IT導入補助金2023の対象ソフトとは?申請条件から方法までを解説

2017年から始まったIT導入補助金は、2023年もすでに交付申請がスタートしています。今年の対象ソフトはどのようなものが選ばれているのでしょうか。この記事では、IT導入補助金2023の対象ソフト一覧や検索方法について紹介します。

【この記事の監修者】

ライズ法務事務所 行政書士 米山浩史
以前は霞が関(中央官庁)で国家公務員として補助金行政、許認可業務、政策の企画立案等に従事。また、各省庁から複数名ずつ派遣されて創設された省庁横断チームに参画して新しい支援制度の設立も担当した。業務で培った広い視野と制度知識をもとに、企業・事業者の補助金申請をサポートしている。

 

【行政書士 米山浩史氏からのコメント】
IT導入補助金は、自社の経営課題の解決に繋がるITツールの導入を支援する制度です。
特に人手不足に悩む経営者にとっては、業務効率化や事業の安定化に繋がるITツールの活用は欠かせません。記事内の解説を確認し、制度の理解を深めて採択確率を高めましょう。

IT導入補助金2023とは

IT導入補助金とは、中小企業や個人事業主が経営課題解決のためにITツールを導入することを支援する制度です。2017年からスタートし、2023年もすでに交付申請がスタートしています。

補助金の種類

IT導入補助金には、補助額や補助対象に応じて5種類の枠が設けられています。

・通常枠(A類型・B類型)

・セキュリティ対策推進枠

・デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)

・デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)

・デジタル化基盤導入枠(商流一括インボイス対応類型)

ここでは、「通常枠(A類型・B類型)」「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)」「デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)」の3つの概要を確認しましょう。

通常枠(A類型・B類型)

通常枠はA類型とB類型に分かれており、A類型では5万円~150万円未満、B類型では150万円~450万円以下の補助金が受けられます。

補助の対象となるものは次の通りです。

・ソフトウェア購入費

・クラウド利用料(最大2年分)

・導入関連費

また、通常枠は「プロセス数」が重視されていることも特徴です。プロセス数とはITツールに導入されている機能のことで、次の7つが挙げられます。

・顧客対応・販売支援

・決済・債権債務・資金回収

・供給・在庫・物流

・会計・財務・経営

・総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス

・業種固有

・汎用・自動化・分析ツール

A類型では1つ以上、B類型では4つ以上のプロセスを満たすITツールを導入しなければなりません。

デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)

デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)では、最大350万円の補助金が受けられます。補助対象はソフトウェア購入費やクラウド利用料などに加えて、ハードウェアの購入費も含まれることが特徴です。

ハードウェアの導入で受けられる補助金は次の通りです。

【ハードウェア購入費】

・PC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機:補助率1/2以内、補助上限額10万円

・レジ・券売機等:補助率1/2以内、補助上限額20万円

ただし、ハードウェアを単体で導入する場合は補助金の対象外となり、必ず一緒にソフトウェアを導入する必要があります。

デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)

デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)は、複数の事業者が連携してITツールを導入する際に受けられる補助金です。

ITツールの導入に関する経費は最大350万円の補助が受けられる他、消費動向の分析にかかる経費や外部の専門家に支払う謝礼金・旅費なども補助の対象となります。

なお、補助金の対象となる事業者は次の通りです。

・商工団体等

・当該地域のまちづくり、商業活性化、観光振興等の担い手として事業に取り組むことができる中小企業者又は団体

・複数の中小企業・小規模事業者により形成されるコンソーシアム

引用:IT導入補助金2023「補助対象について」

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IT導入補助金2023の対象ソフト一覧

IT導入補助金では、対象ソフトがあらかじめ選定されています。自社の経営課題の解決につながるツールを探してみましょう。ここではIT導入補助金2023の対象ソフトの一例や検索方法を紹介します。

【行政書士 米山浩史氏からのコメント】
「経営課題の解決に繋がるから」と言っても、自由にツールを導入出来るわけではありません。後述する検索方法を参考に、導入出来るソフトを把握しましょう。

ツール一覧

・「販売管理システムBセット」(カシオ計算機株式会社)

見積書や受注管理、請求書などの売上請求管理に加えて、必要に応じて在庫管理やリモートワーク機能を追加できるITツールです。事務員の業務負担軽減につながることから、業務効率の改善を目指す企業におすすめ。インボイス制度にも対応しています。

・「PX2」(株式会社TKC)

給与計算ソフトのPX2は、毎月の給与や社会保険料の計算に時間が取られている企業におすすめのツールです。職員の勤怠情報や支給額、控除額を入力するだけで、税金や社会保険料を自動計算してくれるため、計算ミスの心配もありません。

給与明細や源泉徴収票はWeb上で配布できるので、ペーパーレスの実現、印刷コストの削減にもつながります。

・「レッツ原価管理Go2」(株式会社レッツ)

レッツ原価管理Go2は主に建設業界で使用されているツールで、見積りから実行予算、発注業務、原価管理、支払管理、回収管理を一元管理できることが特徴です。支払いサイトが長い傾向にある建設業界では支払い・入金予定の管理に苦労している事業者も少なくありません。「各管理資料を一元化したい」、「事務負担を軽減したい」という事業者はぜひ導入を検討してみましょう。

PCA人事管理DXは中小企業向けの人事管理ソフトです。従業員の人事情報の管理や公的帳票および労働条件通知書・辞令の作成、業務の通知など人事業務に欠かせない機能が搭載されています。さらにPCAシリーズの他のツールと連携すれば、より業務の最適化を図ることも可能です。

