下記3つの要件を満たす必要があります。

【新市場進出類型の該当要件】

①申請する中小企業などが事業で製造する製品、提供する商品またはサービス、もしくは提供方法が、新規性を有するものであること。
②申請する中小企業等にとって、事業で製造する製品、提供する商品またはサービス、もしくは提供方法が、新たな市場であること。
③下記2点のいずれかを満たすこと。
-事業計画期間終了後、新たに製造する製品・提供する商品、もしくはサービスの売上高または付加価値額が、総売上高の十分の一または総付加価値額の15%以上を占めることが見込まれるものであること
-直近の事業年度の決算に基づく売上高が 10 億円以上であり、かつ、同事業年度の決算に基づく売上高のうち、事業再構築を行う事業部門の売上高が 3 億円以上である場合には、事業計画期間終了後、新たに製造する製品・提供する商品、もしくはサービスの売上高または付加価値額が、総売上高の十分の一または総付加価値額の15%以上を占めることが見込まれるものであること

条件を満たし採択された事例としては、下記のような事業が存在します(※)。

【企業詳細】
シティホテルの運営を根幹に据えつつ、地元住民と旅行者の交流を目指した特産品を製造する企業。

 

【申請経緯】
ワーケーション市場の拡大を受け、既存の宿泊等施設の近くにコワーキング機能付宿泊施設を開業、新市場への進出による収益構造の安定化を目的に申請。

 

【事業計画のポイント】
「サブスクリプション型のプランで法人との契約獲得を目指す」といった具体的な収益プランを述べるとともに、新市場が拡大傾向にあることを客観的な資料とともに紹介し、企業の総売上高において一定の割合を占められる可能性を示した。
また、既存宿泊施設とのサービス・設備の違いをまとめることで、申請企業にとってワーケーション事業が新市場性を持つことを明示した。

※:該当事業の申請時には、新分野展開類型として採択されています。

「事業転換」類型の活用事例

新たな市場に進出するとともに、主とする業種はそのままに新たな事業を展開するのが事業転換類型です。具体的には、下記のような要件を満たす必要があります。

【事業転換類型の該当要件】

①申請する中小企業等にとって、事業で製造する製品、提供する商品またはサービスが、新規性を有するものであること。
②申請する中小企業等にとって、事業で製造する製品、提供する商品またはサービスの属する市場が、新たな市場であること。
③事業計画期間終了後、新たに製造する製品・提供する商品もしくはサービスを含む事業が、売上高構成比の最も高い事業となることが見込まれるものであること。

事業転換類型として申請を行い採択された事例としては、下記のような事業が見られます。

【企業詳細】
民泊を運営するとともに、イベントスペース・カフェ営業用の場所貸しも行う企業。

 

【申請経緯】
個室増加をはじめとする設備変更で民泊から旅館業へ事業を転換するとともに、ビジネス・ファミリー層に向けた新規プランを展開するために申請。

 

【事業計画のポイント】
既存事業の民泊事業営業届を取り下げ、新事業の旅館業法の許可を得ることを明記。また、地域密着の強みを生かした中期滞在プラン・感染症対策を施した短期個室プランの2つを経営の柱とすることを説明。こうした点から、新事業が売上高の大部分を占められることを明示した。

「業種転換」類型の活用事例

事業転換類型と比較して、大幅に業種を変更しながら事業を再構築するのが業種転換類型です。具体的には、事業の前後で売上高構成比の最も高い事業が日本標準産業分類に基づく大分類の単位で変更される必要があります。

なお、満たすべき要件の一部は事業転換類型と共通しています。

【業種転換類型の該当要件】

①申請する中小企業等にとって、事業で製造する製品、提供する商品またはサービスが、新規性を有するものであること。
②申請する中小企業等にとって、事業で製造する製品、提供する商品またはサービスの属する市場が、新たな市場であること。
③事業計画期間終了後、新たに製造する製品・提供する商品もしくはサービスを含む事業が、売上高構成比の最も高い業種となることが見込まれるものであること。

こうした条件をクリアし、業種転換類型として採択されたのが下記の事業です。

【企業詳細】
全国の企業を対象に、M&Aの仲介および事業承継のアドバイザリーサービスを提供する企業。

 

【申請経緯】
人材リソースの不足、社会情勢の変化により既存事業の企画・開発規模・商談数の不足が露呈。新たな事業として人手をかけずにM&A・事業承継が行えるプラットフォーム事業に集中するために申請。

 

【事業計画のポイント】
新システムの開発を通して製品の新規性をアピールするとともに、既存事業で培ってきたWebサービス運用知見・業務ノウハウが新システム開発に応用できることを説明。事業再構築の実現性に訴求した。
また、新事業のビジネスターゲット、提供できるサービスとそのメリットを詳細に記載することで、売上増加・収益の安定化を明示した。

