早い時期からの猛暑日が続く近年、快適な就業環境構築のために空調設備の導入を検討されている方も多いのではないでしょうか。
環境省をはじめとした官庁や地方自治体では、そうした中小企業の環境整備を支援するため、業務用エアコンや空調設備の導入を支援する補助金制度を実施しています。そこで本記事では、2024年度のエアコン・空調設備に使える補助金を紹介します。
目次
業務用エアコン・空調設備の導入には補助金を利用できる?
エネルギー価格の高騰やカーボンニュートラルの実現など、省エネの重要性が高まっているなかで、環境庁や地方自治体は省エネ機器導入を支援する補助金を実施しています。対象機器に最新エアコン、空調設備を含む補助金もあり、採択されれば導入費用の負担を抑えつつ設備の導入が可能です。
そのほかにも、工場や事業場を持つ企業では設備投資を対象とした補助金が活用できるケースもあります。
ただし、補助金制度はそれぞれで導入規模や対象業種が異なります。申請を検討する段階で、補助上限金額や申請対象者などを把握するよう心がけましょう。
業務用エアコン・空調設備を導入したい方におすすめの補助金
ここからは、官庁や社団法人が実施しているエアコンや空調設備の導入に利用できる補助金を紹介します。幅広い地域で申請可能な補助金を掲載していますので、エアコンの買い替えや新規導入を検討している方はぜひご覧ください。
省エネルギー投資促進支援事業費補助金(省エネ補助金)
一般社団法人「環境共創イニシアチブ」(SII)が実施する事業のひとつで、「省エネ補助金」とも称されます。
国内の各分野の省エネルギー化を推進し、省エネルギー対策を支援するもので、「設備単位型」と「エネルギー需要最適化型」の2つの類型があるなかで、「設備単位型」がエアコンの設置に活用可能です。
設備単位型では、エアコンを含む高効率空調設備をはじめ、15設備の設備費が補助対象となっています。
<ユーティリティ設備>
①高効率空調(業務・産業用エアコン等)
②産業ヒートポンプ
③業務用給湯器
④高性能ボイラ
⑤高効率コージェネレーション
⑥低炭素工業炉
⑦変圧器
⑧冷凍冷蔵設備
⑨産業用モータ
⑩制御機能付きLED照明器具
<生産設備>
⑪工作機械
⑫プラスチック加工機械
⑬プレス機械
⑭印刷機械
⑮ダイカストマシン
さまざまな業種で横断的に利用できる汎用的な設備が補助されるので、エアコンや空調設備以外にも活用できる補助金です。
なお、補助金限度額は事業全体で1億円が上限額となっており(下限額30万円)、補助率は1/3以内となります。
申請スケジュールとしては、令和5年度補正予算分の公募期間は終了し、令和6年度の2次公募期間も終了しており、3次公募のスケジュールは未定となっています。しかし、執行団体の公募は行われているので、公募実施に向けて準備しておきましょう。
脱炭素ビルリノベ事業
商業施設や教育施設など既存の業務用建物に対する省エネルギー改修や省エネルギー機器導入を補助金の交付で支援し、2050年のカーボンニュートラル実現に貢献するために環境省とSIIが実施する事業です。
中小企業に加え個人事業主でも申請できるほか、ホテルや飲食店だけでなく事業所への機器導入も補助対象となります。
補助金額に関しては断熱改修(外皮)と業務用エアコンなどの高効率設備の導入というふたつに分けて設定されており、加えて性能区分などに応じて設定された補助単価に導入量を乗じた額が補助されます。
※引用:事業概要|脱炭素ビルリノベ事業「ビルリノベ事業 チラシ」より
上限額は1事業あたり10億円、下限額は1事業あたり500万で、最大3年度にわたる補助事業を申請できます。
令和6年度の公募期間は2024年3月29日(金)〜11月29日(金)までですが、予算額に達した時点で、公募期間内であっても交付申請の受付は終了となります。早めの申請を心がけましょう。
宿泊施設サステナビリティ強化支援事業
一定数以上の旅行者が来訪、または来訪見込みのある宿泊施設を対象に、宿泊施設のサステナビリティ強化に関する取組を支援する事業です。
観光庁が実施しており、宿泊施設の支援に特化した補助事業となります。一方で対象費用は幅広く、高効率空調機器をはじめとした省エネ型空調、省エネ対策に必要な設備・備品の購入にかかる費用などが補助対象となります。
設備・備品は公募要領で具体的に指定されており、下記7種の導入に活用できます。
- 省エネ型空調
- 省エネ型ボイラー、配管等
- 二重サッシ等
- 太陽光発電、蓄電設備
- 節水トイレ等
- 照明機器
- そのほかの省エネ対策に必要な設備、備品
