事業再構築補助金申請ガイド|2023年度公募の変更点や補助金額をご紹介

事業再構築補助金の概要

事業再構築補助金は、新分野展開や業態・事業転換などの「思い切った事業再構築」に取り組む中小企業や個人事業主を対象とした支援制度です。2023年からスタートした公募からは、新たに4つの申請枠が設立され、より事業者が使いやすい制度へと変革しています。

そんな事業再構築補助金ですが、実際に申請を検討している方は「どの申請枠を利用すべきか」、「どんな書類を用意すべきか」など、疑問点や不明点を抱いているのではないでしょうか。

そこで本記事では、補助金の申請・利用を検討している方に向け、2023年度の公募要領や補助金額、対象となる費用、主な変更点、申請スケジュールなどを解説します。また、記事後半では採択率を上げるポイントもご紹介。ポストコロナ時代に向け、補助金を活用して事業を再構築したい方はぜひご覧ください。

【この記事の監修者】

ライズ法務事務所 行政書士 米山浩史
以前は霞が関(中央官庁)で国家公務員として補助金行政、許認可業務、政策の企画立案等に従事。また、各省庁から複数名ずつ派遣されて創設された省庁横断チームに参画して新しい支援制度の設立も担当した。業務で培った広い視野と制度知識をもとに、企業・事業者の補助金申請をサポートしている。


【行政書士 米山浩史氏からのコメント】

事業再構築補助金は補助上限額が高く、新しい取り組みにチャレンジする際に役立つ支援制度のひとつです。

補助金制度は融資と違い、返済の必要がないことが大きな魅力ですが、本制度は申請にあたって経営革新等支援機関や金融機関からのサポートを必須としている(企業単独では申請できない)点をはじめ、様々な条件があります。制度の理解を深めながらの申請を心がけましょう。

※:本記事は、執筆時点の情報をまとめたものです。最新情報と異なる可能性があるため、各種補助金制度の詳しい情報については公式ウェブサイトも併せてご確認ください。

本記事でわかること

・事業再構築補助金の制度概要

・対象となる費用

・2023年8月末からスタートした第11回公募の詳細

・各申請枠の特徴、補助金額や補助率

・2023年度の申請スケジュール

・申請時に必要となる書類

・採択率を上げるポイント

事業再構築補助金は「ポストコロナに対応する中小企業等を支援する」制度

事業再構築補助金は、中小企業や個人事業主などがポストコロナ・ウィズコロナ時代で変化していく経済社会に対応するために導入されました。2021年3月からスタートしており、2023年8月現在は第11回公募を受け付けています。

コロナの影響で厳しい状況に陥った中小企業や個人事業主の、経営改善や新規事業の立ち上げに伴う「事業再構築」を資金の面でサポートする補助金で、令和4年度第2次補正予算では5,800億円が計上されています。

過去には、下記のような事業者・事業計画が採択され、補助金を利用した事業再構築にチャレンジしています。

事業者:航空機部品製造業者

事業計画:働き方改革やコロナ禍から需要が高まっている半導体関連部品の製造に着手(新分野展開)

 

事業者:金属加工業を展開する事業者

事業計画:既存の技術を応用し産業用ロボットの製造を開始(事業転換)

 

事業者:宿泊業を営んでいたホテル

事業計画:客室をコワーキングスペースに改修、在宅勤務者やワーケーションを行う方を対象にサービスを提供(業種転換)

 

事業者:アパレルショップの経営者

事業計画:ECサイトや注文管理システムを構築し、ネット販売を新たに開始(業態転換)

 

事業者:パルプ装置や製紙機械を製造していた事業者

事業計画:新設合併を行い、ウィズコロナにより需要の高まっているマスクをはじめとした衛生製品の製造業を開始(事業転換)

事業再構築補助金の補助対象

「事業内のどの経費が補助対象になるのか?」というのは、多くの方が抱く疑問のひとつです。事業再構築補助金では、下記の要素を満たす費用が対象となります。

①事業拡大につながる事業資産(有形・無形問わず)への相応規模の投資

②申請事業の対象として明確に区分できる経費(専ら申請事業に使用される経費)

あわせて具体的な補助対象経費の例を下記にまとめましたので、申請前の参考としてご活用ください。

・建物費(※1)

建物の建築・改修、建物の撤去、賃貸物件等の原状回復、貸し工場・貸店舗等の一時移転費等にかかる費用

・機械装置やシステム構築費(※2)