・クラウド会計ソフトfreee(freee株式会社)

クラウド会計ソフトは経理・会計業務の効率化に役立つツールです。経理の入力が自動化されているため、「本業が忙しくて経理事務に手が回らない」という小規模事業者にもおすすめ。インボイス制度にも対応しているので、システムをアップデートする手間もかかりません。

ツール検索

IT導入補助金の対象ソフトは公式サイトから検索することも可能です。検索機能では対応業種やプロセス、要件に応じて検索できますので、自社の経営課題に適したツールがないか検索してみましょう。

IT導入支援事業者・ITツール検索

IT導入補助金2023の対象事業者

IT導入補助金は対象事業者が細かく定義されています。それぞれ確認していきましょう。

中小事業者

IT導入補助金の対象となる中小事業者は、業種別に資本金と従業員の定義が決められています。

業種・組織形態 資本金(資本の額または出資の総額) 従業員(常勤)
製造業、建設業、運輸業 3億円 300人
卸売業 1億円 100人
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) 5,000万円 100人
小売業 5,000万円 50人
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業

並びに工業用ベルト製造業を除く)

3億円 900人
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 3億円 300人
旅館業 5,000万円 200人
その他の業種(上記以外) 3億円 300人
医療法人、社会福祉法人、学校法人 300人
商工会・都道府県商工会連合会及び商工会議所 100人
中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される中小企業団体 主たる業種に記載の従業員規模
特別の法律によって設立された組合またはその連合会 主たる業種に記載の従業員規模
財団法人(一般・公益)、社団法人(一般・公益) 主たる業種に記載の従業員規模
特定非営利活動法人 主たる業種に記載の従業員規模

参考:IT導入補助金2023「補助対象について」

自社の事業が当てはまる業種について、資本金や従業員数の定義を確認しておきましょう。

小規模事業者

個人事業主などの小規模事業者は、業種によって従業員数の定義が定められています。

業種分類 従業員(常勤)
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) 5人以下
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 20人以下
製造業その他 20人以下

参考:IT導入補助金2023「補助対象について」

業種によって従業員数の定義が異なりますので、本補助金の対象となるか確認しておきましょう。

補助対象外の事業者

上記に当てはまる事業者であっても、次の条件に該当する場合は補助金の対象外となります。

・大企業と資本的・人的に関わりのある事業者

・直近3年分の各年もしくは各事業年度の課税所得の平均額が15億円を超える事業者

・過去1年で労働関係法令違反により送検処分を受けている事業者

・「風俗営業」、「性風俗関連特殊営業」、「接客業務受託営業」を営む事業者

・反社会的勢力に関係する事業者

・宗教法人

・法人格のない任意団体(同窓会・PTA・サークルなど)

参考:IT導入補助金2023「補助対象について」

また、経済産業省や事務局から補助金事業としてふさわしくないと判断された場合も交付の対象外となります。

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IT導入補助金2023申請スケジュール

2023年分のIT導入補助金はすでに交付申請がスタートしています。枠によって募集スケジュールが異なりますので、下記で確認しておきましょう。

【通常枠】

6次締切分 7次締切分
締切日
2023年10月2日 (月) 17:00
2023年10月30日 (月) 17:00
交付決定日 2023年11月6日 (月) (予定) 2023年12月4日 (月) (予定)
事業実施期間 交付決定~2024年4月30日 (火) 17:00 交付決定~2024年5月31日 (金) 17:00
事業実績報告期限 2024年4月30日 (火) 17:00 2024年5月31日 (金) 17:00

【デジタル化基盤導入類型(デジタル化基盤導入類型)】

8次締切分 9次締切分 10次締切分
締切日 2023年9月11日 (月) 17:00 2023年10月2日 (月) 17:00 2023年10月16日 (月) 17:00
交付決定日 2023年10月24日 (火) (予定) 2023年11月6日 (月) (予定) 2023年11月20日 (月) (予定)
事業実施期間 交付決定~2024年4月30日 (火) 17:00 交付決定~2024年4月30日 (火) 17:00 交付決定~2024年5月31日 (金) 17:00
事業実績報告期限 2024年4月30日 (火) 17:00 2024年4月30日 (火) 17:00 2024年5月31日 (金) 17:00

【複数社連携IT導入類型】

3次締切分
締切日 2023年10月2日 (月) 17:00
交付決定日 2023年11月16日 (木) (予定)
事業実施期間 交付決定~2024年5月31日 (金) 17:00
事業実績報告期限 2024年5月31日 (金) 17:00

なお、交付申請は「申請マイページ」より行いますが、締め切り時間を過ぎると申請・提出が行えなくなります。締め切り時間の直前はアクセスが集中することも考えられますので、申請手続きは余裕を持って行いましょう。

IT導入補助金2023申請から交付までの流れ

IT導入補助金の申請は、下記の流れに沿って行います。

1.ITツール・IT導入支援事業者の選定

2.事業計画の策定

3.交付申請手続き

4.ITツールの導入

5.事業実施効果報告

注意したいのはITツールを発注するタイミングです。ITツールの契約は交付申請の採択が決定されたあとに行います。採択の連絡が届く前に支払いを行ったITツールについては対象外となるため注意しましょう。

また、IT導入補助金では実際にITツールを導入した後の効果について報告が求められます。報告には期限が定められていますので、必ず忘れずに提出しましょう。

まとめ

IT導入補助金2023は、中小企業や個人事業主がITツールを導入する際に受けられる補助金です。あらかじめ事務局によって対象ソフトが選定されていますので、自社のニーズに合うITツールを探してみましょう。

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