起業初心者向けの創業融資を引き出すためのノウハウをまとめました。このサポートガイドを参考に、事業計画の策定から資金調達、銀行借入までの必要知識を身につけてください。もちろん、すべてを社長自身ができればベストですが、創業時の社長の本業は営業です。銀行借入や融資交渉は、中小企業診断士やコンサルタントなど専門家の力を借りる方が効率的な場合があります。身近な専門家に相談してみましょう。
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【この記事の監修者】
ライズ法務事務所 行政書士 米山浩史
以前は霞が関(中央官庁)で国家公務員として補助金行政、許認可業務、政策の企画立案等に従事。また、各省庁から複数名ずつ派遣されて創設された省庁横断チームに参画して新しい支援制度の設立も担当した。業務で培った広い視野と制度知識をもとに、企業・事業者の補助金申請をサポートしている。
【行政書士 米山浩史氏からのコメント】
専門家との相談を通して、自分だけでは気付けなかったビジネスアイデアやマーケットに気が付くということは、視野がまだ広がっていない創業時にはよくあることです。ぜひ前向きに検討してみましょう。
ただし、事業計画の策定や融資に関しては、相談前に押さえておきたい「基本」が存在します。本記事で確認しておきましょう。
目次
創業を目指す方への基礎知識
創業のプロセスと心構え
創業はただ単に新しい事業を始めることではありません。ビジネスでもプライベートでも目標を実現するためには、準備と計画が必須です。最初の一歩は、ビジネスアイデアをしっかりと練り上げることです。市場ニーズを把握し、自身の強みを活かせるビジネスプランを立てましょう。次に、それを実現するための資金計画、市場調査、ビジネスモデルの構築が求められます。創業期には未知の困難が多く立ちはだかりますが、柔軟な思考と忍耐力が成功への鍵となります。
必要資金の見極め方
創業には起業資金が不可欠です。しかし、どれだけの資金が必要なのかを見極めることは容易ではありません。必要となる資金は、事業計画の規模や業種、事業展開のスピードによって異なります。初期投資費用、運転資金、非常時のリザーブなど、詳細に計算を行うことが重要です。計画では考えられる様々なシナリオを想定し、それぞれに対する費用を見積もることが求められます。
創業資金調達の選択肢
創業資金の調達方法にはいくつかの選択肢があります。自己資金や個人からの借入、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの出資、あるいは銀行や日本政策金融公庫の支援などです。これらの中から、ビジネスプランや返済能力に合わせた最適な資金調達方法を選ぶ必要があります。また、各調達方法にはメリットとリスクが伴うため、しっかりとした理解と慎重な選択が不可欠です。
事業計画書の作成方法
事業計画書は、創業にあたって必要不可欠な文書です。この計画書は、事業の目的や将来性を検証するツールであり、銀行や投資家に対して事業の実行可能性を示すためのものです。作成する過程では、事業の全体像を客観的に理解することができ、戦略を練り直す機会にもなります。以下では、効果的な事業計画書を作成するための具体的な手順とポイントを解説します。
事業計画の目的と重要性
事業計画書は、事業内容を明確に伝えるための道具であり、創業時の融資申請においては必須の書類です。ビジネスアイディアを成功に導き、実現するためには計画通りに事業を進める必要があることを証明するためのものです。
事業計画書の構造と内容
事業計画書を作成するにあたって、参考となる書式が日本政策金融公庫や信用保証協会のホームページにて公開されています。
※日本政策金融公庫 創業計画書(外部リンク)
※東京信用保証協会 創業計画書(外部リンク)
二つは異なる書式ですが、求めている要素は共通しています。また、どの要素も創業においてはすべて重要となりますが、以下では、特に重要と思われる要素と記入時のポイントを簡単にご紹介いたします。
①創業者の経歴・経験
なぜ創業に至るのか、またこれまでの経験がどのように創業に活かされるのかを判断される項目となります。これまでのキャリアパスと一貫性のある事業で創業するのであれば、「実現可能性が高い」「計画書に記載の内容も妥当性が高い」と評価を受けることができます。 反対に、これまでのキャリアとは全くの畑違いとなってしまうと、評価は低くなります。
