ものづくり補助金とは?2024年の申請方法や対象事業、金額などを解説

ものづくり補助金の概要

ものづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者を対象とした補助金で、「革新的な製品・サービスの開発や生産プロセス等の省力化による生産性向上」を目的とした設備投資等を国が補助金で支援する制度です。補助金額は特例を利用すれば最大1億円、補助率は1/2・1/3・2/3のいずれかとなっており、大規模・高額な設備への投資にも活用できます。

しかし、ものづくり補助金には事業内容に応じた複数の「枠」および「類型」が用意されているほか、申請時には事業計画書をはじめとした様々な書類を用意・提出する必要があります。また、申請した事業者全員が利用できるわけではなく、審査を受け採択されなければなりません。

そこでこの記事では行政書士監修のもと、ものづくり補助金の概要をわかりやすく解説。申請方法や対象事業者の条件などの基本的な情報から、採択基準や加点要素などの実践的なノウハウまでご紹介します。ものづくり補助金に興味がある方は、ぜひ最後までお読みください。

【この記事の監修者】

ライズ法務事務所 行政書士 米山浩史
以前は霞が関(中央官庁)で国家公務員として補助金行政、許認可業務、政策の企画立案等に従事。また、各省庁から複数名ずつ派遣されて創設された省庁横断チームに参画して新しい支援制度の設立も担当した。業務で培った広い視野と制度知識をもとに、企業・事業者の補助金申請をサポートしている。

 

【行政書士 米山浩史氏からのコメント】
ものづくり補助金は、事業を拡大させて今より飛躍させる際に役立つ支援ツールの1つとなっている制度です。しかも補助金は融資と違い、返済の必要がないことが大きな魅力です。

その一方で、誰もが必ず採択される(受給出来る)訳ではありません。制度の理解を深めながらの申請を心がけましょう。

※本記事は、執筆時点の情報をまとめたものです。最新情報と異なる可能性があるため、各種補助金制度の詳しい情報については公式サイトも併せてご確認ください。

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本記事でわかること
・ものづくり補助金とはどんな制度なのか
・申請対象となる事業や補助金額の目安
・申請スケジュール
・申請時の流れや申請に必要な書類
・申請時の相談先

ものづくり補助金とは「中小企業や小規模事業者の革新的投資」を支援する制度

ものづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者、個人事業主が今後直面する制度変更に対応するための施策、例えば「生産性向上を目的とした革新的な製品・サービスの開発、生産プロセス等の省力化」などを支援する補助金です。

2013年に「ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金」としてスタートしたこの制度は、名称や制度内容を更新しつつ、毎年定期的に公募を実施しています。

かつての補助金は、工場や研究機関を持つ大企業の試作品や、大学における研究開発を中心に大規模に受給されていました。

しかし、ものづくり補助金の目的は、製造業や大学機関の試作品の開発支援のみにとどまりません。なぜなら、ものづくり補助金が、日本の企業体の99%以上を占める中小企業を広く対象にすることで、景気刺激策にも繋がると捉えられるようになったからです。

過去の公募では「一般型(およびグローバル展開型)」と「ビジネスモデル構築型」、2つの型を設けて公募を実施していますが、本記事では現在申請を受け付けている一般型について解説していきます。

なお、申請時には「事業計画書」をはじめとした複数の書類を用意し、審査を受け採択される必要があります。書類作成の手間を軽減したい方、採択率を上げたい方は、行政書士をはじめとした専門家への相談もご検討ください。

2024年・令和6年度のものづくり補助金の公募要領・補助金額

ものづくり補助金は、補助金額や補助率、対象などの「公募要領」が変更されることがあります。申請前には、最新の公募要領を確認しておきましょう。

【第18次公募スケジュール】
公募開始:2024年(令和6年)1月31日(水)17時
申請開始:2024年(令和6年)3月11日(月)17時
申請締切:2024年(令和6年)3月27日(水)17時

 

【申請対象者】
ア:資本金又は従業員数(常勤)が一定値以下となる会社又は個人中小企業者(組合関連以外)
イ:「中小企業等経営強化法」第2条第1項に規定される、特定の組合に該当する中小企業者(組合・法人関連)
ウ:従業員数(常勤)が一定値以下となる個人事業主(小規模企業者・小規模事業者)
エ:従業員数、資本金額(または出資総額)や組合などの条件を満たす特定事業者の一部
オ:活動内容や従業員数などの条件を満たす特定非営利活動法人
カ:従業員数が300人以下の「社会福祉法」第32条に規定する所管庁の認可を受け設立されている社会福祉法人

