パソコンは業務改善助成金の対象になる? 一般事業者と特例事業者の違いとは

業務改善助成金とは、設備投資にかかる費用を助成する制度です。仕事用のパソコンを購入する場合、業務改善助成金を受け取れる可能性があります。この記事では、パソコンの購入で助成を受けるための要件を解説します。特に、一般事業者と特例事業者で、要件が異なる点に注目しましょう。

パソコンへの助成を受けるための要件

業務改善助成金をパソコンの購入に利用するための条件は、生産量要件か物価高騰等要件に適合した特例事業者であることです。特例事業者になるためには、一般事業者の要件を満たす必要があります。

この章では、一般事業者と特例事業者の要件をそれぞれ紹介します。

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一般事業者の要件

はじめに、一般事業者の認定を受けるための要件を紹介します。

1つ目は、日本国内に事業場を設置している中小企業・小規模事業者であることです。中小企業・小規模事業者の基準となる数値は、業種によって異なります。

2つ目は、事業場内の最低賃金と、地域別最低賃金との差異が50円以内であることです。例えば、地域別の最低賃金が900円の場合は、事業所内最低賃金の上限は950円です。

以上の条件を満たすと一般事業者に認定されます。

ただし、パソコン購入費用の助成を受けるには、一般事業者の要件だけでは不十分です。

特例事業者の要件

次に、特例事業者の認定を受ける要件の紹介です。

前述した一般事業者の要件に加えて、以下3点のいずれかを満たす事業者が該当します。

  1. 賃金要件:事業所内最低賃金が950円未満
  2. 生産量要件:売上や生産量など、事業活動を示す指標の直近3ヶ月間平均が、前年・前々年・3年前の同月と比べて15%以上減少
  3. 物価高騰等要件:社会情勢や経済動向など外的要因の影響で、申請前3ヶ月間のうちいずれかの利益率が前年同月より3%以上低下

このうち、2と3のいずれかを満たせばパソコンの購入で助成を受けられます。

パソコンの購入以外に助成を受けられる経費

ここでは、業務改善助成金の対象となるパソコン購入以外の経費を紹介します。助成を受けられる範囲は、特例事業者であるか否かで変化します。

どの種類の経費に助成を受けられるのかを確認しましょう。

すべての対象事業者が助成を受けられる経費

一般事業者を含むすべての対象事業者が、助成を受けられる経費項目があります。

業務に用いる機械の導入や人材教育の費用などは、生産性向上が目的の設備投資で助成を受けられます。

例えば、建設業ならば現場車両の購入や資格試験の受験料などが該当するでしょう。また、飲食店ならば配膳用ロボットの導入やスタッフの接客研修費用などが考えられます。

業務効率化を目指す際には、助成の対象となる経費を使用した設備投資が大切です。

一部の特例事業者が助成を受けられる経費

一般事業者は該当せず、一部の特例事業者だけが助成を受けられる経費も存在します。

前述の生産量要件あるいは物価高騰等要件を満たしている特例事業者は、助成できる経費の範囲が拡大されます。

以下に具体例を挙げますので、参考にしてください。

生産設備向上に資する設備投資

業務の生産性を高める設備投資として、スマートフォンやタブレットなどの端末と周辺機器の経費に助成を受けられます。

また、定員が7人以上か、車両価格が200万円以下の自動車類も助成の対象です。

なお、パソコンはスマートフォン・タブレット類に含まれるため、助成を受けられます。

設備投資に関連する経費

また、設備投資自体に加えて、設備投資に関連するその他の経費が助成対象に含まれます。

具体的には、広告宣伝費や事務機器の費用、事務室の拡大・机や椅子の増設などに用いた経費が対象です。

ただし、関連する経費の助成は、生産性向上に資する設備投資で使用した金額を上回らない範囲に限定されます。

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助成を受けられる金額

続いて、業務改善助成金における助成上限額や助成率区分について解説します。

助成上限額は、事業場内最低賃金をいくら引き上げたのか、また何人の従業員が引き上げ対象となったのかに応じて変動します。

下表の通り、最低で60万円、最高で600万円の受給が可能です。

出典:厚生労働省「業務改善助成金の制度が拡充されます!