なお、補助率は1/2、補助上限は1,000万円となっています。令和6年度は現在2次公募まで決まっており、2次公募の応募スケジュールは令和6年8月1日(木)10:00から令和6年8月30日(金)17:00までとなっています。
地方自治体によるエアコン・空調設備の設置に活用できる補助金
官庁や社団法人だけでなく、都道府県や市区町村といった地方自治体も、エアコンや空調設備の設置を支援する補助制度を実施しています。
ここからは、2024年度の自治体による補助金制度の一部を紹介します。
なお、地方自治体が実施する補助金制度を活用したい場合、自治体のホームページをこまめにチェックする必要があります。手間を抑えつつ事業内容に沿った補助金を検討したい方は、最新の公募状況を把握している申請サポート業者への相談も活用してみましょう。
東京都「ゼロエミッション化に向けた省エネ設備導入・運用改善支援事業」
東京都が実施する、中小企業を対象とした助成金制度です。
「2050年CO2排出実質ゼロ」に貢献する「ゼロエミッション東京」の実現に向け、中小企業者や個人事業主などのさらなる省エネルギー化推進を目指し、省エネ設備の導入と運用改善に要する一部費用を東京都が助成します。
対象となるのは、高効率空調設備をはじめとした省エネ設備、人感センサーをはじめとしたエネルギーロス抑制設備です。
助成金申請にあたっては東京都が実施する「事業所の省エネ診断(省エネコンサルティング事業)」の受診、または省エネ計画の作成が必要です。なお、どちらの申請方法を採るかによって助成率および限度額が異なります。
【事前に省エネ診断を受診する場合】
ケース | 助成率 | 助成上限金額 |
省エネ設備の導入等を行う場合 | 2/3 | 2,500万円 |
事業所全体のCO2排出量の削減見込みが50%以上などの要件を満たす省エネ設備の導入等を行う場合 | 3/4 | 5,000万円 |
【事業者が自ら計画を作成する場合】
ケース | 助成率 | 助成上限金額 |
省エネ設備の導入等を行う場合 | 2/3 | 1,000万円 |
申請準備に充てられる期間や事業スケジュール、申請事業の規模感などをふまえ、申請しやすい方法を選択しましょう。なお、今年度の交付申請受付スケジュールは下記の通りです。
第1回申請 | 令和6年4月24日(水)から5月10日(金)まで |
第2回申請 | 令和6年6月17日(月)から6月28日(金)まで |
第3回申請 | 令和6年8月19日(月)から8月30日(金)まで |
第4回申請 | 令和6年11月1日(金)から11月15日(金)まで |
第5回申請 | 令和7年1月20日(月)から令和7年1月31日(金)まで |
新宿区「省エネルギー及び創エネルギー機器等補助制度」
新宿区内に事業所や集合住宅を所有する中小企業や個人事業主、区内に個人住宅を所有する個人住宅を対象とした補助金です。
「東京都の中小企業向け省エネ促進税対象機器」となっているエアコンを「事業所」が「従来機からの交換で設置する」ケースであれば補助対象となります。
補助金額としては、施工経費(税抜)の 50%、上限 50万円となっています。加えて「再生可能エネルギー利用による補助上限額の引き上げ」が設定されており、条件を満たす申請者は70万円に補助上限額が引き上げられます。
なお、申請方法が郵送または窓口への直接持参に限られる点、申請タイミングが施工や費用の支払い完了後となっている点には注意しましょう。申請スケジュールは下記の通りです。
申請受付期間 | 令和6年4月15日(月)~ 令和7年3月31日(月) |
対象期間(※) | 令和6年4月1日(月)~令和7年3月31日(月) |
※:令和6年度分として申請を行うには、対象期間内に施工完了日と支払完了日の両方が含まれている必要があります。
エアコン以外の設備導入に補助金を活用する
エアコン導入に併せてシステムやツールの更新・販路開拓などを検討している方は、他の補助金制度を使って総費用を軽減する方法もあります。
ここからは、2024年度に申請できるITツールや業務用機器の導入に活用できる補助金制度を紹介します。
IT導入補助金
IT導入補助金は、経営課題の解決を目的としたITツール導入を支援する補助金です。
中小企業だけでなく個人事業主も申請可能な補助金で、事業のデジタル化を目的としたソフトウェアやITツール、インボイス制度に対応するためのPC、ハードウェアなどが補助対象となっています。
