2023年11月29日 に成立した「令和5年度補正予算」によって、「中小企業省力化投資補助事業」の実施が進められています。中小企業省力化投資補助事業に交付申請を行うときに抑えておきたいのが、「カタログ型」というキーワードについてです。
本記事では、中小企業省力化投資補助事業のカタログ型について、制度概要や対象機器、登録の流れについて解説します。
目次
中小企業省力化投資補助事業とは?
中小企業省力化投資補助事業は、2023年11月29日 に成立した「令和5年度補正予算」にて実施が決められました。
本補助事業は従来の「中小企業等事業再構築促進事業」を再編したもので、新しく設立された事業であることから、「自社に活用できないだろうか」と注目している人も多いでしょう。
中小企業省力化投資補助事業には1,000億円の予算が割り当てられており、中小企業が生産性向上や人手不足の課題解決に取り組むことを支援する目的の補助事業です。
中小企業省力化投資補助事業の制度概要
中小企業省力化投資補助事業は、売上拡大や生産性向上に悩む中小企業・小規模視業者を後押しするために、IoTやロボットなどを導入することを支援する補助金事業です。
これまで中小企業や小規模視業者が交付申請の対象となっている補助金には、「IT導入補助金」や「小規模事業者持続化補助金」などがありましたが、人手不足の解決のみにスポットを当てた補助金はありませんでした。
本補助事業では人手不足の解決への支援に特化していることから、より幅広い事業者が対象となる見込みです。
また、中小企業省力化投資補助事業で受けられる補助金額は、雇用する従業員数によって異なります。
従業員数 | 補助率 | 補助上限額
(大幅な賃上げを行う場合) |
5人以下 | 1/2 | 200万円
(300万円以下) |
6~20人以下 | 500万円以下
(750万円以下) |
|
21人以上 | 1,000万円以下
(1,500万円以下) |
引用:経済産業省「令和5年度補正予算の事業概要(PR資料)」
たとえば、従業員数が10人の企業が300万円のロボットを導入した場合、最大150万円まで補助金を受けられる仕組みです。これからますます労働人口が減少していくことが懸念される状況において、IoTやロボット導入の支援を受けられるのは心強いといえるでしょう。
なお、「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」との併用が可能かについては、今後公式サイトで公表される予定です。
中小企業省力化投資補助事業のカタログ型とは
経済産業省が公開している「令和5年度補正予算の事業概要(PR資料)」のなかでは、「カタログ型」という言葉が使われています。ここからは、中小企業省力化投資補助事業で対象となる機器と、ならない機器の違いについて確認していきましょう。
補助金の交付対象となる機器
中小企業省力化投資補助事業で補助対象となるのは、「省力化製品カタログ」に記載されている機器に限定されます。「カタログ型」と記載されているのはこのためで、IoTやロボットであれば何でもよいというわけではありません。
2024年3月26日現在、カタログはまだ公開されていませんが、3月 11 日より対象製品の登録申請が開始されています。また、公式サイトのQ&Aでも、今後ホームページに掲載されることが明記されていますので、商品の選定が終わり次第詳細が公表される見込みです。
対象外となる機器
中小企業省力化投資補助事業では、カタログに記載されていない次のような製品は補助対象外となります。
・製品が完成されておらず、開発が必須となると想定されるもの。
・ソフトウェアのみであり、それ専用の製品等を必要としないもの。
・恒常的に利用されないことが想定されるもの。
・製品単体で省力化を図るものではなく、他の製品等の使用と組み合わせない限り業務の効率化、省力化に資さないもの。
・本補助金の補助上限額を鑑みて著しく高価であるもの。また、取得財産管理台帳への記載が不要になる 50万円未満の製品。
・既存の製品等の機能を拡張する又は性能を向上する目的で使用されると想定されるもの。
引用:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業 省力化製品・省力化製品製造事業者登録要領」
特に注意したいのが、金額に関する事項についてです。中小企業省力化投資補助事業では50万円未満の製品は対象外となっており、カタログに記載されていません。
補助金は基本的に後払い方式での交付となり、機器の導入にかかる費用は一度全額を事業者で建て替える必要があります。高価な機器を導入する際は、補助金を受け取るまでの資金繰りに問題がないかしっかりと確認しておきましょう。
中小企業省力化投資補助事業【省力化製品登録・公開の流れ】
中小企業省力化投資補助事業では、2024年3月26日現在対象となる製品やメーカー、支援事業者の登録作業が行われています。補助金の交付申請の詳細が公開されるのは、これらが決定した後となるでしょう。
ここからは、省力化製品やメーカー、支援事業者に関する登録作業の流れを紹介していきます。
省力化製品・製造事業者の登録
中小企業省力化投資補助事業の対象となる省力化製品と製造事業者は、2024年3月11日より順次登録申請の受付がスタートしています。
画像引用:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業 省力化製品・省力化製品製造事業者登録要領」
本補助事業への登録を希望するメーカーは、まず工業会などに登録申請を行い、工業会で審査が行われたのちに事務局へと提出されます。
その後、事務局にて登録要件や書類の不備などがチェックされたあと、承認の可否が工業会へ通知される流れです。
省力化支援事業者の登録
中小企業省力化投資補助事業では、「省力化支援事業者」を通じて機器の導入を行います。この省力化支援事業者についても詳細は未定であるものの、今後登録申請が完了次第対象となる事業者が公開される見込みです。
省力化支援事業者は機器の導入だけでなく、交付申請手続きも共同で行うパートナーのような存在であるため、慎重に選定するようにしましょう。
中小企業省力化投資補助事業のスケジュール
中小企業省力化投資補助事業は、2024年3月5日に事業を実施する事務局が採択されました。現在は、対象となる機器やメーカー、支援事業者の登録申請が行われており、決定次第詳細が公表される見通しです。
中小企業による交付申請は、今後2ヶ月に1回のペースで交付申請の受付が行われ、2026年9月末まで補助事業が実施されます。
募集回数は全15回が予定されており、採択予定件数は12万件です。つまり1回あたりの公募で8,000件が採択される計算となりますが、交付決定された補助金の金額によっては、採択件数に増減が生じることも想定されます。
まとめ
中小企業省力化投資補助事業は、人手不足や生産性向上などの課題解決に役立てられる補助金です。最大1,500万円の補助金が受けられるため、金銭的なハードルからIoTやロボットの導入を諦めていた事業者はぜひ交付申請を検討してみましょう。
なお、中小企業省力化投資補助事業の対象となるのは、カタログに記載されている機器に限られます。今後、対象機器が決定次第、カタログが公開されますので、最新情報をチェックしておくことがおすすめです。