また、助成率には事業所内最低賃金の額に応じた3つの区分が存在します。900円未満の場合は9/10、950円以上では3/4です。

ただし、900円以上の場合は生産性要件を満たせば助成率が上乗せされます。なお、この区分は令和5年8月31日から拡充され、現在の助成率に改定されました。

出典:厚生労働省「業務改善助成金の制度が拡充されます!

業務改善助成金の手続き手順

続いて、業務改善助成金の申請を出す際の手続きを解説します。一般的には、賃金引き上げの計画を立てたうえで申請を実施します。ただし、一定の条件を満たした事業者は賃金を引き上げてからの事後申請も可能です。

賃金引き上げ計画を立てて申請する場合

はじめに、賃金引き上げ計画を事前に立てて申請するケースの手続きを解説します。

業務改善助成金は、管轄の都道府県労働局に紙媒体で申請を出すか、電子申請システムのjGrants(Jグランツ)を利用して申請します。申請には、交付申請書と事業実施計画書の作成が必要です。

審査をクリアして交付決定通知が届いたら、申請した内容どおりに業務改善事業を実施しましょう。

事業が完了すれば、事業実績の報告書と支給の申請書を提出し、助成金の支給を待ちます。

賃金引き上げ後に申請する場合

次に、賃金引き上げを実施した後に助成金を申請するケースの解説です。

賃金引き上げの計画が不要である代わりに、引き上げ実績が示された書類を提出します。具体的には、引き上げ前・引き上げ後それぞれの賃金台帳や、最低賃金の規程が明記された就業規則の写しなどが当てはまります。

ただし、申請や交付決定前での設備投資は助成対象とならないため、交付認定を確認してから設備投資をする順序が重要です。

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交付決定後の注意事項

続いて、助成金交付が決定した際の注意事項を紹介します。申請時の提出資料に用いた業務改善計画や賃金引き上げ計画に変更が生じたら、事業計画変更申請書を追加で提出する必要があります。

以下が代表的な変更例です。

  • 労働者の人数が変わり、助成上限額に変更が生じた
  • 設備投資として導入予定の助成対象経費に変更が生じた
  • 助成対象経費の支払日や納品日に遅れが生じた

事前の計画から変更が生じる場合は、速やかに労働局へ連絡しましょう。

令和5年度業務改善助成金の申請期限

業務改善助成金には、申請期限が存在します。

賃金引き上げ計画を事前に立てて申請するのか、または賃金引き上げ後に申請するのかに応じて申請の期限が異なります。

賃金引き上げ計画を事前に提出する場合は、令和6年3月31日が申請期限です。一方、賃金の引き上げ後に申請する場合は、令和6年1月31日が申請期限で既に終了しています。

なお、令和6年2月1日以降に申請した場合、事業完了予定日を令和6年4月1日〜令和7年2月28日の期間で設定する必要があります。

パソコンの購入に利用できる他の補助金

業務改善助成金だけではなく、補助金の制度もパソコンの購入に利用できます。

ここでは、IT導入補助金と地方公共団体の補助金について説明します。それぞれの対象経費、募集要項などを確認して申し込みましょう。

IT導入補助金

IT導入補助金とは、経済産業省・中小企業庁が管轄する補助金制度です。IT導入補助金2024ではインボイス制度への対応経費に特化した枠が設けられ、パソコンやタブレットなどの購入費用が対象に含まれます。

そのほかには、ソフトウェアの購入費やクラウド利用料(最大2年分)、導入に要した関連費用が補助金の対象です。

インボイス制度に際してパソコンを購入する場合は、最適の補助金制度といえます。

地方公共団体の補助金

地方公共団体の補助金制度で、パソコンの購入費用を助成できる可能性もあります。ここでは例として、東京都のテレワーク促進助成金を挙げます。

テレワーク促進助成金は、正社員や非正規社員の在宅勤務・遠隔地勤務で利用する機器やソフトウェアなどに対して、助成を施す制度です。

補助金の募集期間は各地方公共団体に応じてそれぞれ異なるため、自社の事業所所在地で運用されている補助金制度について調べることをおすすめします。

まとめ

今回は、パソコンの購入費用を助成する制度について解説しました。必要な条件を満たせば、業務改善助成金の受給で費用の大部分をまかなえます。

一方で、各自治体の補助金制度でも助成を受けられる可能性があります。各種制度の情報を収集し、申請を検討してはいかがでしょうか。

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