 

【基本要件】
下記3点を満たす3~5年の事業計画書の策定および実行
① 付加価値額が年平均成長率+3%以上増加
② 給与支給総額が年平均成長率+1.5%以上増加
③ 事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上

【補助金額および補助率】
補助金額:750万円~1億円(※)
補助率:1/3、1/2、2/3
※:「大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例」の活用で最大2,000万円の補助上限金額の引き上げあり

【申請枠】
1.省力化(オーダーメイド枠)
2.製品・サービス高付加価値化枠
→通常類型
→成長分野進出類型(DX・GX)
3.グローバル枠

なお、上記で紹介した内容はあくまで要点に留まります。枠ごとの補助金額や申請対象者の条件については、記事後半の解説や本サイトの別記事を併せてご確認ください。

2024年のものづくり補助金に設けられている3つの枠と2つの類型

上記で紹介した公募要領の通り、ものづくり補助金には申請要件別に3つの「枠」、2つの「類型」が設けられています。それぞれの概要をまとめましたので、申請先の検討にご活用ください。

1.省力化(オーダーメイド枠)

 

「省力化(オーダーメイド枠)」は、人出不足の解消を目的とした「デジタル技術などを活用した専用設備(オーダーメイド設備)の導入による革新的な生産プロセスやサービス提供方法での事業効率化・高度化」に必要な設備・システム投資を支援する申請枠です。

【活用イメージ】
生産性向上のため、手作業の工程にシステムインテグレータ(Sier)共同開発のAI技術を用いた自動組立ロボットを導入、完全自動化・24時間操業を実現した。

補助の対象となる必要経費のおもな費目としては、機械装置・システム構築費、運搬費、技術導入費、知的財産権等の関連経費、外注費・専門家経費・クラウドサービス利用費・原材料費などが挙げられます。

なお、補助金額の上限は最大で8,000万円、補助率は最大2/3となります。例えば、補助率1/2となる中小企業が6,000万円を経費として使った場合には、1,500万円と1,000万円の合計2,500万円が補助されます。

申請にあたり満たす必要がある追加要件は以下の通りです。

【省力化(オーダーメイド枠)の追加要件】
①3~5年の事業計画期間内に、設備投資前と比較し労働生産性が2倍以上となる補助事業計画を策定すること(※1)
②3~5年の事業計画期間内に、投資回収可能な事業計画を策定すること(※2)
③外部Sier(システムインテグレータ)を活用する場合、3~5年の事業計画期間内における保守・メンテナンス契約を中小企業等とSier間で締結すること。またSierは必要な保守・メンテナンス体制を整備すること(※3、4)
④事業に係る資金についてファンドや銀行などの金融機関からの調達を予定している場合は、金融機関による事業計画の確認を受け、金融機関による確認書を提出する。(※5)

※1:労働生産性は「付加価値額(付加価値額の算出が困難な場合は生産量)/(労働人数×労働時間)」とする。完全自動化の場合は「(労働人数×労働時間)」を便宜的に「0.1」とする。
※2:投資回収年数は「投資額/(削減工数×人件費単価)」とする。
※3:事業終了後、実績報告時点で確認されます。
※4:保守・メンテナンスに係る費用は補助対象外です。
※5:金融機関は、事業所の所在地域にある必要ありません。

2.製品・サービス高付加価値化枠(通常類型・成長分野進出類型)

「製品・サービス高付加価値化枠」は、第16次締切分の「通常枠」「デジタル枠」の内容と共通点の多い申請枠です。「通常類型」と「成長分野進出類型(DXGX)」の2通りの類型が用意されており、それぞれで補助金額・補助率・要件が異なります。

通常類型は「革新的な製品・サービス開発の取り組み」に必要な設備やシステム投資などを支援する類型。

取り組みについては、単に新たなサービスを導入するだけでなく、顧客に新たな価値を提供するために自社の技術力などを活かした製品・サービス開発である必要があります。

【活用イメージ】
国際基準に準拠した部品の開発を目的とした最新複合加工機を導入、精密加工を実現した。

また、業種によっては同業中小企業(または同一地域の同業他社)に普及している製品やサービスの開発は補助対象外となる可能性があります。詳細は申請をサポートする専門家にご確認ください。

