小規模事業者持続化補助金のケーススタディ:飲食店の場合

小規模事業者持続化補助金は、ビジネスの販路をさらに拡大・開拓していこうとする経営者に対して、その販路拡大への取り組みにかかった経費の一部を補助する制度です。

この小規模事業者持続化補助金は、全国の飲食店を経営する企業でも受け取ることができます。ただし、申請して受け取るためにはさまざまな条件があります。

この記事では、Q&A形式で事例を紹介し、小規模事業者持続化補助金制度の基本について解説します。

商店街で弁当屋を経営している方からのご相談

Q.人件費は、持続化補助金でサポートしてもらえますか?

家族で弁当屋を12年やってきましたが、人手が足りず、新しくアルバイトを雇うことに決めました。

しかし、決して余裕のある経営状態ではないので、アルバイトの募集にかかった経費や、給料や社会保険などの人件費を小規模事業者持続化補助金で補おうと考えていますが、人件費は対象となりますか?

A.人件費は小規模事業者持続化補助金の対象外です。

小規模事業者持続化補助金には、一般型と創業型の2種類があります。

一般型は、販路拡大に向けた地道な取り組みにかかった経費の一部について補助するもので、たとえば商品を販売するためのホームページ制作費用や、広告宣伝費、店舗改装費などが含まれます。

【小規模事業者持続化補助金の対象経費】

①機械装置等費

②広報費

③ウェブサイト関連費

④展示会等出展費

⑤旅費

⑥新商品開発費

⑦借料

⑧委託・外注費

新しく雇ったアルバイトが、販路拡大のための人材だとしても、人件費は補助金の対象になりません。アルバイトの募集にかかった求人経費も、販路拡大のための広報費とは言いがたいので、やはり対象外です。

たとえば、弁当のデリバリー(出前)サービスを新たに始めると、そこにかかった経費は補助対象になりえますので、人件費以外の経費での活用を検討してみてください。

なお、創業型は創業後3年以内の小規模事業者の販路開拓・業務効率化を支援するもので、こちらに関しても人件費は対象外となっています。

居酒屋を経営しているオーナーからの相談

Q.当社は小規模事業者持続化補助金を利用できますか?

私鉄のターミナル駅の駅前で、肉料理を中心にした居酒屋を経営しています。客席は1階と2階で120席以上あり、従業員は正社員7名、アルバイトが24人います。

現在、調理効率向上のために業務用の大型オーブン導入を検討しています。この導入費用は補助金の対象となるでしょうか?

A.従業員数の関係で小規模事業者持続化補助金の対象外となります。

業務用調理機器の導入費用は、補助事業の遂行に必要である旨を経営計画書で説明することができれば、「機械装置等費」として補助される可能性があります。

ただし、経営なさっている居酒屋の運営会社が、「小規模事業者」に該当しない可能性があります。

小規模事業者とは、卸売業・小売業・サービス業(※飲食店はサービス業に該当します)で、5人以下の従業員を常時雇用する企業・個人事業主だと定義されています。

常時雇用の従業員とは、いわゆる正社員です。貴社は7名を常時雇用していますので、小規模事業者持続化補助金がサポートする小規模事業者にあたらず、残念ながら補助対象外となります。

なお、ものづくり補助金であれば、小規模事業者よりも多くの従業員を雇用する中小企業でも、補助対象になる可能性があります。ものづくり補助金の詳細については、下記の記事をご確認ください。

ものづくり補助金とは?2025年の申請方法や対象事業、金額などを解説

郊外でイタリアンレストランを経営しているオーナーからの相談

 

Q.すでに支払われた経費も申請できますか?

正社員スタッフ5名、アルバイトスタッフ10名を雇用している創業30年のレストランです。内装が古くなり、雰囲気が時代に合わなくなってきたので、内装を全面的にリフォームしました。最近、小規模事業者持続化補助金のことを知り、申請しようと思うのですが、どのような手続きをとればいいのでしょうか?

A.採択前に支払った経費は補助対象外です。

まず、店舗内装のリフォーム費用は、販路開拓のための経費だと説明できれば、一般型で、最大50万円まで補助されます。ただし、単に老朽化した内装を新調するためのリフォームは補助対象外です。必ず、販路開拓のための取り組みであることが求められます。

ただし、よく勘違いされやすいのですが、すでに支払い済みの経費は、補助金によるサポートの対象外です。申請のときに、経営計画書などで支出することを予告していて、申請が採択された後に設定される「補助対象期間」の間に支払われた経費のみが、補助対象となります。

よって、残念ながらこのたびの内装費用は、小規模事業者持続化補助金の対象外となります。

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宅配ピザ店舗を経営するオーナーからの相談

Q.Web集客にかかる経費は対象になりますか?

