中小企業新事業進出補助金の最新採択率は?採択結果から分かる傾向と対策を解説

中小企業新事業進出補助金は、2025年度に新設された補助金制度です。スタートしたばかりの補助金へ申請する際は「採択率はどのくらいなのか」「自社でも採択される可能性はあるのか」などと気になる方は多いのではないでしょうか。

自社事業の採択率を高めたいのであれば、実際の採択結果を詳しく見ていくことが大切です。業種や地域、申請金額などで採択事業を区分けすると、一定の傾向が見えてきます。

本記事では、中小企業新事業進出補助金の最新公募の採択結果を紹介しつつ、採択された事業の傾向を解説します。また、採択率を高めるために意識すべきポイントも解説していますので、申請を検討されている方はぜひ参考にしてください。

中小企業新事業進出補助金の最新採択率

2025年(令和7年)4月22日から7月15日にかけて申請を受け付けた中小企業新事業進出補助金の第1回公募では、全国の中小企業・個人事業3,006者から申請が寄せられ、そのうち1,118者が交付候補者として採択されました。

申請者数 3,006
採択者数 1,118
採択率 37.1%

37.1%という採択率は、ものづくり補助金をはじめとした他補助金制度と比べて特別に高い数値ではなく、採択要件や審査のポイントなどに沿って厳しい選別が行われていることを示しています。

なお、第1回公募では、米国関税の影響を受けている事業者に対する加点が行われました。採択者に占める割合は590者(52.7%)となっており、米国関税の影響を受けている事業者を積極的に支援する動きが見られた公募と言えます。

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採択結果から見る中小企業新事業進出補助金の傾向分析

中小企業新事業進出補助金の採択・不採択の判断は、事業内容と制度趣旨との適合度を総合的に評価したうえで行われています。採択率と合わせて採択結果もチェックすることが、自社の事業計画のブラッシュアップにつながるでしょう。

ここからは、最新公募である第1回の採択結果を「業種別」、「地域別」、「補助金申請額別」という3つの視点から分析した結果を見ていきます。

採択率の裏側にある評価ポイントを整理することで、「自社事業の見直し方」「評価につながるポイント」を具体的にイメージできるようになるはずです。

業種別の採択傾向

※中小企業新事業進出補助金事務局「新事業進出補助金 第1回公募の採択結果について」より引用

第1回中小企業新事業進出補助金の採択結果を見ると、応募件数・採択件数ともに製造業、卸売業・小売業、建設業、サービス業・情報通信業の順に多くなっています。これは、制度上これらの業種が優遇されているというよりも、新事業進出というテーマと親和性の高い業種が多く採択されたと考えられます。

特に製造業は、既存の技術や設備、ノウハウを活かした新事業進出計画を描きやすい点が特徴です。審査項目のひとつである「新市場性・高付加価値性」および「事業の実現可能性」を両立した計画を示しやすく、審査上も評価されやすいと言えるでしょう。

【製造業の採択事例】

・自社設備を活用した、大学と連携しての国産商品の開発・販売

・半導体分野からロケット・衛星等の宇宙分野への新市場進出

・自社製造技術を活用した物流荷役機器の企画・製造・販売

・樹脂部品のプラスチック成形技術を活用した介護機器業界への進出

・独自のプラスチックリサイクル技術によるリサイクル製品開発

一方で卸売業・小売業や建設業も採択件数は多いものの、単なる業態転換や既存顧客向けサービスの延長にとどまる計画では、採択に至らないケースも少なくありません。

実際の採択事例を見ると、これらの業種で採択されている事業は、新たな顧客層や市場を明確に設定したビジネスモデルや、デジタル技術・新サービスを組み合わせた事業展開など「自社の優位性」の説明が明確なものが中心となっています。

【卸売業・小売業の採択事例】

・高級鮮魚卸売業者による日本料理店の展開

・AIを活用したレター便による販売事業への進出

・独自のジョイント製造技術を活かしたスマート畜産への参入事業

・冷媒ガスの製造~販売を一元化するための設備投資

・腸内細菌研究を応用した腸活用高級ペットフード製造

地域別の採択傾向

※中小企業新事業進出補助金事務局「新事業進出補助金 第1回公募の採択結果について」より引用

中小企業新事業進出補助金の第1回公募における地域別の採択結果を見ると、応募件数・採択件数ともに東京都、大阪府、愛知県が上位を占めています。これは、これらの地域に中小企業数そのものが多く、結果として申請件数が集中していることが大きな要因です。