お問い合わせ

通常枠の要件は以下の通りです。

【製品・サービス高付加価値化枠:通常類型の追加要件】
①3~5年の事業計画期間内に、新製品・サービスの売上高の合計額が、企業全体の売上高の10%以上となる事業計画を策定すること
②事業に係る資金についてファンドや銀行などの金融機関からの調達を予定している場合は、金融機関による事業計画の確認を受け、金融機関による確認書を提出する。(※)
※:金融機関は、事業所の所在地域にある必要ありません。

成長分野進出類型(DXGX)は、今後成長が見込まれるDXGX分野に資する「革新的な製品・サービス開発の取り組み」に必要な設備・システム投資などを支援する類型です。申請にあたり、以下の要件を満たす必要があります。

【活用イメージ】
24時間体制での搬送を実現するため、AI・センサーなどを活用した高精度自律走行搬送ロボットの試作機を開発した。

【製品・サービス高付加価値化枠:成長分野進出類型(DX・GX)の要件】
①以下2点のどちらかを満たす開発であること
→DX:DXに資する革新的な製品・サービス(※1)
→GX:グリーン成長戦略「実行計画」14分野(※2)に掲げられた課題の解決に資する革新的な製品・サービス

※1:AI、IoT、センサー、デジタル技術などを活用した遠隔操作・自動制御・プロセス可視化などの機能を有する製品、サービス、部品、ソフトウェアの開発を指します。
※2:令和3年6月18日付で策定された「2050」において、「実行計画」が策定されている14分野のこと。分野毎に「現状と課題」として記載のある「課題」の解決に資する取組であることが必要です。

3.グローバル枠

「グローバル枠」は、海外事業を実施し、国内の生産性を高める取り組みに必要な設備・システム投資などを支援します。最大3,000万円と大きな補助金額が特徴で、第16次締切分の「グローバル市場開拓枠」の内容と共通点が多い申請枠です。

補助対象となる「海外事業」には、上記画像の通り4つの条件が定義されています。いずれかに当てはまる事業を検討している企業は、ぜひグローバル枠を検討してみましょう。

【活用イメージ】
海外市場獲得のため、新たな製造機械を導入し新製品の開発を行うとともに、新製品アピールのため海外展示会への出展を行った。

グローバル枠の追加要件は、下記の通りです。

【グローバル枠の追加要件】
①事業に係る資金についてファンドや銀行などの金融機関からの調達を予定している場合は、金融機関による事業計画の確認を受け、金融機関による確認書を提出する。(※)

※:金融機関は、事業所の所在地域にある必要ありません。

 

②下記いずれかの要件に該当する事業であること

②-A.海外への直接投資に関する事業であって、以下の全てを満たすこと
→国内に所在する本社が申請事業者であり、補助対象経費の2分の1以上が海外支店の補助対象経費である。または海外子会社(発行済株式の総数の半数以上又は出資価格の総額の2分の1以上を補助事業者が所有している、国外に所在する会社)の事業活動に対する外注費(※1)若しくは貸与する機械装置・システム構築費(※2)に充てられること
→国内事業所においても、海外事業と一体的な機械装置等(税抜単価50万円以上)を取得、または設備投資すること
→応募申請時、海外子会社などの事業概要・財務諸表・株主構成が分かる資料を提出すること
→実績報告時に、海外子会社等との委託(貸与)契約書とその事業完了報告書を追加提出すること
※1:ものづくり補助金の補助対象経費の範囲に限ります。一般管理費は含みません。また、費用は事業実施に不可欠な開発・試作にかかる業務等を想定しています。
※2:ものづくり補助金の補助対象経費の範囲に限ります。

 

②-B. 海外市場開拓(輸出)に関する事業であって、以下の全てを満たすこと
→国内に補助事業実施場所を設け、製品などの最終販売先の2分の1以上が海外顧客であるとともに、計画期間中の補助事業の売上累計額が補助額を上回る事業計画を有していること
→応募申請時、事前のマーケティング調査に基づいた「想定顧客が具体的に分かる海外市場調査報告書」を提出すること
→実績報告時に、想定顧客による試作品等の性能評価報告書を提出すること

 

