2023年11月29日に成立した「令和5年度補正予算」を受けて、1,000億円の予算のもと中小企業省力化投資補助事業が実施されることが決められました。中小企業省力化投資補助金では、人手不足に悩む中小企業の売上拡大や生産性向上を後押しする支援が行われます。
本記事では、中小企業省力化投資補助金の補助上限額や対象者、公募スケジュールについて解説します。
なお、本記事の内容は2024年1月26日に公告された「『中小企業省力化投資補助事業』に係る事務局の公募要領」をもとに作成していますが、補助要件などについては今後補助対象となる事業者の実情を踏まえて変更となることもあります。
【この記事の監修者】
ライズ法務事務所 行政書士 米山浩史
以前は霞が関(中央官庁)で国家公務員として補助金行政、許認可業務、政策の企画立案等に従事。また、各省庁から複数名ずつ派遣されて創設された省庁横断チームに参画して新しい支援制度の設立も担当した。業務で培った広い視野と制度知識をもとに、企業・事業者の補助金申請をサポートしている。
【行政書士 米山浩史氏からのコメント】
この補助金は、事業再構築補助金の予算を再編して実施される大型補助金として注目度が高くなっています。早めに申請できるよう準備をしておきましょう。
目次
中小企業省力化投資補助金とは?
中小企業省力化投資補助金とは、「令和5年度補正予算」の成立によって実施が決まった補助金事業です。まずは、その制度概要を確認していきましょう。
中小企業省力化投資補助金の概要
中小企業省力化投資補助金とは、人手不足に悩む中小企業が売上拡大や生産性向上に取り組むことを後押しするための補助金事業です。対象となるのは、IoTやロボットなどの製品を取り入れる際の経費の一部で、賃上げに同時に取り組むことで最大1,500万円の補助金を受けることができます。
中小企業が利用できる補助金事業には「IT導入補助金」や「小規模事業者持続化補助金」、「ものづくり補助金」など複数ありますが、これまで人手不足の課題解決に特化した補助金はありませんでした。
今後、人口減少や高齢化によりますます働き手不足が加速する中で、人手不足解決に向けた補助金が受けられるのは、中小企業にとって嬉しい取り組みです。
中小企業省力化投資補助金の補助上限額・補助率
中小企業省力化投資補助金における補助上限額・補助率は下記の通りです。
従業員数 | 補助率 | 補助上限額 (大幅な賃上げを行う場合) |
5人以下 | 1/2 | 200万円 (300万円以下) |
6~20人以下 | 500万円以下 (750万円以下) |
|
21人以上 | 1,000万円以下 (1,500万円以下) |
中小企業省力化投資補助金では、従業員の人数によって補助金の上限額が定められており、21人以上の従業員がいる企業では最大1,000万円の補助金を受けることができます。
たとえば、従業員15人の企業が生産性向上のために500万円の産業用ロボットを取り入れた場合、補助率は1/2となるため最大250万円まで補助金を受けられる仕組みです。
また、人手不足の解消とともに大幅な賃上げを行う企業には補助金の上乗せが行われ、最大1,500万円の補助金を受けることが可能です。「大幅な賃上げ」には、下記の2つの条件が定められています。
- 事業所内最低賃金を年額45円以上の水準で引き上げること
- 給与支給総額を年率平均6%以上増加させること
上記2つを申請時に宣言した場合は、「大幅な賃上げを行う場合」としての上限額が適用されます。ぜひ、人手不足解消と並行して従業員の賃上げを行うことも検討してみましょう。
ただし、賃上げによる上限額変更の適用を受けるためには、あらかじめ従業員に賃金引上げ計画を表明することも必要となります。後から表明していないことが発覚した場合は、増額分の補助金の返還が求められるため、必ず計画の表明を行うようにしましょう。
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中小企業省力化投資補助金の対象者とは
中小企業省力化投資補助金の対象となるのは、次のような事業者です。
- 人手不足の状態にある中小企業・小規模事業者
- 補助事業終了後1~3年で、従業員1人あたりの「付加価値額」が年率平均3%以上増加する見込みの事業計画を策定する事業者
人手不足の状態にあることを証明するためには、客観的にそれを示す証憑を提示するか、人手不足が経営課題となっている旨の申告を行う必要があります。
なお、付加価値額とは「営業利益+人件費+減価償却費」によって算出されるものを指します。
中小企業省力化投資補助金の対象経費・カタログ型とは?
中小企業省力化投資補助金では、IoTやロボットなどを導入する際の経費の一部が補助対象です。ただし、導入する製品は中小企業省力化投資補助事業の対象とする機器等の一覧(カタログ)から選定する必要があります。
対象となる製品はまだ公開されていませんが、2024年3月下旬からベンダーが募集された後にカタログが公開される予定です。
【行政書士 米山浩史氏からのコメント】
「登録指針」に基づいて登録された製品が対象となる予定です。
対象となる経費や業態予想
中小企業省力化投資補助金では、現時点での情報から次のような機器が補助対象となることが想定されます。
業種 | 想定される対象機器 |
飲食業界・宿泊業界 | ・自動配膳ロボット ・自動清掃ロボット ・予約・受付自動システム |
医療・介護業界 | ・介護ロボット ・介護入浴機器 ・手術支援ロボット |
物流業界 | ・運搬ロボット ・積み下ろしロボット ・自動運送ロボット |
農業 | ・自動運転トラクター ・水位・水温・風速センサー ・遠隔間利用システム |
建設業界 | ・重機ロボット ・自律走行搬送ロボット ・警備ロボット |
現在IoTやロボット技術の発展により、どの業界でも自動化や無人化が進んでいます。しかし、導入にかかる費用がネックとなっている企業も少なくありません。
上記のようなロボットの導入を検討している事業者は、ぜひ中小企業省力化投資補助金の交付申請を検討してみましょう。
なお、実際に対象となる機器・ロボットはカタログに掲載されている製品のみです。詳細は事務局から公表される内容にて確認しましょう。
カタログ型とは?
経済産業省が2023年11月29日に公開した「令和5年度補正予算の概要」の資料には、「省力化投資補助枠(カタログ型)」という言葉が記載されています。
補助金によっては複数の申請枠が設けられている場合もありますが、中小企業省力化投資補助金については「省力化投資補助枠(カタログ型)」の1つの申請枠に限定されているようです。
中小企業省力化投資補助金の交付申請を行う企業は、対象となる機器・ロボットが掲載された「カタログ」を見て導入する機器を検討します。カタログに掲載されてない製品は補助対象外となりますので注意が必要です。
なお、対象機器の購入はカタログに記載されている代理店を通じて行い、補助金の交付申請も購入代理店やメーカーと共同して行います。
中小企業省力化投資補助金の公募スケジュール
中小企業省力化投資補助金は、2024年3月下旬に公募要領が公開され、4月より第1回公募の受付がスタートする予定です。
今後、2026年9月末までに2ヶ月に1回の頻度で公募が行われ、全15回程度募集が行われるとされています。採択予定件数は全部で12万件であるため、1回あたりの公募で8,000件が採択される計算となります。
ただし、1件あたりの補助申請額によっては採択件数が増減する可能性もあるようです。
最新の公募スケジュールは、事務局からのアナウンスにて確認しましょう。
まとめ
中小企業省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業がIoTやロボットを導入することを支援する補助金事業です。補助率は1/2で、賃上げに同時に取り組むと最大1,500万円の補助金が受けられます。
人手不足の解消や生産性向上のために業務の自動化や無人化を検討している事業者は、ぜひ本補助金の活用を検討してみましょう。