②提供する商品またはサービスに関する説明、市場の分析
提供する製品やサービスの明確な定義と、それが市場内でどのような位置づけにあるのかを説明します。顧客が製品やサービスを選ぶ理由や、競合との差別化ポイントも明記することが重要です。
③取引先・取引条件等に関する説明
創業後の資金繰りを検討する上で、売上げたお金をどのタイミングで回収できるのか。また、どのタイミングで仕入代金や人件費などを支払わなければならないかは非常に重要な情報となります。
④創業における必要資金とその調達方法
創業融資をいくら借りたいという説明をする上でも重要となりますが、特に重要となるのが、自己資金の部分となります。この自己資金がどうやって捻出されたのかは、担当者との面談時に深く確認されます。この自己資金が一時的に他から借りてきた資金ですと、自己資金として認定を受けられませんし、反対に毎月10万円を3年間コツコツ貯めてきたお金などは、創業に対する熱意を感じられ、評価も高くなります。
⑤事業の見通し
最後となりますが、この項目が事業計画書の中で最も重要な要素となります。どのように売上や利益を計上していくのかを説明する上でも重要ですし、金融機関からすると融資金をどのように返済されるかを判断するのにも重要な資料となります。この部分があまりにも現実離れしていると、融資の可能性は低くなりますが、しっかりとした根拠に基づいた積算がされていると融資の可能性は高くなります。また、作成した事業の見通しは、融資を得ることだけが目的ではなく、創業後の自身のペースメーカーにもなります。
実践的な計画書の書き方
事業計画書は単なる形式ではなく、事業の成功を左右する重要な文書です。実用的でわかりやすい文書にするためには、明確なロジックで組み立て、必要なデータや情報に基づいた具体的な内容を含めることが大切です。
【行政書士 米山浩史氏からのコメント】
データや情報の出典も忘れずに記載しましょう。また、古すぎるデータを用いないよう気を付けましょう。
必要書類の準備
融資を申し込む際には、事業計画書や資金繰り表、さらに損益計算書やキャッシュフロー計算書といった財務諸表が求められることが多いです。これらは、事業の健全性と将来性を示すための重要な書類となるため、十分な準備と正確性が必要です。
銀行借入に向けた準備
事業を立ち上げる際には、資金調達が重要なポイントです。特に銀行からの借入れは信頼性の高い資金源となりますが、しっかりとした準備が必須です。
融資を受ける際の基本知識
融資を受けるには、自己資金としてどれほどの資金を用意しているのか、事業計画の内容がしっかりしているのかなど、銀行が信じられる計画である必要があります。また、借入れの際には金利や返済期間、保証人の有無などの条件が明確であることが望まれます。
銀行との交渉
銀行担当者との交渉は、借り入れ条件を決定する重要なプロセスです。いかに事業計画の実現可能性をアピールし、銀行担当者に安心して融資を決断してもらえるかが鍵になります。
借入条件の理解と比較
複数の金融機関から借入れの条件を受けることがあるかもしれません。それらの金利や返済スケジュール、担保要件を徹底的に比較検討し、自社にとって最も有利な条件を選びましょう。
- 金利の種類と特徴を理解する
- 返済期間と返済方法の選定
- 担保や保証に関連する条件を検討
創業にあたっては、多くの準備と計画が必要となります。特に資金調達は事業を進める上で重要な要素の一つです。ここで紹介した銀行借入に向けた準備をしっかり行い、計画的に融資を受けることで、順調な事業スタートが可能となります。
融資申請のプロセス
ここでは、創業時の融資申請プロセスに関する重要なステップを詳細に解説します。これらの情報は、ビジネスを立ち上げる際に必要となる資金調達のための申請をスムーズに行うために不可欠です。具体的な申請書類の準備から申請後のフォローアップまで、銀行からの融資を成功させるポイントを押さえていきましょう。
融資申請までのステップ
融資の申請プロセスは複雑で時間がかかることが多いですが、適切に準備を行い、必要なステップを丁寧に進めることで、銀行からの信頼を勝ち得ることができます。まずは各ステップの概要を理解し、一つ一つ着実に進めていくことが大切です。
申請書類の詳細と作成方法