設備、専用ソフトの購入やリース等にかかる費用

・クラウドサービス利用費

・運搬費

・技術導入費

知的財産権導入に要する経費も含む

・知的財産権等関連経費

・外注費

製品開発に要する加工や設計等にかかる費用

・専門家経費(※3)

・広告宣伝費や販売促進費

広告作成、媒体掲載、展示会出展等にかかる費用

・研修費

教育訓練や講座受講等にかかる費用

なお、一過性の支出と認められる費用が申請内容の大半を占める場合は、原則として支援対象とはなりません。申請前に確認しておきましょう。

また、第10回公募より新設された「サプライチェーン強靭化枠」では、一部経費が対象外となります。詳細は、記事後半にあります各申請枠の詳細解説をご確認ください。

※1:建物費は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15条)における「建物」および「建物附属設備」にかかる経費が対象です。「構築物」に係る経費は対象になりません。
※2:機械装置・システム構築費は、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15条)における「機械及び装置」、「器具及び備品」、「工具」に係る経費が対象です。「構築物」、「船舶」、「航空機」、「車両及び運搬具」に係る経費は対象になりません。
※3:応募申請時の事業計画の作成に要する経費は補助対象外となります。

2023年度・令和5年度の事業再構築補助金の公募要領・補助金額

記事執筆時点で申請を受け付けている、2023年度第11回公募要領の概要は以下のとおりです。

公募期間:2023年8月10日(木) ~ 2023年10月6日(金)18:00

申請方法:事業再構築補助金ウェブサイトからオンライン申請

対象者:中小企業、中堅企業、小規模事業者、個人事業主等

申請枠:成長枠・グリーン成長枠・産業構造転換枠・最低賃金枠・物価高騰対策・回復再生応援枠・サプライチェーン強靭化枠の6つ(※1)

補助金額:1,500万円~5億円

補助率:1/2~3/4

※:公募要領は追加・変更が加えられることがあります。最新状況については、事業再構築補助金公式ウェブサイトも併せてご覧ください。

補助金額は最大5億円となっており、他補助金制度と比較して補助金額が高額である点が特徴のひとつです。また、申請枠が多岐にわたり、様々な事業再構築計画で活用できる補助金となっています。

なお、事業再構築補助金を申請するための条件「必須要件」は、下記の3点となっています。

【①事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること】

支援対象を明確化するために経済産業省より提示されている「事業再構築指針」記載の5つの類型に該当する事業であること。

【②事業計画について認定経営革新等支援機関の確認を受けること】

事業者自身で事業再構築指針に沿った事業計画を作成し、認定経営革新等支援機関の確認を受けること。

補助金額が3,000万円を超える案件は金融機関(銀行、信金、ファンド等)の確認も受けること。金融機関が認定経営革新等支援機関を兼ねる場合は、金融機関のみで良い。

【③付加価値額を向上させること】

補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0~5.0%(申請枠により異なる)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0~5.0%(申請枠により異なる)以上増加させること。

また上記に加えて、申請枠ごとに「追加要件」が設けられています。追加要件については、記事後半で各申請枠の特徴とともに解説していますので、ぜひそちらも併せてご確認ください。

※1:成長枠・グリーン成長枠を申請する事業者は、上乗せ枠として卒業促進枠・大規模賃金引上促進枠を利用可能。

事業再構築補助金における「中小企業」の定義とは?

事業再構築補助金は、中小企業や中堅企業を対象とした制度となっていますが、具体的には下記の条件にあてはまる企業が対象となります。

【中小企業】
中小企業基本法と同様の範囲となっており、業種ごとに下記の範囲を中小企業としています(※1~3)。

【中堅企業】
中小企業の範囲に入らない会社のうち、資本金10億円未満の会社を中堅企業としています。

※1:大企業の子会社等の、いわゆる「みなし大企業」は支援の対象外です。
※2:確定している(申告済みの)直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える場合は、中小企業ではなく、中堅企業として支援の対象となります。
※3:企業組合、協業組合、事業協同組合を含む「中小企業等経営強化法」第2条第1項が規定する「中小企業者」や、収益事業を行う一般社団法人、一般財団法人、NPO法人等も支援の対象です。

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2023年度・第11回事業再構築補助金の変更点・拡充内容

