2月13日から申請が開始された「ものづくり補助金」の第17次締切分では、生産プロセスやサービス提供の効率を向上させるための設備投資をサポートする新支援枠「省力化(オーダーメイド枠)」へ申請が可能です。なお、新たな支援枠の設立と合わせて、新たな審査方法である「口頭審査」が導入されている点に注意しましょう。
本記事では、新支援枠の概要や申請方法、口頭審査をはじめとした「申請にあたって注意すべきポイント」を解説します。記事後半では採択に有利になる「加点項目」についても解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
※:本記事は、執筆時点の情報をまとめたものです。最新情報と異なる可能性があるため、各種補助金制度の詳しい情報については公式サイトも併せてご確認ください。
本記事でわかること
・ものづくり補助金第17次締切分のスケジュール
・省力化(オーダーメイド枠)の概要、追加要件
・ものづくり補助金第17次締切分の申請方法
・第17次締切分で追加された「口頭審査」について
・第17次締切分の加点項目について
目次
第17次締切分から新支援枠がスタートした「ものづくり補助金」
働き方改革、インボイス制度対応などを進める中小企業・小規模事業者等を支援する「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」。
第17次締切分より新たな支援枠として「省力化(オーダーメイド)枠」「製品・サービス高付加価値化枠」「グローバル枠」が発表されました。なお、第17次締切分では「省力化(オーダーメイド)枠」のみが申請対象です。
それぞれの支援枠は従来の枠組みと比較して補助上限額が引き上げられており、大規模な装置やシステムの導入に活用しやすくなっています。
なお、第17次締切分のスケジュールは下記の通りです。
公募開始:2023年12月27日(水)17:00
電子申請受付:2024年2月13日(火)17:00~
申請締切:2024年3月1日(金)17:00まで
※採択発表は2024年5月中旬頃の予定
17次締切分で応募できる省力化(オーダーメイド枠)について
省力化(オーダーメイド)枠は、生産プロセス・サービス提供方法の効率化や高度化を目的とした、「デジタル技術を活用した専用設備(オーダーメイド設備)」の導入を支援する申請枠です。
「デジタル技術などを活用した専用設備」とは、工程自動化のためにICT や IoT、AI、ロボット、センサー等を活用した、機械装置やシステム(ロボットシステム等)を指します。
なお、システムは外部のシステムインテグレータ(Sler)と連携し、事業者の個々の業務に応じて専用で設計されたものでなければなりません。単なる機械装置の導入は、対象とならない点に注意しましょう。
省力化(オーダーメイド)枠の詳細は下記の通りです。
【補助金額(従業員数に応じて変動)】
5人以下:100万円~750万円
6~20人:100万円~1,500万円
21~50人:100万円~3,000万円
51~99人:100万円~5,000万円
100人以上:100万円~8,000万円
【補助対象者の概要】
中小企業者、小規模企業者、小規模事業者
特定事業者の一部
特定非営利活動法人、社会福祉法人
【補助対象経費】
機械装置・システム構築費(必須費用)
技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費
【補助率】
中小企業
→補助金額1,500万円までは1/2、1,500万円を超える部分は1/3
小規模企業者・小規模事業者・再生事業者
→補助金額1,500万円までは2/3、1,500万円を超える部分は1/3
なお、17次公募では16次公募同様に「大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例」が用意されています。賃上げに取り組む事業者は、最大2,000万円の補助上限額引き上げを受けられるので、ぜひ活用しましょう。
特例の詳細は、下記記事でご確認ください。
ものづくり補助金とは?2024年の申請方法や対象事業、金額などを解説
省力化(オーダーメイド枠)の追加要件
省力化(オーダーメイド枠)を利用するには、基本要件に加え、支援枠ごとに定められた追加要件を満たす必要があります。
【追加要件】
①3~5年の事業計画期間内に、補助事業において、設備投資前と比較して労働生産性(※1)が2倍以上となる事業計画を策定すること
②3~5年の事業計画期間内に、投資回収可能な事業計画(※2)を策定すること
③外部SIerを活用する場合、3~5年の事業計画期間内における保守・メンテナンス契約を中小企業等とSIer間で締結することとし、SIerは必要な保守・メンテナンス体制を整備すること(※3,4)。
④本事業に係る資金について金融機関(ファンド等を含む)からの調達を予定している場合は、金融機関による事業計画の確認を受け、金融機関による確認書を提出する(※5)。
※1:労働生産性は「付加価値額(付加価値額の算出が困難な場合は生産量)/(労働人数×労働時間)」とする。完全自動化の場合は「(労働人数×労働時間)」を便宜的に「0.1」とする。
※2:投資回収年数は「投資額/(削減工数×人件費単価)」とする。
※3:事業終了後、実績報告時点で確認されます。
※4:保守・メンテナンスに係る費用は補助対象外です。
※5:金融機関は事業所の所在地域以外の機関を選定しても問題ありません。
第17次締切分の申請方法
第17次締切分は、GビズIDプライムアカウントを利用した電子申請形式のみの受付となります。必要書類の作成と並行して、GビズIDプライムアカウントの準備を進めましょう。
GビズIDプライムアカウントの取得については、下記記事も併せてご確認ください。
『GビズID』のアカウント取得方法~3種類のアカウントはどれを取得すればいいの?