②-C.インバウンド対応に関する事業であって、以下の全てを満たすこと
→国内に所在する本社が申請事業者であり、製品・サービス等の販売先の2分の1以上が訪日外国人であるとともに、計画期間中の補助事業の売上累計額が補助額を上回る事業計画を有していること
→応募申請時に「想定顧客が具体的に分かるインバウンド市場調査報告書」を提出すること
→実績報告時に、プロトタイプの仮説検証(※3)の報告書を提出すること

※3:開発に立てた機械装置・システムについて、計画の初期段階で立てた計画通りの機能や操作性が実現できたか、想定していた効果が得られたかを評価した報告書です。

 

②-D.海外企業との共同で行う事業であって、以下の全てを満たすこと
→国内に補助事業実施場所を設け、外国法人と行う共同研究・共同事業開発に伴う設備投資等があるとともに、その成果物の権利の全部又は一部が申請事業者に帰属すること(※4)
→応募申請時、共同研究契約書又は業務提携契約書(検討中の案を含む)を提出すること
→実績報告時に、当該契約の進捗が分かる実績報告書を提出すること

※4:外国法人の経費は補助対象外です。

 

③海外事業に関する実現可能性調査を実施していること
→実現性調査とは、市場調査や現地規制調査、取引先の信用調査など、海外事業の実現可能性を判断するための調査のことです。

 

④社内に海外事業の専門人材がいる、または海外事業に関する外部専門家と連携すること

グローバル枠は、補助対象となる海外事業の定義ごとに追加要件が異なる点に注意しましょう。上記内容を把握しつつ、専門家と申請準備をすすめることをおすすめします。

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2024年・令和6年度ものづくり補助金の注目ポイント

2024年に申請が可能なものづくり補助金では、3つの大きな動きがありました。ここからは、新たに追加された特例や審査形式など、申請にあたり抑えておきたいポイントを解説します。

1.大幅な賃上げに係る補助上限額引上の特例

第14次締切分から設けられていた「大幅な賃上げに係る補助上限額引上の特例」ですが、第17次・第18次締切分から内容が一新されました。

この特例では、大幅な賃上げに取り組む事業者は、条件を満たせば通常の申請枠の補助上限額が引上げられます(1)。

なお、利用の際には「給与支給総額」や「地域別・事業場内最低賃金」といった項目をふまえた大幅な賃上げに取り組むことを示すため、達成に向けた事業計画書の提出が必要となります。事業計画書を作成する際には、具体的にどのような手段で賃上げを目指すのかを盛り込むようにしましょう。

※1:新型コロナ回復加速化特例を申請する場合、各申請枠の上限額に達しない場合、再生事業者の申請、常勤従業員がいない場合は活用不可。

2.新型コロナ回復加速化特例

第17次締切分より新たに追加された「新型コロナ回復加速化特例」は、コロナ禍からの回復を目指しつつ、最低賃金の引き上げにも取り組む中小企業などを支援する特例です。

製品・サービス高付加価値化枠の通常類型で利用可能で、「給与支給総額」「地域別・事業場内最低賃金」をふまえた要件を満たすことで補助率が2/3に引き上げられます

なお、「大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例」との併用はできません。補助率や補助上限額の引き上げを検討する際にはご注意ください。

3.口頭審査の導入

補助申請額が一定規模以上の申請を行う事業者には、オンラインによる口頭審査が実施されます。

【口頭審査の概要】
審査期間:2024年4月24日(水)~2024年5月15日(水)※
審査方法:オンライン形式(Zoomなど)
審査人数:1名(申請事業者自身が対応)
所要時間:15分程度(開始5分前に入室)
必要書類:顔写真付き身分証明書(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど)
※:2024年4月30日(火)~5月2日(木)を除く。実施日時は上記期間から事務局が指定します。

口頭審査では、事業の適格性・革新性・優位性・実現可能性などを中心に質疑が行われます。専門家のサポートを受けつつ申請を行う場合、これまで以上に事業内容を深く理解する必要があるでしょう。

なお、オンライン通話形式での審査となりますが、ヘッドセットやイヤフォンは使用不可となっています。口頭審査の対象となった際は、Webカメラだけでなくマイク・スピーカーも準備しておきましょう。

2023年・令和5年度のものづくり補助金のスケジュール

ここからは、実際にものづくり補助金を申請される方に向けて、スケジュールや申請方法をご紹介します。

2024年は第17次・第18次公募以降の公募スケジュールはまだ未発表となっています。次回の公募が発表され次第、こちらの記事でも改めてスケジュールをお知らせする予定です。