ウィズコロナ・ポストコロナの時代における経済社会変化に対応するための補助金としてスタートした事業再構築補助金は、社会や経済の変化に応じて制度内容を変更しています。

ここからは、記事執筆時の最新公募である2023年度・第11回公募の変更点、拡充内容7点をご紹介します。申請にあたり抑えておきたい要素もご紹介していますので、下記解説をぜひご確認ください。

新規設立された3つの申請枠

2022年度までの事業再構築補助金では、最大1.5億円の補助上限額が設けられていましたが、昨今のポストコロナ・ウィズコロナ情勢をふまえ、第10回公募からはより大規模な事業転換や新分野展開に対応できる体制の整備が進められています。

その目玉となるのが、第10回公募から新たに設けられた「成長枠」「産業構造転換枠」「サプライチェーン強靭化枠」の3申請枠です。

成長枠、産業構造転換枠は最大7,000万円サプライチェーン強靭化枠については最大5億円もの補助上限金額を設定し、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等を支援するものです。

既存枠を統合した「物価高騰対策・回復再生応援枠」

第9回まで存在した「回復・再生応援枠」と「緊急対策枠」を統合、新たにスタートしたのが「物価高騰対策・回復再生応援枠」です。

物価高騰対策・回復再生応援枠は、新型コロナウィルスや物価高等により厳しい業況にある事業者・事業再生に取り組む事業者を対象としています。第9回の回復・再生応援枠や緊急対策枠と比較すると、売上高や事業計画に関する要件が撤廃されているのが特徴です。

なお、各申請枠の補助上限金額や補助率、詳しい内容については後ほど個別にご紹介します。

大規模賃上げ達成による補助率の引上げ

成長枠、グリーン成長枠のふたつについては、補助事業期間内に下記2点を達成した場合、補助率が2/3に引き上げられます(※)。

①給与支給総額を年平均6%増加

②事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引上げ

ただし、補助事業終了後3~5年の間に給与支給総額を年率平均で2%以上増加できなかった場合、差額分(補助率1/6にあたる金額)を返還しなければなりません。補助事業終了後も、継続して賃上げ施策に取り組んでいきましょう。
※:中堅企業は1/2に引き上げ。

「グリーン成長枠」の拡充

グリーン成長枠は、環境に配慮した事業展開を行う中小企業等を対象とした申請枠です。第6回公募に設けられた申請枠ですが、第10回公募からは使い勝手向上を目的として、エントリー類型とスタンダード類型に2分されました。

エントリー類型は、これまでのグリーン成長枠と比較して開発期間や従業員などの要件が緩和されており、従業員規模の小さい中小企業や小さな事業再構築計画でも活用しやすい類型となっています。

いっぽうスタンダード類型は第9回までと同様に最大1.5億円の補助上限金額が設けられており、本格的な事業再構築計画に活用しやすい類型です。

規模拡大・大幅賃上げへの上乗せ支援(インセンティブ)

事業再構築補助金には、補助金額を上乗せして支援する制度が存在します。第10回では、成長枠、グリーン成長枠を対象とした上乗せ枠「卒業促進枠」「大規模賃金引上促進枠」のふたつから選んで申請可能です。

卒業促進枠は第10回より新設された枠組みです。成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して、特定の規模に成長する事業者に対し、申請枠に準じた補助金額、補助率1/2の追加補助金を給付する枠組みです(※1)。対象となる事業者は下記の通りです。

①成長枠又はグリーン成長枠に、同一の公募回で申請すること。

②成長枠又はグリーン成長枠の補助事業の終了後3~5年で中小企業・特定事業者・中堅企業の規模から卒業すること(※2)

いっぽう大規模賃金引上促進枠は、成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して、大規模な賃上げに取り組む事業者に最大3,000万円、補助率1/2の追加補助金を給付する枠組みです(※1)。対象となる事業者は下記の通りです。

①成長枠又はグリーン成長枠に、同一の公募回で申請すること。

②成長枠又はグリーン成長枠の補助事業の終了後3~5年の間に、事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引上げること。

③成長枠又はグリーン成長枠の補助事業の終了後3~5年の間に、従業員数を年率平均1.5%以上(最低事業計画期間×1人の増員が必要)増員させること

なお、2種類の上乗せ枠を併用することはできません。申請前にどちらの対象となるかを確認し、申請する枠組みを検討しておきましょう。

※1:中堅企業の補助率は1/3となります。
※2:・応募時点での企業規模により達成要件は異なります。中小企業は特定事業者、中堅企業又は大企業に成長、特定事業者は中堅企業又は大企業に成長、中堅企業は大企業に成長する必要があります。

