事業再構築補助金が、農業で採択されるために知っておくべき基本

事業再構築補助金農業

事業再構築補助金が、農業で採択されるために知っておくべき基本

新型コロナウイルスによる感染拡大や、経済活動の落ち込みによって、農業従事者の中でも、レストランや居酒屋などの外食産業向けに農作物を卸していた場合は、売上が大きく減少し、深刻な影響を受けているようです。

外食産業では、緊急事態宣言にともなう外出自粛要請や時短営業要請の影響で、売上が前年比で80~90%もダウンした店舗も少なくありません。

そのせいで食材の仕入れが激減したために、農業に携わる方々もコロナ禍の経済的影響を受けている場合が少なくありません。

全国のほとんどの学校が長期休暇に入ったため、学校給食センターなどに食材を納品していた農業従事者も、安定的な収入源を失ってしまいました。

また、農作物の直販所からも、かつての賑わいが失われていますので、直販所に有機野菜などを持ち込んでいる農家も、売上減のあおりを受けているようです。

結婚披露宴やパーティなど、生花を多く使う華やかなイベントも、軒並み中止となったため、花卉をつくっている農家も、コロナ禍による売上減に苦しんでいます。

そのような農家の皆さんも、丹精込めてつくった作物の新たな販路を拡大しようと、試行錯誤を繰り返しています。そのような果敢なチャレンジを後押しするのが、2021年に始まる「中小企業等事業再構築推進補助金」(事業再構築補助金)です。

ただし、これはコロナ禍による売上減に苦しむ事業者の救済を目的として、史上初めて行われる補助金事業です。そのため、農家の新たな取り組みや創意工夫のうち、どのようなものが補助対象になるのか、まだ明らかでない点も少なくありません。

そこで、2021年3月時点で、中小企業庁や経済産業省が公表している内容から、事業再構築補助金が採択される可能性が高いと考えられる取り組みの種類について解説します。

事業再構築補助金の「対象外」になる取り組みとは?

事業再構築補助金は、ポストコロナ時代・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するための、企業の思い切った事業再構築を支援する目的で、1兆円を超える国家予算が組まれています。

まれに見るほど巨額の予算が組まれている補助金のため、採択率が非常に高い「大盤振る舞い」がなされるとの見方もありました。しかし、2021年3月に予定されている公募開始が近づくにつれて、事業再構築補助金が補助対象として求める条件が、大方の予想よりも厳しいのではないかと捉えられるようになりました。

補助対象の範囲については、まだ不明確な面が多いことから、まず、明らかに採択の対象外となる取り組みの種類について押さえておきましょう。

新製品・新サービスの投入をしない場合

これまで作ったことがない製品を作らず、これまで提供していないサービスを始めず、現状維持を続けようとする取り組みは、事業再構築補助金の対象外です。

たとえば、過去に販売していた品種の作物を再販した……という取り組みは、過去に作ったことがない商品に該当しないため、補助の対象外となります。

ただし、非製造業でサービスの提供方法を変更する「業態転換」では例外的に対象となります。
農業は第一次産業であり、農作物に手を加える食品加工業でない限りは、原則として非製造業に分類されます。

たとえば、それまで有機野菜を直売所に納品してきた農家が、その有機野菜を、軽トラックに積み込み、移動販売で販路を積極的に広げていく取り組みを始めた場合は、従来の商品の提供方法を変えた「業態転換」にあたり、補助対象となる可能性があります。

なお、野菜を弁当や惣菜などに加工して移動販売する場合は、保健所の許可や食品衛生責任者の資格が必要となりますので、注意しましょう。野菜をそのまま売る分には農家の自由に委ねられます。

競合するライバル企業の多くが、すでに着手している製品・サービス・製造方法

他の農家ですでに一般的になっている商品やサービスを、後追いして提供開始したにすぎないのなら、「企業の思い切った事業再構築を支援する目的」という、事業再構築補助金の制度趣旨から外れますので、補助対象にはなりません。

たとえば、ササニシキの稲を作り続けてきた農家が、新たにコシヒカリを育て始めるなどです。

すでにある製品・サービスの提供増量、簡単な改良、単に組み合わせを変えただけの場合

リンゴ農家の場合であれば、「やや傷物のリンゴも含めて、単価を安くし、出荷量を2割増しにする」「リンゴのパッケージや緩衝剤を変える」「リンゴ3品種の詰め合わせセットをつくる」などの取り組みは、やはり「企業の思い切った事業再構築を支援する目的」に該当しません。よって、事業再構築補助金の対象外となってしまいます。