なお、第17次締切分・第18次締切分の補助事業実施期間は交付決定日から2024年12月10日までとなっています。発注・納入・検収・支払などの手続き、実績報告書の提出などをこれまで以上にスピーディに進める必要がある点に注意しましょう。

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ものづくり補助金の申請方法

ものづくり補助金は、申請プロセスが完全に電子化されています。準備段階を含め、申請~採択までの流れをまとめたものが下記となります。

1.公募要領の確認
→補助金の詳細、対象となる事業や経費、申請期間などを確認
2.GビズIDプライムアカウントの取得
→申請に必要となるアカウントの取得を行う
3.必要書類の準備
→必要な書類を確認し、電子ファイルとして準備する
4.電子申請システムへのログイン
→GビズIDプライムアカウントを使用し、電子申請システムへログインする
5.申請内容の入力
→応募者概要、事業内容、経費・資金調達内訳などを入力する
6.必要書類の添付
→用意した必要書類を電子申請システムへアップロードする
7.システム上での申請内容の自動チェック・送信
→申請内容の形式不備・エラーが無いことが確認でき次第、申請内容を送信する
8.審査の実施・採択通知
→申請の締め切りから約2か月後を目途に採択の通知が行われます

なお、ものづくり補助金は申請手続きだけでなく、採択通知以後の補助事業の中間検査や実績報告、補助金の支払いを含めたすべての手続きが100%電子化されています。専門家への相談も行いやすくなりますので、事前にインターネット・パソコン・プリンター環境の整備を進めておきましょう。

申請前に準備が必要となる「GビズIDプライムアカウント」

先ほど紹介した申請の流れで登場した「GビズIDプライムアカウント」は、ものづくり補助金の電子申請システムを利用する際に事前に取得が必要なデジタルアカウントです。

この「GビズID」は、企業から国への申請に関する行政サービスを一つのアカウントで利用できる認証システムとなっており、ものづくり補助金の申請時だけでなく、他の補助金制度でも利用可能です。

申請はGビズIDのWebサイトより行います。申請時には下記のものが必要となりますので、あらかじめ用意したうえでサイトへアクセスしましょう。

・メールアドレス(アカウントID)
・操作端末(パソコン)
・プリンター
・印鑑証明書と登録申請書
・スマートフォンまたは携帯電話

なお、GビズIDプライムアカウントの取得には2週間ほどの審査が実施されるため、早めの取得を心がけましょう。

なお、個人事業主の方はオンラインでIDの即時発行が可能です。詳しい方法は下記記事をご確認ください。

GビズIDプライムはオンライン手続きが可能!申請方法や2段階認証の手順を解説

申請に必要な書類

 

(引用:2024年度第18次公募・公募要領概要版より

申請時には事業計画書をはじめとした必要書類を電子ファイルにて作成し、提出する必要があります。提出書類は申請する枠組みや事業形態によって異なりますが、共通して提出が必要となる書類は以下の通りです。

・事業計画書(PDFファイルで提出)
→様式は自由ですが、A4で計10ページ以内での作成が推奨されています
・補助経費に関する誓約書
→提出する誓約書は所定の様式が存在します
・賃金引上げ計画の誓約書
→「大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例」を申請する際も、共通の様式で提出します
・決算書等(直近2年間分)
→設立1年以上2年未満の企業は、1期分の書類を提出します
→設立間もない企業は、事業計画書および収支予算書を提出します
→個人事業主の場合は確定申告書等を提出します
・従業員数の確認資料
→法人の場合は法人事業概況説明書の写しを提出します

→個人事業主の場合は所得税青色申告決算書または所得税白色申告収支内訳書の写しを提出します

ものづくり補助金で採択されるために抑えるべきポイント

ものづくり補助金を利用するには、申請時に実施される審査を通過し、採択される必要があります。2023年9月に採択結果が公表された第15次公募では、5,694件の応募に対して採択件数は2,861件となっており、審査通過率は50.2%に留まっています。

申請するからには審査は確実に通過したいものですが、審査内容は非公開であるうえ、企業規模や事業計画書は申請者ごとに異なるため、残念ながら「必ず採択される方法」は存在しません。