「事業再編」類型の活用事例

会社法上の組織再編行為を行ったうえで先述した新市場進出、事業転換、業種転換のいずれかを行うことを指す事業再編類型。これまで説明した類型の条件を満たしつつ、さらに条件が指定されており、要件を満たす難度がやや高い類型となっています。

【事業再編類型の該当要件】

①申請する中小企業等が、組織再編行為等(※)を行うものであること。

②新市場進出、事業転換又は業種転換のいずれかを行うものであること。

※:合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡など。

事業再編類型として採択された事例として、公式サイトには下記のような事業計画が掲載されています。

【企業詳細】
リキュール製品の企画・開発・製品化を行う企業。自治体の譲渡を受け自治体で管理していた施設を新工場として整備、既存製品の量産体制を整備していた。

 

【申請経緯】
新開発した乳酸菌を活用した新製品をコンビニエンスストア等の新市場に投入、事業の再構築を目指すための施設整備を目的として申請。

 

【事業計画のポイント】
新市場への進出理由を開発者や市場全体像を交えて丁寧に解説、さらに参入予定の新規市場における取引先を明示するなど、売り上げを増加させられる理由を具体的にアピールした。
また、「新市場進出」の要件も満たしていることを別途表を用意して説明、要件を満たしていること、そのうえで成長性が十分に見込める事業計画であることを示した。

「国内回帰」類型の活用事例

国内回帰類型は、2023年第10回公募より新たに定められた事業再構築類型です。定義としては、下記3点が指定されています。

国内回帰類型定義としては、下記3点が指定されています。

【国内回帰類型の該当要件】
①申請する中小企業等が海外で製造や調達を行う製品について、国内で生産拠点を整備すること(※)。
②申請する中小企業等にとって、事業による製品製造方法が先進性を有するものであること。
③下記2点のいずれかを満たすこと。
-事業計画期間終了後、新たに製造する製品・提供する商品、もしくはサービスの売上高または付加価値額が、総売上高の十分の一または総付加価値額の15%以上を占めることが見込まれるものであること
-直近の事業年度の決算に基づく売上高が 10 億円以上であり、かつ、同事業年度の決算に基づく売上高のうち、事業再構築を行う事業部門の売上高が 3 億円以上である場合には、事業計画期間終了後、新たに製造する製品・提供する商品、もしくはサービスの売上高または付加価値額が、総売上高の十分の一または総付加価値額の15%以上を占めることが見込まれるものであること

※:事業を行う中小企業等が取引先から要請を受け、「取引先が海外から調達している製品」を製造する生産拠点を国内で整備する場合も特例的に対象とされる。

国内回帰類型は、海外拠点を国内へ移転し、国内のサプライチェーン・地域産業の活性化を目指す製造事業者を支援する「サプライチェーン強靭化枠」専用の類型となっています。

この申請枠は国内回帰類型同様に、第10回公募より新たに設けられた申請枠で、他申請枠と大きく異なる追加要件・補助対象費用を持つ申請枠です。そのため、類型についても専用の国内回帰類型が指定されるようになっているのです。

新たに設けられた類型である国内回帰類型は、事業再構築補助金公式ウェブサイトにはまだ活用事例が掲載されていません。

そこで、同じく国内の生産拠点整備を進めサプライチェーン強化を図る「国際情勢の変化を踏まえた原材料安定供給対策事業(サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金)」の内容を参考事例としてご紹介します。

【企業詳細】
国内半導体装置メーカーに部品を供給している半導体製造装置の設計・部品加工・組み立てを行う企業

 

【申請経緯】
高品質製品の低コスト化を目指し、夜間・休日に無人で稼働するシステムの構築に尽力しており、「システムの生産性向上・効率化」および「新規部品の試作に短納期で対応する体制の整備」のためにシステムを構成する新規設備の増設のために申請した。

 

【事業計画のポイント】
①半導体製造装置の海外集中度が高い点
②装置部品が海外依存である点
③部品製造の国内シフトによる量産・高度加工に新規加工機が必要な点
上記3つの課題点について、納品先や関係機関から関連資料を入手、客観的データを元に国内シフトによる製造関与量を予測して記述した。

まとめ

事業再構築補助金は、現在の最新公募で11回目となる補助金制度です。過去に採択された事例の一部は公式ウェブサイトにまとめられていますので、申請時の参考資料としてぜひチェックしておきましょう。

なお、本記事で紹介した事例を振り返ると、採択につながるポイントとして下記の要素が挙げられます。

・既存のノウハウや具体的な根拠をもとに、新事業の収益モデルを具体的に示す

・申請する事業再構築類型の要件を満たしていることを、客観的な資料に基づいて説明する

・補助金の利用目的や購入予定の設備を明記し、事業のビジョンをハッキリと伝える

事業再構築補助金は事業計画を審査し採択される補助金です。最も重要な提出書類ともいえる事業計画書をしっかりと策定したい方は、策定をサポートする業者の活用も検討してみましょう。

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