申請書類は銀行にとって、事業計画の真剣さと信頼性を判断する材料となります。詳細な事業計画書を始め、財務諸表、資金使途計画など、求められる書類は多岐にわたります。ここでは、各書類のポイントと作成のコツを解説し、申請書類が銀行の目に留まるようにするためのアドバイスを提供します。
申請後のフォローアップ
書類申請後のフォローアップは、融資の成功に大きく寄与します。申請後の返答待ちの期間には、銀行との関係構築を続けることが重要です。追加質問への迅速な対応や、必要に応じた補足情報の提供など、積極的な姿勢を見せることで、銀行からの信頼をさらに深めることができます。
ステップ | 内容 | 注意点 |
---|---|---|
準備 | 必要書類の収集・作成 | 事業計画の詳細と正確性 |
申請 | 書類の提出と説明 | 銀行とのコミュニケーション |
フォローアップ | 追加質問への対応 | 迅速かつ正確な情報提供 |
経営サポートサービスの利用
創業や企業経営に当たっては、多方面からのサポートが成功の鍵を握ります。経営サポートサービスは、事業計画立案のアドバイスから資金調達、運営の効率化まで、多岐にわたる分野で創業者をサポートします。専門家の知識と経験は、創業時における困難な課題を克服するための強力な味方となるでしょう。
経営コンサルタントの役割
経営コンサルタントは、事業戦略の策定から財務管理、人材育成など、企業運営の全般にわたる問題を解決するために企業に対してアドバイスを提供します。特に創業初期の段階では、経験豊富な専門家からの洞察による助言が、将来的な発展において非常に価値あるものとなります。
金融機関以外の支援機関
多くの創業者が金融機関からの融資に目を向けがちですが、日本国内には中小企業基盤整備機構や日本政策金融公庫など、創業者を支援するための様々な公的機関が存在します。これらの機関は資金だけでなく、経営ノウハウの提供やセミナーの開催も行っており、創業を考える際には必ずチェックすべきです。
ネットワークづくりの重要性
事業を成功に導くためには、同業者や他業界のプロフェッショナルとのネットワークが不可欠です。企業家同士の情報交換は新たなアイデアを生み出したり、ビジネスチャンスを掴むことに繋がります。また、メンターとなってくれる経験豊かな企業家からの指導を受けることも、成功への近道となるでしょう。
よくある質問と回答
銀行融資の審査基準は?
多くの銀行では、融資の審査に際して、事業計画の妥当性、返済能力、担保能力、また経営者の人物像などを評価します。返済能力については、事業が将来持続的に利益を上げられるかという観点で収益性をチェックします。一方、信用評価は事業者の信用情報がチェックされ、過去の借入履歴や返済状況が良好であることが重要視されます。また、新規創業の場合は経験やビジネスプランの精度がさらに詳細に評価されますので、細部にわたりリアルな市場分析や戦略が求められるでしょう。
事業計画書はどの程度詳細に書くべき?
事業計画書には、ビジョン、ミッション、事業の目標、具体的な戦略とそれを実現するためのアクションプラン、財務計画など、事業を成功に導くための詳細な情報が含まれている必要があります。市場分析や競争分析も入念に行い、リアリスティックな販売予測とコスト計算が不可欠です。また、潜在的リスクとその対策も記述し、銀行にとって信頼性があると認識させる内容が求められます。
【行政書士 米山浩史氏からのコメント】
分析や売上予測などは、数字を用いたロジカルな説明を心がけましょう。
創業者が心得ておくべきリスクとは?
創業段階では特に、市場の変動、競合の動向、政策変更、自然災害などあらゆる外部リスクを把握し、それらが事業に与える影響を評価することが重要です。また、事業運営上の内部リスクとしては、適切なキャッシュフローマネジメント、債務不履行リスクの低減、顧客獲得戦略の見直し、経営の効率化などに注力する必要があります。事前のリスク分析を行い、そのリスクを緩和する経営戦略を練ることが極めて重要です。
まとめ
創業から銀行融資の申請までのポイントを学びました。事業計画の策定と経営サポートが成功の鍵です。事業計画から銀行との交渉まで、すべてを社長自身ができればベストですが、創業時の社長の本業は営業と言っても過言ではありません。銀行借入や融資は、中小企業診断士やコンサルタントなど専門家の力を借りる方が効率的な手段になるでしょう。