GビズIDプライムはオンライン手続きが可能!申請方法や2段階認証設定を解説
なお、第17次締切分で全事業者が入力・提出しなければならない書類や情報は下記の通りです。
【申請システムで入力する書類・情報】
・事業者情報(法人番号、代表者氏名、本社所在地、株主等一覧など)
・経費の明細
・事業計画名、事業計画書の概要
・補助経費に関する誓約書
・賃金引上げ計画の誓約書
【提出が必要な書類】
すべてPDFファイルで提出します。
・事業計画書(提出様式に沿ったものを提出)
・事業計画書算出根拠
・決算書等
・従業員数の確認書類
・労働者名簿
第17次締切分申請におけるポイント
最後に、第17次締切分で把握しておきたいポイントを紹介します。
ポイント①省力化(オーダーメイド枠)独自の審査項目
省力化(オーダーメイド)枠には、独自の審査項目が設けられています。
【省力化(オーダーメイド)枠に追加された審査項目】
①システム開発については汎用的に利用できるパッケージシステムを元に、顧客の希望に合わせて機能を追加するなどのカスタマイズを行う開発方式や、システムやソフトウェアをゼロからオーダーメイドで開発する開発方式となっており、オーダーメイドの取組になっているか。
②人手不足の解消に向けて、デジタル技術等を活用した専用設備(オーダーメイド設備)の導入等により、革新的な生産プロセス・サービス提供方法の効率化・高度化を図る取り組みに必要な設備・システム投資等となっている
「オーダーメイド設備」の導入により、革新的な生産プロセス・サービス提供方法の効率化・高度化を図る取り組みである必要があります。
ポイント②口頭審査の導入
第17次締切分より新たにスタートしたのが、補助申請額が一定規模以上の事業者を対象としたZoomなどによるオンライン形式での「口頭審査」です。
口頭審査では、事業計画の適格性、革新性、優位性、実現可能性等が確認されます。さらに、本事業の申請の経緯(意思決定の背景)や、事業を実施するにあたってのマーケティング調査など、計画書に記載されていない内容が質問される可能性もあります。
また、口頭審査は申請事業者自身(法人代表者等)が対応しなければなりません。事業計画書作成支援者、経営コンサルタントなどが対応したり、審査に同席したりすることは認められていません。
口頭審査期間は2024年4月1日(月)~2024年4月12日(金)で、事業者側から実施日時が連絡されます。事業者側で日時の指定ができない点に注意しましょう。
ポイント③18次締切分との関係性
17次締切に申請した事業者は、1月31日に公募を開始した18次締切の公募に応募できません。
第18次締切では、省力化(オーダーメイド枠)に加え「製品・サービス高付加価値化枠」と「グローバル枠」への申請が可能です。ご自身の業務スケジュールや設備投資・事業計画の内容をふまえ、どちらの公募に申請するか検討しましょう。
ポイント④第17次締切分の加点項目
ものづくり補助金には、一定の条件を満たすことで採択において有利に働く「加点項目」が用意されています。第17次締切分では、下記の加点項目から最大6項目を申請可能です。
①成長性加点
→有効な期間の経営革新計画の承認を取得した事業者
②政策加点
→創業・第二創業後間もない事業者
→パートナーシップ構築宣言を公表している事業者
→「再生事業者」に該当する事業者
→DX認定事業者として認定されている事業者
→「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を利用している事業者
→令和4年度に健康経営優良法人に認定された事業者
→技術情報管理認証制度の認証を取得している事業者
→J-StartUpまたはJ-StartUp地域版に認定された事業者
→取引先事業者がグリーンに係る「パートナーシップ構築宣言」をしている事業者(※1)
→J-クレジット制度を活用している事業者
→GXリーグに参画している事業者
→カーボンフットプリント(CFP)を算定している事業者
③災害等加点
→有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した事業者
④賃上げ加点等
→事業計画期間(※2)における給与支給総額と事業場内最低賃金をそれぞれ一定値以上とする「賃上げ計画書」を有し、賃上げに関する誓約書を提出している事業者
→被用者保険の適用拡大に先立ち、任意適用に取り組む対象中小企業
⑤女性活躍等の推進の取り組み加点
→「えるぼし認定」を受けている事業者
→「女性の活躍推進企業データベース」に女性活躍推進法にもとづく一般事業主行動計画を公表している事業者(※3)
→「くるみん認定」を受けている事業者
→「両立支援のひろば」に次世代育成支援対策推進法にもとづく一般事業主行動計画を公表している事業者(※3)
※1:宣言文中に項目1(個別項目d、グリーン化の取組)について記載がある事業者
※2:補助事業完了年度の翌年度以降
※3:従業員100人以下の事業者が対象
なお上記の加点項目のうち、一部では追加書類の提出が必要です。加点項目の詳細や利用の可否については、申請をサポートする専門家へご確認ください。
まとめ
ものづくり補助金の第17次締切分では、新支援枠「省力化(オーダーメイド枠)」に申請できます。補助上限額が引き上げられ、大規模な設備を導入しやすくなったものづくり補助金。生産工程やサービス提供方法の効率化・高度化を目指す事業者は、ぜひ申請を検討してみましょう。
なお、補助金の窓口では採択実績を持つ中小企業診断士・行政書士による申請サポートを実施しています。無料のZoomオンライン面談も実施していますので、申請の手間を抑えたい方、より良い事業計画を策定したい方は、ぜひ相談フォームより面談をお申込みください。