すでにある設備で製造できる商品、提供できるサービスである場合

中小企業庁が2021年2月15日に公表した『事業再構築補助金の概要』には、「本補助金は、基本的に設備投資を支援するものです」と明記されています。つまり、事業再構築補助金を受けるためには、新たな「設備投資」をしていることが原則として求められるのです。

たとえば、ビニールハウスでイチゴを育てている農家が、そのままの設備でイチゴの摘み放題・食べ放題のサービスを開始する場合は、残念ながら補助の対象外となります。

新たな農作物を出荷開始したり、新たな顧客向けサービスを提供し始めたとしても、これらが従前どおりの設備を使って実現できるのであれば、設備投資の金銭的サポートを目的とする事業再構築補助金にはふさわしくないからです。

汎用性のあるデジタル機器やソフトを新たに導入しただけの場合

たとえば、畑の様子を24時間365日、Webカメラで常にライブ中継するストリーミングサービスで、多くの人々に向けて農家を身近に感じてもらおうと、新たな事業を始めたとします。
しかし、Webカメラの導入費用を補助対象にすることはできません。

コロナショックから脱するための新たな取り組みのために使う道具であっても、パソコン・スマートフォン・カメラなど、農家の業務以外でいろいろな用途がある「汎用設備」への投資は、事業再構築補助金だけでなく、ほかのすべての補助金でも対象外となります。

既存事業の売上を減らしてしまう

もしも、新たな取り組みが、従来の事業との間で、売上をお互いに食い合ってしまう関係にあるなら、補助対象外になります。新規事業を始めたせいで、従来の事業の売上が減るならば、その新規事業を公金によってサポートする意義が薄れるためです。

たとえば、高級サクランボ農家で、ほぼ同じ見た目や味で、価格が半値以下のサクランボを新たに市場へ投入したならば、今まで作っていた高級サクランボの売上を引き下げかねません。よって、事業再構築補助金の対象外になります。

事業再構築補助金の「対象」になる取り組みとは?

以上に挙げたような「対象外の例」を踏まえまして、改めて対象となる例について挙げていきます。

事業再構築補助金の対象になるためには、農業従事者の新たな取り組みが、この補助金事業が求める事業再構築指針に沿っていなければなりません。

すなわち「新分野展開」「事業転換」「業種転換」「業態転換」の4つのうち、いずれかに当てはまっていなければならないのです。

農業の中でやれることをやる ― 新分野展開

新分野展開は、農家が農家のまま、新商品をつくって、新しいマーケットに進出していくことです。
たとえば、りんご農家が、新たにぶどうの栽培を始める場合などです。

・製品等の新規性(※すでに出した商品の改良版や増量版などでないこと)
・市場の新規性(※既存顧客を減らさないこと)
・総売上高の10%以上を占めること
以上の条件をすべて満たしていなければなりません。

農業のまま、別ビジネスに挑戦 ― 事業転換

業界は変えないまま、違うジャンルのビジネスに進出することを指します。
総務省の日本標準産業分類に沿えば、農業は大分類「A.農業・林業」に入ります。この大分類の中にある別領域(畜産業・養蚕業・林業など)に進出する場合は、補助の対象です。

・製品等の新規性
・市場の新規性
・総売上高のうち、新事業による売上の占める割合が最大
以上の条件をすべて満たしていなければなりません。

農業も抜け出して果敢にチャレンジ ― 業種転換

業界も変えて、別業種に進出することです。
農家であれば、大分類からそもそも異なる別業種のビジネス(不動産業・娯楽業・教育・福祉など)に進出する場合が対象です。

・製品等の新規性
・市場の新規性
・総売上高のうち、新業種による売上の占める割合が最大
以上の条件をすべて満たしていなければなりません。

農業サービス提供の方法を変える ― 業態転換

美容室であることは変えず、新商品や新サービスも投入せず、今まで通りのサービスのまま、その提供方法を変えることです。
非製造業である農業ならば、次の条件をすべて満たさなければなりません。
・既存の設備を一部または全部撤去していること あるいは、IT技術を新たに活用していること
・総売上高のうち、新提供方法によるサービス売上の占める割合が最大

農家の場合であれば、イメージしやすいのは農作物のECサイトです。ネット注文と宅配を新たな提供方法として採用することによって、外出自粛の時代にも適応しようとする説得力があるからです。また、IT技術を新たに活用する条件を満たしています。