採択件数の多さだけで「都市部の方が採択されやすい」と判断するのは適切ではありません。公式資料では、各都道府県の中小企業数に対する応募・採択割合も併せて示されており、これを見ると、地方県においても一定の採択割合が確保されていることが分かります。

地方における採択事業の特徴としては、地域資源や地域課題を踏まえた新事業計画が多い点が挙げられます。例えば、地場産業の高度化、地域ニーズに対応した新サービスの展開、雇用創出につながる事業など、地域経済への波及効果を具体的に示した計画は評価されやすい傾向が見てとれます。

【地方都市の採択事例】

・地域特産品であるそばを「そばの実」製粉から学べる食文化体験施設事業

・自社製品である絹織物を活かした工場発・体験型衣料直販事業

・地域初の「クラフトビール工場」建設による新事業進出

・地元産天然塩から作る調味料を活用した新事業進出

・廃棄物運搬・処分事業からのRPF生成・販売事業への新規進出

一方、都市部では市場規模や競争環境を前提としたうえで、差別化や成長性を明確に示すことが求められる傾向があります。

【主要都市の採択事例】

・中小企業向けノーコードAIチャットSaaS開発事業

・外国人向け職務適性検査とオンライン日本語教育を活用した定着支援

・大型部品加工技術の確立と次世代半導体製造装置市場への進出

・地元発の地域ブランド型プレミアムクラフトジン事業

・地域経済循環率を高める新たなロングライフデザイン体験宿泊事業

地域によって採択の考え方が大きく異なるわけではありませんが、立地条件や地域特性をどのように事業計画に落とし込んでいるかは重要なポイントのひとつと言えます。

補助金申請額別の傾向

※中小企業新事業進出補助金事務局「新事業進出補助金 第1回公募の採択結果について」より引用

中小企業新事業進出補助金の第1回公募では、補助金申請額の分布についても公式に公表されています。採択結果を見ると、応募件数が最も多いのは「2,000万円以上~2,500万円未満」の申請区分であり、次いで「1,000万円以上~1,500万円未満」「500万円以上~1,000万円未満」の順となっています。

一方で、応募件数が多い申請額帯が、そのまま高い採択率につながっているわけではありません。実際の採択状況を見ると、申請額の大小による明確な優劣は見られず、高額な補助金を申請したからといって採択されやすいわけではないことが分かります。新事業進出補助金では、申請額の大小よりも、投資が事業内容や成長戦略に対して妥当であるかどうかが重視されています。

また、新事業進出補助金では「事業の有望度」も審査項目のひとつとなっています。申請額が大きい場合には特に「継続的に売上・利益を確保できる市場規模であるか」といった点が厳しく見られるでしょう。適切な投資額と具体的な成長シナリオをセットで示すことが、採択につながる重要な要素と言えます。

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中小企業新事業進出補助金で採択率を上げるためのポイント

中小企業新事業進出補助金の採択率を高めるためには、制度の目的や審査項目への理解が重要です。ここからは、公式資料である公募要領から読み取れる「採択率を高めるためのポイント」を解説していきます。

「新事業進出の要件」を満たす事業計画になっているか

中小企業新事業進出補助金において最も重視される前提条件が、申請する事業計画が「新事業進出」の定義に該当しているかどうかです。

公募要領には、本補助金の目的として「既存事業と異なる新市場・高付加価値事業への進出による企業規模の拡大・付加価値向上を通じた生産性向上を図り、賃上げにつなげていくこと」と記されています。

ここで注意すべき点は「新商品を作る」「新サービスを始める」だけでは、必ずしも新事業進出とは評価されないという点です。新事業進出指針では、下記3点の要件を満たす事業計画の策定が必要とされています。

【1.製品等の新規性要件】

補助事業で提供する製品・サービスが、これまで自社で取り扱ったことのないものであること。

 

【2.市場の新規性要件】

補助事業で狙う市場や顧客層が、既存事業と異なる市場・顧客層であること。

 

【3.新事業売上高要件】

補助事業によって得られる売上高(または付加価値額)が、応募申請時の総売上高の10%(または総付加価値額の15%)以上となること

既存顧客向けのラインナップ追加や、従来サービスの拡大延長にとどまる場合は、「既存事業の拡大」と判断される可能性があります。

一方で、新事業進出補助金は「完全に無関係な別事業」への挑戦を求めているわけではありません。採択された事業計画を見ても、既存事業で培った技術・ノウハウ・人材・設備等を活かしつつ、新たな市場への進出を目指す事業が採択されています。

より具体的に述べると、採択されている事業計画の多くは「既存事業で培った強み」「自社の強みが通用する新たな市場・顧客」「新事業として独立した収益モデル」が明示されている傾向があります。

なお、要件を含めた制度の詳細については下記記事でも解説していますので、ぜひ本記事と合わせてご確認ください。

中小企業新事業進出補助金とは?新制度の補助金額や対象経費をご紹介!