しかし、申請において抑えるべきポイント」は存在します。ここからは、公募要項や過去の採択実績から見て取れる、採択率を上げるためのポイントをご紹介します。

事業計画書に必ず盛り込むべき内容

必須提出書類のひとつである事業計画書には、「付加価値額アップ」「給与支給総額アップ」「地域内最低賃金に上乗せする待遇」を将来的にクリアする旨を盛り込むことが重要です。

申請する企業の付加価値額は一般に、営業利益+人件費+減価償却費として算出します。これら3項目の増加予想値を、平均で3%以上になるよう算出根拠を添えて説明しましょう。

給与支給総額は、年率平均1.5%以上にすることを、事業計画書に盛り込みます。人件費のうちの給与相当額を全従業員で足し合わせて、将来にわたって年ごとに1.5%以上になっていく予想を客観的に根拠立てなければなりません。

最低賃金は、都道府県ごとに定められている水準に30円以上上乗せした金額を盛り込例えば、2023年9月現在で東京都の最低賃金は時給1,113円ですので、東京都の事業者の場合は全従業員を最低でも時給1,143円以上の待遇にしておく必要があります。

【行政書士 米山浩史氏からのコメント】
『計画の実現性』も審査項目となっていますので、例えば付加価値額を無計画に何十%も増加させる計画とするとかえって審査点が得られない可能性があります。根拠のある計画を作成するようにしましょう。

審査項目となる「要件」の把握

ものづくり補助金は「要件」を満たす事業者が利用できる制度です。そのため「要件で求められる要素を十分に理解し、その要素を提出書類に盛り込めているか」は審査における重要なポイントです。

例として、ものづくり補助金の事業目的にも記載されている「事業の革新性」について考えてみましょう。事業の斬新さには幅広い程度がありますが、今までにない画期的な発明に匹敵するほどの斬新さは、ものづくり補助金で求められていません。

その業界や商圏の中で、すでに一般に広まっているとはいえない新しさが感じられれば十分だとされています。

加点項目・減点項目の把握

ものづくり補助金では、応募要項にて「加点項目」が紹介されています。加点項目を満たす事業者は、採択に有利となる方向で審査が進みます。いっぽう、採択に不利となる方向で進む「減点項目」も存在します。

2024年の加点項目および加点を希望する際に必要となる追加提出書類は、下記の通りです。

1.成長性加点
→経営革新計画承認書
2.政策加点
→開業届(※1)、または履歴事項全部証明書(創業・第二創業の場合)
→サイバーセキュリティお助け隊の契約書の写しも提出可能です
3.災害等加点
→(連携)事業継続力強化計画認定書(当該計画の写しを含む)
4.賃上げ加点等
→特定適用事業所該当通知書(被用者保険の適用拡大の場合)(※2)

過去3年以内に、ものづくり補助金の交付決定(採択)を受けたことがあると、減点の対象になります。なお、過去3年以内に2回以上の交付決定を受けた事業者は、申請対象外となります。

上記の通り、より積極的に採択を目指すのであれば、申請前に加点項目を把握し、採択に有利となる書類の作成・提出がおすすめです。

※1:加点対象者である「創業・第二創業後間もない事業者(5年以内)」に該当する証明書類として提出が必要です。所轄税務署の収受印若しくは電子申請の受付刻印のある「個人事業の開業・廃業等届出書」を指します。
※2:経営革新計画及び事業継続力強化計画については、応募締切日時点で認定(承認)を受けた計画期間が終了していない場合のみ加点対象となります。

記事のまとめ:ものづくり補助金は専門家と協力しながらの申請がおすすめ

ものづくり補助金は、約10年の歴史を経て、中小企業経営者の意見や時代の変化を反映しながら、都度進化しています。

令和6年の公募では、3つの枠組みに細分化されていますので、御社の実情に合った補助金のタイプを見極めて申請してみてください。

なお、通常枠以外の枠組みは、補助額の上限や補助率だけでなく提出書類も異なります。申請準備をお一人で進める場合、より専門的な知識と作業時間が必要となるでしょう。

そこで、大胆かつ魅力的な事業計画書を制作して、私達と一緒に御社の未来をものづくり補助金で切り拓いてみませんか。近ごろでは、売り上げが不振な時期でも補助金を駆使し、経営を安定させている経営者も増えています。

「補助金の窓口」では、みなさんからのご相談をお待ちしております。

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