小規模事業者持続化補助金を受け取るケーススタディ ―飲食店の場合

飲食店持続化補助金

※2023年(令和5年度)4月新年度補助金申請相談受付中!

持続化補助金は、ビジネスの販路をさらに拡大・開拓していこうとする経営者に対して、その販路拡大への取り組みにかかった経費の一部を補助する制度です。

この持続化補助金は、全国の飲食店を経営する企業でも受け取ることができます。
ただし、申請して受け取るためにはさまざまな条件があります。

この記事では、Q&A形式で、いろんな事例から持続化給付金という制度の基本について浮き彫りにしていこうと思っています。

人件費は、持続化補助金でサポートしてもらえる?

Q. 商店街で弁当屋を経営している方からのご相談

家族で弁当屋を12年やってきましたが、人手が足りず、新しくアルバイトを雇うことに決めました。しかし、決して余裕のある経営状態ではないので、アルバイトの募集にかかった経費や、給料や社会保険などの人件費をサポートしてほしいです。

A. 人件費は持続化補助金の対象外です。

持続化補助金には、一般型と低感染リスク型ビジネス枠の2種類があります。
一般型は、販路拡大に向けた地道な取り組みにかかった経費の一部について補助するもので、たとえば持続化補助金でホームページ制作を開設する費用、広告宣伝費、店舗改装費などが含まれます。
たとえ、新しく雇ったアルバイトが、販路拡大のための人材だとしても、人件費は持続化給付金の対象になりません。ひょっとすると、厚生労働省が主催する何らかの助成金で使えるものがあるかもしれません。
アルバイトの募集にかかった求人経費も、販路拡大のための宣伝費とは言いがたいので、やはり対象外です。

たとえば、弁当のデリバリー(出前)サービスを新たに始めると、そこにかかった経費は補助対象になりえますので、導入を検討してみてください。

低感染リスク型ビジネス枠では、新型コロナウイルスを克服した将来の社会変化にも対応したビジネスモデル転換の取り組み、あるいは店内などの感染防止対策費を補助するものです。やはり対象外というべきでしょう。

持続化給付金を受け取れる企業の条件

Q. 居酒屋を経営しているオーナーからの相談

私鉄のターミナル駅の駅前で、肉料理を中心にした居酒屋を経営しています。客席は1階と2階で120席以上あり、従業員は正社員7名、アルバイトが24人います。
このたび、客席でのコロナの感染拡大を防止するために、間仕切りを設置するとともに、タブレットでメニューを表示させ、そこから遠隔操作で注文できるシステムを導入することに決めました。この導入費用は持続化給付金で補助されるでしょうか?

A.小規模事業者に該当しないので、持続化給付金を受け取れません。

感染拡大防止のための間仕切りは、低感染リスク型ビジネス枠で補助される可能性がありますし、タブレットでの注文システムの導入費用も、感染拡大防止と、コロナ後の時代の変化に対応するための取り組みであると、経営計画書などで説得的に書くことができれば、補助される可能性があります。

ただし、経営なさっている居酒屋の運営会社が、「小規模事業者」に該当しない可能性があります。
小規模事業者とは、卸売業・小売業・サービス業(※飲食店はサービス業に該当します)で、5人以下の従業員を常時雇用する企業・個人事業主だと定義されています。
常時雇用の従業員とは、いわゆる正社員です。御社は7名を常時雇用していますので、持続化給付金がサポートする小規模事業者にあたらず、残念ながら補助対象外となります。

なお、IT導入補助金であれば、小規模事業者よりも多くの従業員を雇用する中小企業でも、補助対象になる可能性があります。

すでに支払われた経費

Q. 郊外でイタリアンレストランを経営しているオーナーの相談

正社員スタッフ5名、アルバイトスタッフ10名を雇用している創業30年のレストランです。内装が古くなり、雰囲気が時代に合わなくなってきたので、内装を全面的にリフォームしました。最近、小規模事業者持続化補助金のことを知り、申請しようと思うのですが、どのような手続きをとればいいのでしょうか?

A. 採択前に、すでに支払った経費は補助対象外です。

まず、店舗内装のリフォーム費用は、販路開拓のための経費だと説得的に説明できれば、持続化給付金の一般型で、最大50万円まで補助されます(※ただ単に老朽化した内装を新調するためのリフォームは補助対象外です)。

なお、創業年月日が2020年1月1日と新しければ、補助上限が100万円にアップしますが、御社は該当せず、最大50万円の補助枠があります。

ただし、よく勘違いされやすいのですが、すでに支払い済みの経費は、補助金によるサポートの対象外となります。
申請のときに、経営計画書などで支出することを予告していて、申請が採択された後に設定される「補助対象期間」の間に支払われた経費のみが、補助対象となるからです。よって、残念ながらこのたびの内装費用は、持続化給付金で補助されません。

Web集客の経費

Q. 宅配ピザ店舗を経営するオーナーからの相談

近所に大手の宅配ピザチェーンが進出してきて、既存のお客様を奪われそうになっています。すでに、公式サイトからピザを注文できるシステムはできていますので、広告宣伝を強化して対抗しようと考えています。

インスタグラムにWeb広告を出稿したり、サイトのSEO対策(検索順位を上げてアクセス数を引き上げる対策)のテコ入れをしたり、アフィリエイト(商品の販売数に応じて、報酬を支払うことを条件に、他人に商品を宣伝してもらう手法)を始めたりしようと計画しています。

どこまで持続化補助金による補助対象となるでしょうか。

A.補助対象期間内に出稿したWeb広告は、補助対象になりえます。

チラシやWebサイトの制作費用などとともに、Web広告も持続化補助金でいう「販路開拓のための経費」とされます。ただ、インスタグラムのようなSNSに出稿するWeb広告の費用は、一度支払って終わりでなく、日々課金されるものですから、採択後の補助対象期間内に支払った費用のみ(おおむね4~5か月分)が対象となります。

その一方で、アフィリエイトは「売上高や販売数量等に応じて課金される経費」とされ、補助対象外となります。また、SEO対策も「効果や作業内容が不明確なもの」と位置づけられており、やはり補助対象外とされます。

コロナ感染症対策の経費

Q. 学生街の大衆食堂のオーナーからの相談

昼になると客数が多くなるので、ソーシャルディスタンスを保つために、客席ごとに透明アクリル板の間仕切りをしたり、入り口で自動的に客の体温を測れる装置や除菌剤の噴霧装置を導入したり、従業員の表情が見えやすいよう、飛沫防止の透明なフェイスシールドを導入したりしようと考えています。
これらは、持続化補助金の対象になりますか。

A. 対象になりますが、2021年から補助率が下がります。

食品を扱う店ですから、コロナ感染対策は特に重要となるでしょう。
2020年までは、コロナ対策の緊急性が高かったので、費用は100%補助されるという特別扱いになっていました。

しかし、2021年からの「低感染リスク型ビジネス枠」では、コロナ感染対策にかけた費用に対して、補助率4分の1(25%)に引き下げられました。
4分の3は自己負担となりますので、ご注意ください。
それでも、間仕切りをすれば、客席を減らさずに回転率を維持できますし、体温の自動計測装置や消毒液噴霧器などを入り口に導入することで、客の流れも停滞させない効果があります。
感染対策を徹底している店でありながら、今まで通りに便利で安いというイメージは、学生の間で徐々に信頼感として広がっていくはずです。