市場・競合分析におけるポイント

中小企業新事業進出補助金では、市場・競合分析は「新規事業の有望度」を推し量るための根拠のひとつです。公募要領にも、市場規模や競合他社に関する審査項目が明記されています。

【市場・競合分析を通して示したい要素】

・進出する市場が継続的に売上・利益を確保できる規模あるいは成長性を持っているか

・競合他社と比較した際の「明確な優位性」の確立を通した差別化

まず市場分析において重要なのは、自社が狙う市場がどこなのかを具体的に定義できているかという点です。「市場は今後拡大が見込まれる」といった抽象的な説明だけでは不十分で、どの顧客層に、どのような価値を提供するのかを明確にする必要があります。

競合分析においても、競合企業の名前を並べるだけでは評価につながりません。審査で見られているのは、競合が存在する中で、自社がどのように選ばれるのかという点です。

導入装置や価格・営業形式などを強調する計画は「他社に容易に模倣できる」と判断されやすいため、有望度の面では評価につながりません。技術力、提供プロセス、品質、アフターサービスなど、自社ならではの差別化要素を示すことが重要となります。

中小企業診断士をはじめとした専門家を活用する

中小企業新事業進出補助金では、事業計画書の完成度が採択結果に大きく影響します。公募要領や公式サイトでも、申請にあたっては事業の実現可能性や成長性を、客観的かつ論理的に説明することが求められており、この点で専門家を活用するメリットは小さくありません。

特に新事業進出補助金では「事業の具体的な内容」「自社の現状分析」に加えて「事業の新市場性あるいは高付加価値性」「収益計画」などを説明する必要があります。自社だけで事業計画を作成すると主観的な内容になりやすく、第三者から見て分かりにくい説明や、審査視点とのズレが生じるかもしれません。こうした際に、専門家による内容の精査・改善に向けた助言は採択に向けた大きな強みとなるはずです。また、有識者は補助金制度そのものへの理解が深く、過去の採択事例や不採択事例を踏まえたアドバイスを受けられます。

ただし「専門家に相談すれば必ず採択される」「専門家が申請作業すべてを担ってくれる」というわけではありません。自社の事業計画を制度趣旨に沿った形に整理・言語化するサポートは受けられますが、最終的に事業計画を作成・説明するのは事業者自身です。

専門家や認定支援機関を「丸投げ先」とするのではなく、伴走者として活用することが、新事業進出補助金で採択率を高めるうえで有効な選択肢と言えるでしょう。

まとめ

本記事では、中小企業新事業進出補助金の最新公募における採択率を紹介するとともに、採択された事業の傾向を解説しました。

採択事業を業種別・地域別・申請額別に見てみると、特定の業種や地域が有利というわけではなく、業種が持つ強みや地域の課題、そして制度趣旨に沿った新事業設計ができているかどうかが、採択の可否を大きく左右していることが見て取れます。

また、公募要領を踏まえた採択率を高めるポイントとして、「新事業進出の要件を満たしているか」「市場・競合分析を通じて事業の有望性を示せているか」「事業計画の完成度を高める工夫」などが重要であることを解説しました。採択率という数字だけを見るのではなく、実際の採択事例や審査視点を理解したうえで準備を進めることが、申請成功への近道と言えるでしょう。

一方で、「自社の事業は新事業進出に該当するのか」「この計画内容で評価されるのか」といった判断は、事業者自身だけでは難しいケースも少なくありません。「補助金の窓口」では、中小企業診断士をはじめとした専門家が、事業計画の策定や申請作業をサポートしています。

LINEでのご相談にも対応していますので、新事業進出補助金の申請を検討されている方は、まずはお気軽にご相談ください。自社にとって最適な申請戦略を、一緒に考えるところからお手伝いします。

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