一部申請類型の複数回採択

事業再構築補助金では、グリーン成長枠に限り過去に採択された事業者でも、再度申請し採択されることが可能でした。加えて第10回公募からは、新たに設立された産業構造転換枠・サプライチェーン強靭化枠についても一定の条件下で再申請・採択が可能となりました。

【第1回~第9回公募までにグリーン成長枠以外で1度目の採択を受けた事業者】

グリーン成長枠・産業構造転換枠・サプライチェーン強靭化枠に限り2回目の申請が可能。
【グリーン成長枠で1度目の採択を受けた事業者】

サプライチェーン強靭化枠に限り2回目の申請が可能。

 

※:支援を受けられる回数は2回が上限となります。

※:産業構造転換枠・サプライチェーン強靱化枠は、1回目の採択額(交付決定を受けている場合は交付決定額又は確定額)との差額分が補助上限金額となります。

なお、複数回採択を希望する場合は、「既に事業再構築補助金で取り組んでいる事業再構築とは異なる事業再構築であることの説明資料」および「既存の事業再構築を行いながら新たに取り組む事業再構築を行うだけの体制や資金力があることの説明資料」を追加で提出する必要があります。

事前着手制度の変更

事業再構築補助金には、補助金の申請と別に専用の申請を事前に行うことで、交付決定前に事業に着手できる「事前着手制度」が存在します。第10回公募からは、この事前着手制度を活用できる申請枠が最低賃金枠、物価高騰対策・回復再生応援枠、サプライチェーン強靭化枠の3つに限定されています。

制度の活用を検討されている方は、自身の事業計画が対応する申請枠に当てはまっているかを確認しておきましょう。

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2023年度・第11回公募の申請枠

公募要領でも簡単に紹介しましたが、第11回公募では6つの申請枠が用意されています。ここからは、各申請枠の詳細について見ていきましょう。

本項では、申請枠ごとに「概要」「補助上限金額」「補助率」「追加要件の概略」を紹介しています。自身の事業計画をふまえ、どの申請枠に申し込むかの検討にご活用ください。

なお、申請時には各回の公募要領に記載されている申請枠の追加要件をチェックしたうえで手続きを始めるようにしてください。事業が追加要件を満たせるかしっかりと確認したい方は、専門家への相談も検討してみましょう。

※:本項で掲載している補助上限金額・補助率の表は、すべて経済産業省「事業再構築補助金の概要(中小企業等事業再構築促進事業)」からの引用となります。

成長枠

成長枠は、第9回までの「通常枠」に代わり新しく設けられました。公募要項では、成長分野に向けた大胆な事業再構築に取り組む事業者を支援する申請枠と示されています。

過去に設けられていた通常枠と比較すると、要件から「売上高減少要件」が撤廃されており、幅広い企業が活用できるのが特徴です。

必須要件で指定される「付加価値額増加率」は年率平均4.0%以上となっています。また、追加要件の概略は下記の通りです。

① 取り組む事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していること(※)

② 事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること

※:対象となる業種・業態については、事務局が提示する指定リスト(https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/seichowaku_list.pdf)をご確認ください。
※:指定された業種・業態以外であっても、応募時に要件を満たす業種・業態である旨データ等を提出し、認められた場合には、対象となり得ます。

グリーン成長枠

<エントリー類型>

<スタンダード類型>

グリーン成長枠は、環境に配慮した事業展開を通して高い成長を目指す事業者を対象とした補助金です。

第10回公募より使い勝手の向上を目的とした「エントリー類型」が設けられました。エントリー類型は、開発期間や従業員などの要件が緩和されているのが特徴で、従業員規模の小さい中小企業や小さな事業再構築計画でも活用しやすい類型となっています。

必須要件で指定される「付加価値額増加率」は、エントリー類型では年率平均4.0%以上、スタンダード類型では年率平均5.0%以上となっています。追加要件の概略は以下の通りです。

①グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取組として記載があるものに該当し、その取組に関連する1年以上の研究開発・技術開発又は従業員の5%以上に対する年間20時間以上の人材育成(※)をあわせて行うこと