ただし、補助対象となるITツールが指定されている点、「IT導入支援事業者」と協力しながらITツールの導入を進めていく必要がある点には留意しましょう。申請枠は、導入するITツールやサービスに応じた下記5つの枠が設けられています。
- 通常枠
- インボイス枠(インボイス対応類型)
- インボイス枠(電子取引類型)
- セキュリティ対策推進枠
- 複数社連携IT導入枠
業務効率化・売上アップをサポートするためのITツール導入を支援する「通常枠」は、補助率が1/2以内で、補助額は1プロセス以上で5万円以上150万円未満、4プロセス以上で150万円以上450万円以下となっています。
インボイス制度に対応した各種ソフトやPC・ハードウェアの導入をサポートする「インボイス枠(インボイス対応類型)」は、導入するソフトやハードウェア、申請する企業の規模に応じて補助率や補助額が異なります。補助率は1/2以内から最大4/5以内まで、補助額は10万円以下から最大350万円以下となっています。
商流単位でのインボイス制度対応を支援する「インボイス枠(電子取引類型)」の補助率は中小企業・小規模事業者などは2/3 以内、そのほかの事業者は1/2以内、補助額は一律で最大350万円以下となっています。
サイバーインシデントに関するリスク低減を支援する「セキュリティ対策推進枠」の補助率1/2は以内、補助額が5万円以上100万円以下となっています。
地域間・業務間連携を行う複数の企業・事業者のITツール導入による生産性向上を支援する「複数社連携IT導入枠」は、経費内容や導入ツール・ハードに応じて補助率と補助額が異なります。また、複数社での連携申請が必要となりますので、詳細は申請前に行政書士や中小企業診断士などの専門家へご確認ください。
IT導入補助金の申請手続きや制度詳細については下記の関連記事をご覧ください。
【2024年】IT導入補助金の申請方法を解説!申請に必要な書類とは?
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者や個人事業主の販路開拓や業務効率化を支援する補助金です。なお、商工会・商工会議所どちらの管轄地域に属しているかで申請方法が異なります。申請を検討されている方は、管轄地域の確認を行ってから準備を始めましょう。
機械装置導入費用や広報費、ウェブサイト構築・更新費用、新商品の開発費用など幅広い費用が補助対象となっており、さまざまな業種・事業の補助に活用できるのが特徴です。
申請枠は補助事業目的や企業状況に応じた下記5つの枠が設けられています。
- 通常枠
- 賃金引上げ枠
- 卒業枠
- 後継者支援枠
- 創業枠
販路開拓、業務効率化の支援を行う通常枠は補助率2/3、補助上限金額は50万円となっています。
最低賃金の引き上げに上乗せして賃上げを行う事業者を支援する「賃金引上げ枠」は補助率2/3(赤字事業者は3/4)、補助上限金額は200万円です。
事業規模の拡大に意欲的な小規模事業者を支援する「卒業枠」は補助率2/3、補助上限金額は200万円です。
事業承継の予定がある特定事業者を支援する「後継者支援枠」は補助率2/3、補助上限金額は200万円です。
創業間もない特定事業者を重点的に支援する「創業枠」は補助率2/3、補助上限金額は200万円です。
また、上記5つの申請枠に加えてインボイス制度への対応を進める事業者を支援する「インボイス特例」が設けられており、要件を満たす事業者は補助上限額が 50 万円上乗せされます。
小規模事業者持続化補助金の申請手続きや制度詳細については下記の関連記事をご覧ください。
小規模事業者持続化補助金を受け取るまでの流れを解説!申請前から事後手続きまで手順ごとにご紹介
まとめ
今回は2024年度のエアコンや空調設備に使用できる中小企業向けの補助金を中心に紹介してきました。
業務用エアコンの導入時には、省エネ補助金や脱炭素ビルリノベ事業、宿泊施設サステナビリティ強化支援事業などの補助金を活用可能です。また、地域や時期に応じて、地方自治体による補助金・助成金を活用できるケースもあるでしょう。
また、エアコン以外の設備導入も検討されている方は、IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金などを活用するという選択肢も存在します。
補助金は事業状況や検討している事業計画に応じて活用できる制度が異なります。ご自身の事業に合う補助金を効率よく検討したい方は、中小企業診断士や行政書士といった専門家への相談も検討してみましょう。
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