小規模事業者持続化補助金は、販路拡大に取り組む小規模事業者を支援するための補助金です。広告制作や店舗のリフォームなど多くのシーンで利用できますが、申請手続きの煩雑さがネックになっている事業者も多いかもしれません。
そこで検討したいのが、申請代行についてです。本記事では、小規模事業者持続化補助金の申請代行の可否や、外部事業者へ依頼できる内容について解説します。
【この記事の監修者】
ライズ法務事務所 行政書士 米山浩史
以前は霞が関(中央官庁)で国家公務員として補助金行政、許認可業務、政策の企画立案等に従事。また、各省庁から複数名ずつ派遣されて創設された省庁横断チームに参画して新しい支援制度の設立も担当した。業務で培った広い視野と制度知識をもとに、企業・事業者の補助金申請をサポートしている。
【行政書士 米山浩史氏からのコメント】
小規模事業者持続化補助金は、創業して間もない企業・個人事業主をはじめとして小規模事業者の飛躍に役立つ支援制度のひとつです。幅広い対象経費項目があり、店舗集客のためのチラシ配布やホームページ作成、内装工事や新事業提供に必要なものなどに使うことができます。補助金専門家との相談について、記事内の解説を確認して活用を検討してみましょう
目次
小規模事業者持続化補助金は申請代行できる?
小規模事業者持続化補助金の交付申請には多くの書類作成があり、「申請代行に頼みたい」と考えている事業者も多いかもしれません。交付申請にかかる手続きは代行業者に依頼することができるのでしょうか?公募要領に記載されている内容をもとに確認していきましょう。
小規模事業者持続化補助金の申請代行はNG
小規模事業者持続化補助金では、代行業者による申請代行は認められていません。公募要領には、補助金事業の目的について次のように記載されています。
本補助金は、小規模事業者等が自ら自社の経営を見つめ直し、経営計画を作成した上で行う販路開拓の取組を支援するものです。
引用:全国商工会連合会「小規模事業者持続化補助金<一般型>第13回公募 公募要領」
「自ら自社の経営を見つめ直して経営計画を作成する」と記載されていることからも、代行業者への依頼が補助金事業の趣旨に沿わないことが分かります。
代行業者による経営計画の作成が確認された場合は不採択となるケースもあるため、必ず事業者自らが作成することが重要です。
専門家からのアドバイスはOK
代行業者への依頼ができないとなると、「きちんと申請手続きが行えるか不安」と感じる事業者も多いでしょう。小規模事業者持続化補助金では、代行業者による申請代行は認められていないものの、書類作成や手続きについてアドバイスを受けることは問題ないとされています。
公募要領にも「外部のアドバイスを受けること自体は問題ありません」と明記されていますので、効率よく手続きを進めるためにコンサルティング業者などを利用することを検討してみてもよいでしょう。
ただし、サポート業者に支払う成功報酬や、有料セミナーの参加費などは補助金申請にかかる経費とみなされないため、自社で負担する必要があります。
小規模事業者持続化補助金のサポートを受けるメリット
小規模事業者持続化補助金で外部業者のサポートを受けることには、主に次の3つのメリットがあります。
1. 補助金の採択率が上がる
2. 申請にかかる工数が削減できる
3. 他の補助金についても相談できる
それぞれくわしく解説していきましょう。
補助金の採択率が上がる
小規模事業者持続化補助金の書類審査では、主に次のような点を重視して審査が行われます。
①自社の経営状況分析の妥当性
②経営方針・目標と今後のプランの適切性
③補助事業計画の有効性
④積算の透明・適切性
引用:全国商工会連合会「小規模事業者持続化補助金<一般型>第13回公募 公募要領」
審査に通過するためには、申請する書類にこれらの点をきちんと盛り込まなければなりません。しかし、中には「どのように記載すれば効果的に伝わるのか分からない」ということもあるでしょう。
交付申請のサポートを行う業者では、これまで多くの事業者にアドバイスを行ってきた実績があるため、押さえるべきポイントや記載すべき内容を直接教えてもらえます。
申請にかかる工数が削減できる
小規模事業者持続化補助金の交付申請では、下記の書類の作成・提出が求められます。
・小規模事業者持続化補助金事業に係る申請書
・経営計画書兼補助事業計画書
・補助事業計画書
・事業支援計画書
・補助金交付申請書
・宣誓・同意書
上記以外にも申請する枠ごとに必要な書類もあり、本来の業務と並行しながらこれらの書類を準備するとなると、大幅なリソースを消費することが想定されます。
しかし、サポート業者から書類作成のコツや手続きの流れについてアドバイスをもらえれば、スムーズに手続きを進められるため、交付申請にかかる工数を削減することが可能です。