②事業終了後3~5年で給与支給総額を年率平均2%以上増加させること

※:外部研修または専門家によるOJT研修が必要です。

産業構造転換枠

産業構造転換枠は、第10回公募で新たに設けられた申請枠です。産業構造の変化によって事業再構築が強く求められる業種・業態の事業者を対象としています。

他申請枠と比較し補助率が高めに設定されているほか、対象経費に廃業費が追加されています。また、廃業費がある場合には補助上限金額が上乗せされるなど、業種・業態転換を強く支援する内容となっているのが特徴です。

必須要件で指定される「付加価値額増加率」は年率平均3.0%以上となっています。また、追加要件の概略は下記の通りです。

①現在の主たる事業が過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上縮小する業種・業態に属しており、当該業種・業態から別の業種・業態に転換すること(※1)

②地域における基幹大企業が撤退することにより、市町村内総生産の10%以上が失われると見込まれる地域で事業を実施しており、当該基幹大企業との直接取引額が売上高の10%以上を占めること(※2)

①については、業界団体が要件を満たすことについて示した場合、その業種・業態を指定業種として指定されます。また、コロナ禍後~今後の10年間で市場規模が10%以上縮小することについて、応募時に客観的な統計等で示し、事務局の審査で認められた場合にも対象となります。

②については、要件を満たす地域であることについて、自治体が資料を作成し証明する必要があります。業態・業種・地域の指定リストは随時更新されますので、申請時にあわせてご確認ください。

物価高騰対策枠・回復再生応援枠

第9回公募にあった回復・再生応援枠と緊急対策枠を統合させ新設されたのが、物価高騰対策枠・回復再生応援枠です。コロナ禍・物価高騰により依然として厳しい業況が続く事業者を支援するための申請枠で、従業員規模5人以下でも上限1,000万円という補助金額が特徴です。

必須要件である「付加価値額増加率」は年率平均3.0%以上が指定されています。追加要件の概略は下記の通りです。

① 2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、2019年~2021年の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること

②中小企業活性化協議会から支援を受け、再生計画等を策定していること

なお①については、付加価値額(売上高×1.5)減少で代替可能です。

最低賃金枠

最低賃金枠は、最低賃金引上げを検討しているものの、その原資確保が困難な事業者を対象とした申請枠です。

補助率が高めに設定されているほか、審査において「加点措置」が行われることが概要に明記されており、物価高騰対策・回復再生応援枠と比較して採択率において優遇されるという特徴を持ちます。

必須要件のひとつ「付加価値額増加率」は年率平均3.0%以上が指定されています。追加要件の概略は下記の通りです。

① 2022年1月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、2019年~2021年の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること

② 2021年10月から2022年8月までの間で、3か月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員の10%以上いること

サプライチェーン強靭化枠

第10回公募より新設されたサプライチェーン強靭化枠は、海外に拠点を置く製造業の国内回帰を進め、国内サプライチェーンおよび地域産業の活性化を目指す製造事業者を支援する申請枠です。

サプライチェーン強靭化枠最大の特徴が、5億円に設定された補助上限金額です。拠点の国内移転にあたって大きなサポートが期待できる補助金ですが、申請する事業が事業再構築指針で示されている「国内回帰」の類型に該当する必要があります。また、補助対象経費は「建物費」「機械装置・システム構築費(※1)」に限定されている点には留意が必要です。

なお、必須要件において指定される「付加価値額増加率」は年率平均5.0%以上となっているほか、追加要件の概略は下記の5通りとなっています。

①取引先から国内での生産(増産)要請があること(事業完了後、具体的な商談が進む予定があるもの)

②取り組む事業が、過去~今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡大する業種・業態に属していること(※2)

③下記の要件をいずれも満たしていること

⑴経済産業省が公開するDX推進指標を活用し、自己診断を実施し、結果を独立行政法人情報処理推進機構(IPA)に対して提出していること

⑵IPAが実施する「SECURITY ACTION」にて、「★★二つ星」の宣言を行っていること

④下記の要件をいずれも満たしていること

⑴交付決定時点で、設備投資する事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高いことただし、新規立地の場合は、当該新事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高くなる雇用計画を示すこと

