ものづくり補助金とは
ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業(小規模事業者含む)が取り組む「革新的なサービスや試作品の開発、または生産プロセスの改善」を支援する補助金※です。
つまり、ものづくり補助金の審査において問われるのは「革新的であるか」「プロセスの改善はなされるのか」のどちらかといえますが、革新性はもとよりどんな計画であっても生産性向上に帰結させることが肝要となります。革新的な開発や製品であっても、手作業工程を自動化しても「どれくらい生産性が上がるのか」を具体的に示さなければ採択は難しくなります。
※ものづくり補助金の詳しい内容は↓こちら↓
革新的かつ生産性が上がる計画というと、「世界初・国内初・業界初などの希少性の高い製品やサービス提供が必要なのではないか」、あるいは「ある程度の規模(人材・開発技術・売上等)を誇る中小企業が対象なのではないか」といったイメージを持たれるかもしれません。
しかし、ものづくり補助金は「一人親方」や、「至って普通の飲食店を営む事業者様」なども多く採択されており、事業規模に関係なく革新性や生産性向上の達成は案外身近にあるということを裏付けています。
そこで本記事では、革新性と生産性向上を実現した活用事例・採択実績を合計4社、「その1」「その2」の2記事に渡ってご紹介させていただきます。
ものづくり活用事例・採択実績2社
※●●箇所は企業秘密にあたるため公開できません、ご了承ください。
①飲食業
・既存事業:焼肉店
・従業員数:3人
・事業分野:B新たな提供方式の導入
・革新性:独自製法による●●●●を活用し、旨みと鮮度、生産性向上と低価格を両立させた和牛総菜
・生産性:最先端の冷蔵設備と店舗内の自動会計システム導入により、高効率化、省人化を図る➡2.4倍向上
・計画内容:コロナ禍で外食産業が打撃を受けるなか、換気システムに注力する焼肉店はいち早く回復の兆しを見せた。
しかし、もともと高価格帯である和牛市場は伸び悩み、全国の畜産農家は悲鳴を上げていた。 本事業では、店舗内業務を簡略化(効率化)し、総菜製造の仕込み時間に割り当て生産性向上を図るほか、困窮する和牛農家の回復支援にも寄与。
・交付決定額:720万円
②畳製造業
・既存事業:畳の製造、販売、メンテナンス
・従業員数:1人
・事業分野:A新たな生産方式の導入
・革新性:独自の●●●●技術により、畳の耐久性を低下させる●●●●を防ぎ、設備導入によって手作業工程を完全自動化にすることで、高耐久性(高寿命化)畳の生産性向上(低価格化)を行う。
・生産性:返縫機等を導入し、ボトルネックとなっている工程の効率化を図り、特に高度な技術を必要とする工程に注力することでクオリティの維持と生産性向上を実現する➡2倍向上
・計画内容:住宅着工数が増加に転じ、さらにい草のCO2削減効果や抗菌作用が注目されことで畳需要が上昇。
本事業により、畳の耐久性を向上させ、安価・高寿命・短納期の畳製造に着手し生産性向上を実現。
・交付決定額:750万円
ものづくり活用事例の解説
上記の活用事例には、以下のような共通点があります。
- コロナ禍などの時事の社会動向によって生まれた「新鮮なニーズ」に応える取組みである
- 独自技術(またはサービス)を保有している
- 生産性向上後の数値は各者バラバラであるが、何倍であっても現状より上である
- 本事業にて「Ⓐ独自技術+Ⓑ新規設備=Ⓒ生産性向上」を成立させることで『Ⓓ革新的な取組み』を達成している
※ものづくり補助金のポイント方程式:(Ⓐ+Ⓑ=Ⓒ)=Ⓓ
お伝えしたように、ものづくり補助金のポイントは「革新性と生産性向上」であり、事例でもこの2つを柱として、さらにマクロ・ミクロニーズといった背景に応える計画となっています。
2つの柱を立てるためには、まず「Ⓐ独自技術とⒷ新規設備のコラボレーションによってⒸ生産性が向上する」旨を示し、この3要素が合わさることでⒹ革新的な取組みとすることが効果的ですが、新規設備だけが独り歩きしている計画書が非常に多く見受けられます(※上記青枠内の方程式でいうとⒶが抜けている状態)。
ものづくり補助金に限らず、ほとんどの補助金でNGとされているのは「設備依存の事業計画」です。既存設備が老朽化したので最新の設備に変える、新しい設備なら生産量を増やせる、といった内容では採択を勝ち取ることはできません。設備があれば誰にでも実現できてしまう計画では革新的とは言えないからです。
このように、ものづくり補助金の肝である革新性と生産性向上の獲得には、「独自技術と新規設備の融合」、それらのシナジー効果によって生まれる「革新的な取組」が不可欠であり、これらの方程式は誰もが成しえる身近なものといえるのです。
まとめ
筆者はこれまで、製造サービス業問わず600社以上の申請支援に携わってきましたが、ご相談の段階でよく受けた質問が「革新性がないと申請できないのか?」、「生産性は何倍以上になればよいのか?」というものでした。
しかし、上述の活用事例でもわかるように、採択されている事業計画は〝世紀の大発明〟のような内容ではなく、また、実施後の生産性向上率もバラバラであり、申請希望者の革新性や生産性向上に対するイメージが必要以上に高度化(現実と剥離)していることを浮き彫りにしました。
筆者の経験上、特に製造業の事業者様は自社の強み (革新性の元となる高度な技術等)に気づいていない方が多いように感じます。「特別な技術は持っていない」と言いながら、よくよくお話を伺ってみると唯一無二の技術を保有していたというケースは数えきれません。
おそらくこうした事業者様は、日々の業務のなかでその技術を当たり前のように活用されていたために自社技術を客観視できず、結果「革新性はない」という判断に至ったのだと推測しています。
同じ製品を製造する企業は多々ありますが、たとえば段取り替えやバリ取り等の工程一つをとっても、その方法は千差万別であり、小さな工程のなかに貴重な技術(革新性の元)が隠れていることを忘れないでください。
自社の隠れた強み(革新性の元となる高度な技術等)を見つけることに留まらず、今後のビジネスモデルをどのように設計するのか、何を伸ばし、何を強化すればよいのかを診断するためにも、専門家の視点は非常に有用です。
弊社では経験豊富な補助金コンサルタントが在籍しており、補助金に関する豊富な知識、ノウハウをもって、より良い補助金の活用方法をご提案させて頂いております。どうぞお気軽にご相談ください。
※「ものづくり補助金の活用事例 ~実は誰もがもっている「革新性」~その2」へ続く