「人手が足りず、なかなか補助金の申請に取り掛かる余裕がない」、「補助金申請が初めてで手続きの流れが不安」という事業者は、ぜひサポート業者の利用を検討してみましょう。
他の補助金についても相談できる
現在政府が実施している補助金は、小規模事業者持続化補助金以外にもさまざまな種類があります。サポート業者はその他の補助金申請にかかるサポートも行っているため、利用できそうな補助金があれば情報を提供してくれるメリットがあります。
補助金事業の目的には経営事業を支援するものもあれば、従業員の雇用を支援するものもあり多種多様です。普段からアンテナを張っておかなければ見落としてしまう情報もあるため、サポート業者を通じて情報収集ができるのは事業者にとって大きなメリットです。
小規模事業者持続化補助金のサポートを受ける際の注意点
小規模事業者持続化補助金の交付申請でサポートを受けるにあたって、いくつか気を付けておきたいポイントがあります。
・専門家の選定が必要
・費用がかかる
・依頼できるのはサポートまで
ひとつずつくわしく確認していきましょう。
専門家の選定が必要
小規模事業者持続化補助金に限らず、補助金交付申請のサポートを行う事業者は数多く存在しており、そのサポート内容は業者によってさまざまです。
公募要領でも「アドバイスを受けるにあたり『高額なアドバイス料金』を請求される事案も発生しておりますので、ご注意ください」と注意喚起しているように、残念ながら中には悪質な業者も存在しています。
サポート業者を選定するときは、これまでの実績や料金体系、サポート内容をしっかりと確認するようにしましょう。
費用がかかる
当然ながら、サポート業者の利用には一定の費用がかかります。前述の通り、中には高額な費用を請求する業者もありますので、料金体系は必ず事前に確認しておくことが大切です。
また、小規模事業者持続化補助金では外部業者に外注・委託した費用を経費として認めてもらえますが、サポート業者に支払う成功報酬や、有料セミナーの参加費などは補助金申請にかかる経費とみなされないため補助金の申請に含めることはできません。
依頼できるのはサポートまで
サポート業者が提供するサービスは書類作成や手続きのアドバイスなどに限られ、書類作成を代行したり、代わりに申請手続きを行ったりすることはできません。
書類の作成や交付申請の手続きについては自社で進める必要がありますので、申請スケジュールを確認したうえできちんとリソースを確保しておきましょう。
自社で行うべき手続きについては、次の章でくわしく解説していきます。
小規模事業者持続化補助金申請において自社で行うべきこと
小規模事業者持続化補助金に関するアドバイスをサポート業者へ依頼した場合でも、下記の手続きについては自社で行う必要があります。
・事業計画の策定
・補助事業計画の作成
・小規模事業者持続化補助金の申請手続き
ひとつずつ内容を確認していきましょう。
事業計画の策定
補助金の交付を受けるためには、「今後どのように自社事業を成長させていくか」という事業計画が必要となります。まずは、自社の事業を見つめ直し、どのような課題を抱えているか考えてみましょう。
なお、事業計画の策定は経営者や役員によって行われる必要がありますが、外部事業者から助言を受けつつ策定を進めても問題はありません。
補助事業計画の作成
小規模事業者持続化補助金の交付申請では、「経営計画書兼補助事業計画書」を提出する必要があります。この書類の作成にあたって、前述の事業計画だけでなく、「補助金を活用してどのような経営課題の克服を行うか」という補助事業の計画も立てなければなりません。
当然、自社が抱える経営課題については外部事業者が把握できるものではないため、補助事業計画の策定も自ら取り組む必要があります。
なお、補助事業計画書の作成についても、単純な入力作業や書類作成は外部へ依頼しても問題ありません。
小規模事業者持続化補助金の申請手続き
小規模事業者持続化補助金の交付申請手続きは、郵送もしくはJグランツ(電子申請)によって行います。この申請手続きも自社で行う必要があるため注意が必要です。
Jグランツによる電子申請では、各種様式のダウンロードや作成、必要書類の添付など多くのステップがあるため、あらかじめ手続きの流れを確認しておきましょう。
また、郵送による手続きも可能とされているものの、減点調整の対象となってしまいます。より採択される可能性を上げるためには、なるべくJグランツで電子申請を行うようにしましょう。
まとめ
小規模事業者持続化補助金では、代行業者へ申請代行を依頼することは認められていません。しかし、書類作成や手続きに関してサポート業者からアドバイスを受けることは可能です。
より効率的に交付申請を行うためにも、ぜひ外部事業者のサポートを受けることを検討してみましょう。