⑵事業終了後、事業年度から3~5 年の事業計画期間終了までの間に給与支給総額を年率平均2%以上増加させる取組であること

⑤「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトにて、宣言を公表していること

※1:設備、専用ソフトの購入等が対象。補助事業実施期間中の設備等のリースに係る経費は補助対象外となります。
※2:指定された業種・業態以外であっても、応募時に要件を満たす業種・業態であることを示すデータを提出し、認められた場合には対象となります。対象となる業種・業態は、リストにて提示されます。リストは随時更新される予定です。

2023年度の事業再構築補助金申請スケジュール

記事執筆時点の最新公募となる第11回公募は、2023年8月10日(木) ~ 2023年10月6日(金)18:00までの期間で公募を受け付けています。なお、次回公募のスケジュールは未定となっていますが、2023年度末までに3回の公募が開催される予定です。

過去のスケジュールをふまえると、第12回公募は第11回公募の終了直後である2023年10月上旬~中旬に公募が開始されると思われます。第11回の公募期間中に書類や申請枠の検討が間に合わない方も、スキマ時間に第12回公募に向け準備しておくことをおすすめします。

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事業再構築補助金の申請手順

事業再構築補助金は、複数の申請枠・類型が用意されていますが、申請の流れ自体は統一されています。下記に流れをまとめましたので、申請までのスケジューリングにご活用ください。

1.認定経営革新等支援機関の選定、事業計画の作成

事業計画の作成にあたり取り組んでおきたいのが、事業計画書の共同策定・確認を行う認定経営革新等支援機関の選定です。中小企業庁ホームページの検索システムを活用した、早めの選定をおすすめします。

 

2.「GビズIDプライムアカウント」の取得

申請手続きにて使用するIDであり、必ず取得すべきものです。詳しい内容・取得方法は後ほど解説します。

 

3.説明会への参加

事務局が実施する説明会への参加は、採択事業者の義務となっています。申請前に必ず説明会へ参加しましょう。説明会のスケジュールは、事務局ウェブサイトのほか、地方自治体や商工会のウェブサイトでも発表されますので、定期的にチェックしておきましょう。

 

4.事前着手申請の手続き

最低賃金枠、物価高騰対策・回復再生応援枠で利用できる事前着手制度を活用される方は、この段階で事前着手申請を行います。申請は、本申請と同じくjGrants内に設けられた専用サイトより行います。

 

5.交付申請書・添付書類の作成

申請に必要となる添付資料を作成します。必要な書類については、記事後半にて解説していますので、併せてご確認ください。

 

6.交付申請

事業再構築補助金は、電子申請形式のみでの受付となります。取得したGビズIDプライムアカウントを使って専用の申請システムにログインし、各種情報を入力、書類を提出、申請します。

 

7.審査・交付決定

事務局による審査が完了すると、採択・不採択の結果が事務局から通知されます。採択された案件は、名称、補助事業計画名、事業計画書の概要、認定経営革新等支援機関名等が公表されます。

【行政書士 米山浩史氏からのコメント】

事業再構築補助金では代理申請が認められていません。実際に、補助金事務局によるアクセス解析の結果、代理申請が発覚し審査対象外となったケースが発生しています。

丸投げすることなくご自身で申請をおこないましょう。

申請前に取得すべき「GビズIDプライムアカウント」

先述した「GビズIDプライムアカウント」は、企業から国への申請に関する行政サービスを一つのアカウントで利用できる認証システムです。事業再構築補助金をはじめとした補助金制度の申請を、ひとつのアカウントで行えます。

申請はGビズIDのウェブサイトより行います。申請時に必要となる下記のものを用意し、サイトへアクセスしましょう。

・メールアドレス(アカウントID)

・操作端末(パソコン)

・プリンター

・印鑑証明書と登録申請書

・スマートフォンまたは携帯電話

なお、GビズIDプライムアカウントの取得時には約2週間にわたり審査が実施されます。スムーズな申請のためにも、早めの取得を心がけましょう。

なお、個人事業主の方は、スマートフォンアプリとマイナンバーカードを使った即時発行が可能です。詳しい方法は下記記事をご覧ください。

GビズIDプライムはオンライン手続きが可能!申請方法や2段階認証設定を解説

GビズIDプライムはオンライン手続きが可能!申請方法や2段階認証の手順を解説

申請に必要となる書類

申請枠を問わず提出しなければならない、申請時の必須書類は下記の通りです。

・事業計画書

・認定経営革新等支援機関による確認書(※)