近所に大手の宅配ピザチェーンが進出してきて、既存のお客様を奪われそうになっています。すでに、公式サイトからピザを注文できるシステムはできていますので、新メニューの開発と広報活動を強化して対抗しようと考えています。

広報活動については、SNSに新メニューのWeb広告を出稿する、サイトのSEO対策(検索順位を上げてアクセス数を引き上げる対策)に取り組む、会員を対象としたDMを発送するなどの施策を検討していますが、どの施策なら小規模事業者持続化補助金の補助対象となるでしょうか。

A.補助対象となる経費もありますが期間や内容に注意が必要です。

チラシやWebサイトの制作費用などとともに、Web広告にかかる費用やSEO対策費用、インターネットを介したDM発送費用も販路開拓のための経費として申請が可能です。

ただし、インスタグラムのようなSNSに出稿するWeb広告の費用は、一度支払って終わりでなく、日々課金されるものですから、採択後の補助対象期間内に支払った費用のみ(おおむね4~5か月分)が対象となります。また、SEO対策も「効果や作業内容が不明確なもの」は補助対象外となってしまいますので注意しましょう。

なお、ウェブサイト関連費のみによる申請は不可となっています。貴社の場合、新メニュー開発にかかる機械装置等費用なども必ず申請するようにしてください。また、ウェブサイト関連費は補助金交付申請額の1/4(最大50万円)が申請上限となっています。

国道沿いで喫茶店を経営するオーナーからの相談

Q. インボイス制度には対応していませんが、補助金を申請できますか?

個人でコーヒースタンドを運営しています。これまで免税事業者として活動してきたため、インボイス制度には登録していません。小規模事業者持続化補助金は、インボイス制度に対応していなくても申請できますか? また、対応した場合にどんなメリットがありますか?

A. インボイス未登録でも申請可能ですが「インボイス特例」を利用できません。

インボイス制度に未登録でも、小規模事業者持続化補助金の一般型(通常枠)への申請は可能です。ただし、「インボイス特例」の対象になりません。

「インボイス特例」とは、2021年9月30日~2023年9月30日のいずれかの課税期間で一度でも免税事業者であった方、または2023年10月1日以降に創業した方が、補助事業終了時点で「適格請求書発行事業者(インボイス登録)」になっている場合に、補助上限額が50万円上乗せされる特例です。より大規模な販路開拓を検討される事業者はぜひ検討すべき特例でしょう。

なお、申請時にはインボイス登録の証明書(もしくは申請中であることを示す資料)の提出が求められ、補助事業終了時点までに登録が完了していないと、補助金全体が交付対象外となってしまいますのでご注意ください。

カフェオーナーからのご相談

Q.補助上限金額を引き上げることはできますか?

駅前でカフェを営んでいます。販路拡大のため、店の商品を通信販売することにしました。そのために大型の調理機器やECサイトの制作を検討しているのですが、補助上限金額を50万円以上にする方法はありますか?

A.一定の条件を満たせば、補助上限額が150万円増額されます。

雇用している従業員の事業場内最低賃金を一定額以上引き上げることで、「賃金引上げ特例」を利用することが可能です。特例に該当する事業者は、補助上限額が150万円上乗せされるほか、インボイス特例とあわせることで最大200万円まで補助上限金額が上乗せされます。

【賃金引上げ特例の適用追加要件】

申請事業の終了時点において、事業場内最低賃金(※)が申請時の事業内最低賃金より+50円以上であること

※:直近1か月の支給賃金を参照します。6月に申請した場合は、5月の支払賃金が参照できる賃金台帳を提出してください。また、申請時点および申請事業終了時点において、支給している事業場内最低賃金が地域別最低賃金以上である必要があります。

さらに、直近の決算や確定申告で赤字だった事業者は、補助率も通常の2/3から3/4に引き上げられるため、さらに自己負担額を抑えることも可能です。

ただし、「特例あり」で申請して条件を満たせなかった場合は、補助金全体が不交付となるため、確実に賃上げを実行できる計画を立ててから申請しましょう。

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