現代ではさまざまな補助金があり、申請方法や、採択後の報告の手続きも難しく、複雑になっています。
そんなとき、ひとりで悩まず、無料で相談できる場所の一つが、全国各地にある商工会議所です。
この記事では、補助金を申請するときに必要なかかわりがある、商工会議所の基本についてまとめました。
【この記事の監修者】
ライズ法務事務所 行政書士 米山浩史
以前は霞が関(中央官庁)で国家公務員として補助金行政、許認可業務、政策の企画立案等に従事。また、各省庁から複数名ずつ派遣されて創設された省庁横断チームに参画して新しい支援制度の設立も担当した。業務で培った広い視野と制度知識をもとに、企業・事業者の補助金申請をサポートしている。
【行政書士 米山浩史氏からのコメント】
商工会議所はその地域の商いに関する様々な情報を持っていますので、特にマンパワーが限られている中小企業や個人事業主は非常に頼りになる存在です。
本記事で、どのような組織なのか確認しておきましょう。
目次
そもそも、商工会議所とは?
地域の商業や工業の発展を目的として、地元のあらゆる業種の経営者が自由に集まって運営されている、非営利・非政治的な公益団体です。多くの場合は、市や区などの単位で設置されています。
商工会議所に、かなり近い存在として商工会があります。これは町や村を単位にして、同様の目的で組織・運営されている団体となっています。
商工会議所と商工会では、補助金申請の相談窓口としての役割はほぼ同じです。とはいえ、商工会議所は、地元の中小企業の支援や経営改善だけでなく、国境を越えた国際的な活動も併せて実行していることが多いです(貿易証明(原産地証明)など)。その点では商工会と少し異なります。
そして、全国各地の商工会議所・商工会を束ねる存在が、日本商工会議所や全国商工団体連合会です。どちらも本部は東京都内にあります。
商工会議所では、中小企業が活用できる助成金や補助金の案内、さらには、申請に必要な事業計画書などの作成の支援を行います。商工会議所の会員でも非会員でも無料で相談できます。ただし、混雑している場合もありますので、事前に電話して予約することをお勧めします。
補助金の具体的な内容は、国や自治体(都道府県など)の各年度の予算によって大小さまざま変わりますので、「去年はOKだったのに、今年はNG」「去年まであったのに、今年はなくなった」という扱いが頻繁に起こります。そんなとき、多くの場合に無料で相談できる商工会議所や商工会は、有り難い存在です。
【商工会議所でできる相談内容】
起業支援: 新規事業の立ち上げや創業に関する相談を受け付け、必要な手続きや資金調達の情報提供、ビジネスプランの作成支援などを行います。
経営相談: 経営課題や経営改善に関する相談に応じ、経営コンサルティングや経営研修の情報提供、経営者交流の場の提供などを行います。補助金の活用相談も一緒にできます。
法務・労務相談: 法律や労働関係に関する相談を受け付け、労働法や契約書の作成方法、労働条件の相談、労務管理のアドバイスなどを行います。
輸出入・国際展開支援: 海外展開や輸出入に関する相談を受け付け、輸出入の手続きや貿易情報の提供、海外市場調査や貿易セミナーの開催などを行います。
税務相談: 税金に関する相談や申告手続きについての情報提供やアドバイスを行います。
人材育成・雇用支援: 採用や教育研修に関する相談を受け付け、採用情報や人材育成プログラムの提供、雇用制度や労務管理のサポートなどを行います。
商工会議所に相談できる、おもな補助金
商工会議所では、そのときに国や自治体が公募している補助金を幅広く案内していますが、主要なところでは次の通りです。なお、商工会議所によっては、補助金専門の相談員を用意しているところもあります。もし訪問する際には、混雑を避けるため、事前に専門の相談員にアポを入れましょう。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、中小企業や個人事業主などがポストコロナ・ウィズコロナ時代で変化していく経済社会に対応するために導入されました。2021年3月からスタートしており、3か月ごとに公募を受け付けています。
補助金額は最大5億円となっており、他補助金制度と比較して補助金額が高額である点が特徴のひとつです。また、申請枠が多岐にわたり、様々な事業再構築計画で活用できる補助金となっています。申請枠として、成長枠・グリーン成長枠・産業構造転換枠・最低賃金枠・物価高騰対策・回復再生応援枠・サプライチェーン強靭化枠の6つがあります。
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小規模事業者持続化補助金
従業員数が比較的少ない小規模事業者が、新たな販路を開拓したり、従業員の労働生産性を向上したりするなど、経営の打開策への取り組みに使った経費の一部を補助する制度です。
この持続化補助金は、商工会、商工会議所のサポートを受けながら経営計画書、補助事業計画書を作成することを前提に制度設計されていますので、商工会議所に相談することを遠慮する必要はまったくありません。
なお、補助金申請に必須の商工会議所発行「様式4」の取得には時間がかかります。チェックに数週間かかる場合がありますので早め早めの申請書作成をお勧めします。
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ものづくり補助金
中小企業や小規模事業者が、革新的なサービスを開発したり、新商品の試作を進めたり、生産過程を改善して労働生産性を向上させたりするため、設備投資に費やした経費の一部を補助します。製造業のみを対象とせず、サービス業も含め幅広い業種の経営者が申請できる補助金です。
ものづくり補助金の申請は、100%電子化されていますので、商工会議所が申請窓口になるわけではありません。しかし、補助額の上限は数千万円単位と大きいですし、申請内容や条件なども複雑です。まずは商工会議所の無料相談を利用して、不明・不安な点を問い合わせてみるといいでしょう。
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IT導入補助金
中小企業・小規模事業者などが、労働生産性や売上の低迷など、自社の抱える問題を解決するために、新たなITツールを導入するとき、経費の一部を補助します。
基本的には、そのITツールを製造販売する業者(ITベンダー)の協力を得ながら共同申請しなければならないのですが、IT導入補助金の基本について知りたいとき、最初の相談窓口として、商工会議所を頼ってみるのもいい選択です。
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事業承継・引継ぎ補助金
事業承継とは、平たくいえば経営者の交代です。多くの場合は、高齢などを理由に経営者が引退するとき、その後継者を指名して、次の代を託すことを意味しています。M&Aや営業譲渡など、その会社にとっても重大な手続きを伴うことが多いです。
この事業承継をきっかけとして、経営革新や事業転換などを行う中小企業に対して、その新たな取り組みにかかる経費の一部を補助しています。
補助金の申請「代行」を商工会議所に依頼できる?
残念ながら、商工会議所・商工会では、補助金の申請書や事業計画書などを代わりに書いてくれません。あくまでもアドバイスのみで、基本的には、外部の専門家かコンサル会社が執筆することを前提に相談を受け付けているからです。
また、補助金の種類によっては事業計画書に書かなければならないポイント、採択されやすいストーリーの作り方、加点される要素や条件などがあり、これらは外部の専門家の方が詳しく熟知しています。
もし、事業計画書の代筆・作成を依頼したい場合には、補助金申請代行を受け付けている行政書士・中小企業診断士・税理士などに問い合わせましょう。
【行政書士 米山浩史氏からのコメント】
商工会議所への相談は事業者自身が行うのが原則であり、申請をサポートする専門家と商工会議所だけで相談することは認められていない場合が多いです。
計画書の作成・申請準備などは専門家に丸投げせず、一緒に取組むことを心がけましょう。