・決算書等

・経済産業省ミラサポplus「電子申請サポート」により作成した事業財務情報

・従業員数を示す書類

・収益事業を行っていることを説明する書類

上記に加え、申請枠ごとに必要となる書類を適宜提出します。例えば、成長枠では「市場拡大要件を満たすことを説明する書類」、「給与総額増加要件を満たすことを説明する書類」の追加提出が必要です。

なお、事務局公式ウェブサイトには添付書類確認シートが用意されています。申請時にはこちらのシートもご活用ください。

※:補助金額が3,000万円を超える事業の場合は、金融機関による確認書も必要となります。

事業再構築補助金の採択率を上げるポイント

(引用:事業再構築補助金事務局事業再構築補助金第10回公募の結果について(令和5年9月)より)

2023年9月に公表された第10回公募結果では、10,821件の応募に対し採択件数は5,205件、審査通過率は48.1%となっています。

事業再構築補助金は、申請後に行われる事務局による審査によって採択・不採択が決まります。残念ながら、申請枠や事業計画書は申請者ごとに異なりますし、公募ごとに制度内容も少しずつ変わっていくため「必ず採択される方法」は存在しません。

しかし、申請において「抑えるべきポイント」は存在します。ここからは、公募要項や過去の採択実績をふまえた、採択率を上げるためのポイントをご紹介します。

加点項目の把握

公募要項には、採択に有利となる要素として「加点項目」が掲載されています。指定された条件を満たした事業者は、審査において採択されやすくなるのです。

例として、第10回公募における加点項目の一部をご紹介します。

①成長枠・グリーン成長枠・サプライチェーン強靱化枠に申請し、大幅な賃上げを実施する事業者

②大きく売上が減少しており業況が厳しい事業者

③最低賃金枠に申請する事業者

④経済産業省が行う EBPM (エビデンスに基づく政策立案)の取組みに協力している事業者

⑤パートナーシップ構築宣言を行っている事業者に対する加点

別途必要となる書類の提出などを行い、上記条件を満たすことで、審査において加点措置が行われます。採択率を上げたい方は、事業計画書を共同作成する認定経営革新等支援機関に相談しつつ、申請する事業で達成できる加点項目を検討してみましょう。

補助対象にならない経費の把握

採択率を上げる要素があるいっぽうで、不採択となる可能性が高まる要素も存在します。その代表例とも言えるのが、申請費用の内訳です。

事業再構築補助金では、計上されている経費の大半が補助対象外だと不採択になります。申請時には計上費用の内訳をしっかりと確認しておきましょう。参考資料として、補助対象外となる経費の一例をご紹介します。

既存事業に活用する等、専ら補助事業のために使用されると認められない経費

事務所等に係る家賃、保証金、敷金、仲介手数料、光熱水費

諸経費、会社経費、一般管理費、現場管理費、雑費等、詳細が確認できない経費

フランチャイズ加盟料

電話代、インターネット利用料金等の通信費(クラウドサービス利用費に含まれる付帯

経費は除く)

販売する商品の原材料費、予備品の購入費、文房具などの事務用品等の消耗品代、雑誌

購読料、新聞代、団体等の会費

飲食、奢侈、娯楽、接待等の費用

不動産の購入費、構築物の購入費、株式の購入費

借入金などの支払利息及び遅延損害金

記事のまとめ

事業再構築補助金は、ポストコロナ・ウィズコロナ時代で変化していく経済社会に「事業の再構築」で対応する中小企業や個人事業主などをサポートするための補助金です。

本記事で解説したように、第11回公募では、使い勝手の向上を目的とした申請枠の新設、制度の拡充が行われるなど、より事業者に寄り添った補助金として内容が刷新されています。事業や業種の転換を検討されている方は、ぜひ事業再構築補助金を活用してはいかがでしょうか。

ところで、事業計画の策定には一般的に時間がかかるとされています。可能であれば、早い段階で業況の分析、新事業の市場分析などを進めるべきでしょう。課題設定及び解決方法、実施体制、資金計画などを詳細に練ることは、具体的な事業計画の作成に役立ちますし、採択率向上のカギにもなります。

なお、分析に割く時間をなかなか確保できない方には、事業計画書の作成をサポートする行政書士や中小企業診断士への相談がおすすめです。補助金の窓口では、無料のLINE電話相談にも対応しています。最適な補助金選び、申請書類作成から受給までをトータルサポートいたしますので、ぜひ一度お気軽にお問合せくださいませ。

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